2010年4月19日

年金事務所労働者に聞く 分断の壁こえて闘う時

週刊『前進』06頁(2436号6面4)(2010/04/19)

“職場の仲間と団結つくり労働組合を再生させたい”
 年金事務所労働者に聞く
 分断の壁こえて闘う時
 社保の解雇撤回闘争と連帯

 3・20イラク反戦7周年闘争に参加した年金事務所の非正規職労働者Aさん(30代前半・女性)に、現在の職場の状況、ねんきん機構労組の動きと現場労働者の思い、闘いの決意などを話していただいた。社会保険庁解体で非公務員型の公法人(特殊法人)となった日本年金機構の年金事務所の中で、労働者は怒りを蓄積し、必ずや団結して決起する状況にある。このことを確信した。(聞き手/大迫達志)

 36協定のため非正規も加入

 私は社会保険庁の「謝金職員」として働いていました。「謝金」とは謝礼金のことです。正規の職員ではないことを強調するこの呼び方自体が、労働者を分断するためのものだったことは明白です。
 昨年、日本年金機構の採用試験を受け合格、今年1月4日から同機構の「特定業務契約職員」となりました。業務内容は以前と変わりません。最長4年の契約更新が可能とのことで、今回は11年3月末までの契約です。
 正規職員、准職員(最長7年の期限付き採用)、特定業務契約職員(最長4年、日給制)、アシスタント契約職員(以前の臨時職員のこと、日給制)、エルダー職員。
 ここまでが自治労ねんきん機構労組に加入できることになりました(以前は、正規職員は自治労全国社会保険職員労働組合〈元自治労国費評議会>に加入。非常勤職員は自治労全国社会保険庁非常勤職員労働組合に加入)。ねんきん機構労組は、職場の労働者の過半数が非正規職員となる中で、36協定を締結するために非正規職員を労働組合に組織することにしたのだと思います。
 社会保険労務士が年金相談業務に交代で就き、派遣労働者が端末入力や窓口対応などに配置されている事務所もあります。彼らにはねんきん機構労組への加入資格は認められていません。
 「年金相談」はすべて非正規職員か社労士がやっています。最新の情報を伝える立場にあるにもかかわらず、技術・情報が満足に継承されていない状況です。そして継続して勤務できる保証もない。社会保険庁解体で日本年金機構とは別につくられた協会けんぽ(全国健康保険協会)の職員は、1人で窓口対応を任され、昼休みが定時に取れない状況です。
 社保労組は正規職員のみの組合でしたが、ねんきん機構労組は非正規職員も含む組合となりました。課長も含め職場のほぼ全員が組合員です。
 職場で「組合に入るよね」の一言で加入書に署名させられ、みんな入りました。ところが実際には事務所の過半数労働者の数合わせで36協定を結び、残業をさせるためだったのです。このことが分かり、初めて組合に加入した非正規職の同僚の中から不満が出ています。「時給より高い組合費払って意味あるのか」(非正規職員の組合費は約1300円)。
 社保労組時代の分会長と分会役員がそのまま組合を仕切っています。まだ分会大会など正式の会議はもたれていません。正規職員で組合経験のある人は、20代でもそれなりにしっかり労働者意識を持つ人が多く、心強く感じます。50代の正規職員は、組合の強かった昔を懐かしんで話してくれます。労働組合の団結を職場によみがえらせることが本当に大切です。
 これまで正規職と非正規職との間の分断の壁は大きく、どう付き合ったらいいか迷うことが多かったのですが、今度、同じ仕事、同じ組合員となったことから、フランクに話せるようになりつつあります。

 非正規全員が最低賃金表に

 非正規職員は残業はなし。正規職員は課によって残業をしています。同じ事務所の課長職が、なぜなのかは分かりませんが、降格となりました。そんな経験豊富なベテラン職員に代わって、新たに民間から採用された人が課長になっています。
 年金機構になって非正規職は3ランク。賃金表も3ランクあるのに全員が最低ランクに落とされました。年休についても、別組織となったことを理由にいったんゼロにされました。
 庶務が各事務所になくなり本部一括で扱われるようになったからか、職員の給与明細の間違いや労務手続きの遅れが目立つようになりました。
 また船員保険の手続きも大幅に変わり、業務が東京に集中され、これまで保険証が即日配布でしたが、いまは何週間もかかるようになりました。困って怒鳴り込んでくる漁船員も多く、窓口対応が大変になっています。

 不満くすぶりビラ読まれる

 まだ表立つまでには至っていませんが、職場には不満がくすぶっていて、同僚同士の話でたくさん出てきます。
 ビラはすごく真剣に初めから終わりまで読まれています。「2年後には廃止・統合され歳入庁にされる」という問題は重大関心事となっています。自分のしている仕事が何なのか、非正規職はみな知らされずバラバラにされています。
 「消えた年金記録」問題は労働者の責任ではありません。「年金制度とは何か。そもそも戦費調達に始まる戦争と不可分の問題だ」と、社保分限免職攻撃と闘う平口雅明さんに言われましたが、そのことについて詳しく知りたいと思っています。
 3・20イラク反戦デモに参加して、集会の中で「労働者には戦争を阻止する力がある」と言われたことが胸に響きました。
 職場の仲間を増やし、団結をつくり出し、労働組合を再生させていきたい。国鉄闘争勝利の大運動、安保・沖縄闘争を闘う中、社保労働者の解雇撤回闘争の全国ネットワーク運動と結合し、年金機構内の労働者の闘いをつくり出しましょう。