■News & Review 韓国鉄道労組、23日間のストライキ打ち抜く

月刊『国際労働運動』48頁(0450号02面01)(2014/02/01)


■News & Review 韓国
鉄道労組、23日間のストライキ打ち抜く
12・28民主労総ゼネスト決意大会に10万人

(写真 民主労総は、朴槿恵政権の退陣要求と鉄道民営化阻止・労働弾圧粉砕を掲げてゼネストに決起。ソウル市庁前広場のゼネスト決意大会に10万人が集まった【12月28日】)


 12月9日から始まった韓国鉄道労組の民営化絶対反対のストライキは、巨大な全労働者的・全社会的な決起を呼び起こした。恐怖にかられた朴槿恵(パククネ)政権は22日、スト圧殺と労組破壊のため、警察機動隊5500人を動員し民主労総本部への襲撃に走った。これに対して民主労総は28日、ゼネスト総決起集会を10万人で開いて大反撃し、これに韓国労総も合流するという画歴史的事態となった。
 社会全体を巻き込む闘いの高揚に恐怖した与党セヌリ党は、内部に動揺が生まれ一定の譲歩を余儀なくされた。12月30日、鉄道労組は23日間にわたるストライキを中断し、31日から闘いは新たな段階に突入した。闘いの経緯をより詳しく見てみよう。

12・9 鉄道労組がスト突入

 12月9日午前9時、韓国の全国鉄道労働組合(2万1千人)が鉄道民営化阻止の無期限全面ストライキに突入した。鉄道公社が10日に理事会で、水西(スソ)駅発のKTX(韓国高速鉄道)の分割・民営化の受け皿会社の設立を決めようとしていたからだ。
 鉄道労組のキムミョンファン委員長は、8日の労使交渉を拒否した鉄道公社を弾劾し、「114年間、国家の大動脈を守ってきた鉄道労働者の決然たる闘争に国民の皆さんの愛情と支持を再度呼びかける」と訴えた。
 鉄道労組中央争議対策委員会は「民営化に向かって暴走する鉄道を、鉄道労働者が全身で阻止しなければならない」「今日われわれは民営化を阻止するための正義の闘争に立ち上がる」と宣言した。
 鉄道公社は、スト突入と同時にキムミョンファン委員長ら198人の労組幹部を業務妨害などで刑事告発、さらに同日午後7時、組合員4356人を「職位解除」処分にした(最終的に8797人になった)。事実上の停職処分につながる攻撃で、さらには解雇を狙う弾圧だ。鉄道労組は8455人が必須維持業務をしながら8805人がストに入った。勤務交替後にスト参加者は拡大する。

12・10 理事会強行

 10日朝、鉄道公社は警察部隊を配置し理事会を強行し、水西発KTX運営会社の設立の議決を強行した。その場でキムミョンファン委員長は断髪し、「闘いの火ぶたが切られた。鉄道労働者の全面ストライキはこれから始まる」と断じた。
 鉄道労組、922団体が結集する「水西発KTX分割反対!鉄道民営化反対!鉄道外資開放反対!各界円卓会議」は「理事会決定無効」を宣言した。
 鉄道スト3日目の11日、民主労総と鉄道労組は記者会見し、シンスンチョル民主労総委員長は「政府と与党が14日の民主労総全国集中決意大会までに要求に応えないならば、民主労総と鉄道労組は闘争を持続することはもちろん、どんな犠牲を甘受してもより一層強力な対政府闘争に出る」と警告した。動労千葉は11日、韓国鉄道労組に対して熱い連帯のメッセージを送った。

12・19 3万人のロウソク集会

 韓国鉄道労組のストライキが11日目を迎えた19日、鉄道労組の組合員は全国からソウルに結集した。そこで1万人が鉄道民営化攻撃を完全粉砕するまでストを無期限に継続するとの闘争宣言を発した。午後6時からは民主労総の各産別や市民団体も加わり、ソウル市庁前広場で3万人のロウソク集会が開かれ、鉄道ストを軸に朴槿恵政権との全面対決に突き進むことを宣言した。鉄道労組の民営化反対のストライキは、非正規職に突き落とされた労働者人民の圧倒的な支持を得たのだ。

(写真 警察権力5500人が民主労総本部事務室への暴力的襲撃と強制捜索の暴挙【12月22日】)

12・22 警察が民主労総本部を襲撃

 闘いの全人民的な高揚を恐れた朴槿恵政権は、22日、警察権力5500人による民主労総本部事務室への暴力的襲撃と強制捜索、指導部・組合員130人以上の連行という暴挙に走った。
 鉄道労組は、執行部10人と地域指導部18人はじめ35人の逮捕令状発行と組合員879
7人の職務外しの懲戒処分という大弾圧にもかかわらず、ストを不屈に闘い続けている。焦った朴槿恵は、ついに国家暴力を全面発動してたたきつぶそうとしてきた。
 権力は、民主労総本部のある京郷新聞社ビルを包囲、催涙液を乱射しながらビル内に突入し破壊の限りを尽くした。この襲撃は、鉄道労組指導部の逮捕が目的だったが、1人の鉄道労組幹部も逮捕できなかった。しかも民主労総本部に対する捜索押収令状は裁判所が発行を拒否しており、令状なしの強制捜索だった事実が判明した。
 この暴挙は、朴槿恵に対する韓国労働者階級人民の怒りの火に油を注ぐものとなった。現場には直ちに、「民主労総を守れ!」と数千から1万人にも達する労働者が駆けつけ、ビル内で警察権力の進入を阻もうとする組合員と一体となり、約12時間にわたって権力と激しく対峙して闘った。その様子はテレビで延々と実況中継された。民主労総本部にこのような形で警察が泥靴で押し入るのは、民主労総の結成以来初めてだ。「これは労働者の基本権を踏みつぶす行為だ。労働運動の心臓部を踏みにじるものだ」という激しい怒りの声が、全社会から一斉に上がった。
 民主労総は、直ちに非常中央執行委員会を開き、「朴槿恵政権は労働者との戦争を始めた。あらゆる手段を動員して闘う」と、28日のゼネスト突入方針を決定した。
 韓国労総も23日、記者会見で朴槿恵政権の暴挙を弾劾し、「労働運動を守るために断固たる措置をとる」と、政府との話し合いを一切中断して28日の民主労総ゼネスト集会に合流する方向を打ち出した。あらゆる社会団体・市民団体、大学教授や知識人、弁護士会、宗教界なども続々と弾劾声明を発して闘いに立ち上がった。

12・23 12・28朴槿恵打倒ゼネストを宣言

 朴槿恵政権に対する韓国労働者階級の闘いは、まったく新たな段階に突入した。23日、民主労総は、ソウルの民主労総本部前に首都圏の幹部活動家4千人を集めて総決起大会を開き、「朴槿恵の退陣」を求めて総力決起する方針を発した。26日には全国16地域でロウソク集会と決意大会を開き、28日にはゼネラル・ストライキに決起すると同時に、100万人国民行動に立ち上がるというものだ。シンスンチョル委員長は「今こそ悔しさを我慢せず、権力に怒りをたたきつけよう」「ゼネストで世の中を変えよう」と訴えた。
 一方で、同日、鉄道公社社長が、①機関士と列車乗務員の新規採用②車両整備の外注化の大攻撃を新たに打ち出した。これについて鉄道労働者は次のように語っている。
 「車両は技術力と経験で直すのに、新規人員をすぐ現場に投じるのは話にならない。そんなふうに外注業者に任せるというのは、もうひとつの民営化の試みだ」「このような業務に競争を押しつければ事故につながる」
 日本の国鉄分割・民営化と外注化、その結果としての北海道の鉄道事故が問題になっているのだ。これが全人民の声になっているのだ。

(写真 鉄道労組が鉄道民営化阻止の無期限ストに突入し、スト出征式【12月9日 ソウル駅前】)

12・28 歴史的なゼネスト集会に10万人

 12月28日、民主労総は、朴槿恵政権の退陣要求と鉄道民営化阻止・労働弾圧粉砕を掲げて歴史的なゼネストに決起した。寒波を突いて午後3時、ソウル市庁前広場で開かれた「民営化阻止!労働弾圧粉砕!鉄道ストライキ勝利!民主労総第1次ゼネスト決意大会」には、鉄道労組をはじめ全国から組合員6万5千人を先頭に10万人が集まった。
 集会には韓国労総も参加し、文字通り韓国の全労働者階級人民が朴槿恵政権との「全面戦争」を宣言する場となった。集会では世界各地で闘われている民主労総への連帯行動の映像が流され、最初に27日に闘われた動労千葉の韓国大使館への抗議行動が紹介された。民営化・外注化阻止を闘う日韓労働者の国際連帯が、この場に決起した10万人の前で圧倒的に確認された。
 壇上に立った民主労総のシンスンチョル委員長は、12月22日の警察権力による民主労総本部への襲撃と破壊について「この日、朴槿恵は自らの仮面を投げ捨てた。われわれは独裁の正体を見た」と激しく弾劾した。そして「鉄道ストライキはすでに勝利した!」と声高らかに宣言し、「今こそわれわれの出番だ」と、年明けには第2次・第3次のゼネストに立ち、朴槿恵打倒へまっしぐらに攻め上る方針を打ち出した。続いて立った韓国労総のムンジングク委員長も、朴槿恵政権との全面対決を宣言し、民主労総と一体となって労働弾圧と闘い抜く決意を表明した。
 スト突入から20日目を迎えた鉄道労組から、指名手配中のキムミョンファン委員長が映像と電話を通して参加者に決意を伝えた。前日の27日には、労使交渉が決裂するなか、追いつめられた政府が夜中になって突如、水西駅発のKTX子会社に鉄道事業者免許を発給するという暴挙に出た。この会社は民営化のためにつくられた「車両基地も、駅も、発売システムもなく、一度もモデル運行さえしなかったペーパーカンパニー」(キムミョンファン委員長)だ。
 鉄道民営化をあくまで強行しようと、通常の手続きも国会をも無視して暴力的に突き進む朴槿恵に、キムミョンファン委員長は「これは全人民への宣戦布告だ。鉄道労組は年を越えて全面ストライキを継続する」と不退転の決意をたたきつけた。さらに、民主労総傘下の全産別委員長が登壇し、決議文を読み上げ、ゼネスト突入を宣言した。引き続いて「止めろ!民営化、がんばれ!民主労総、明らかにしろ!官権不正選挙」と題するキャンドル大集会が同じ場所で開かれた。
 大集会終了後、参加者は警察の阻止線と各所で激突しながらデモに出発、市庁前広場からソウル駅へと向かう12車線の道路は解放区と化した。大統領官邸のある光化門方面へ進出したデモ隊約1万人は警察の車列によるバリケードを実力で粉砕して光化門交差点を占拠、「朴槿恵退陣」「民営化中止」のシュプレヒコールを上げた。
 闘いの爆発に恐怖した与党・セヌリ党が一定の譲歩を強制され、30日に鉄道労組がストライキを中断し「現場に復帰して闘いを継続する」と宣言、31日から闘いは新たな段階に入った。
 明白なことは、闘いにもはやどんな妥協の成立の余地がなく、労働者人民の総蜂起による朴槿恵政権の打倒か、朴槿恵側の反革命蜂起による公然たる独裁制への移行か、二つに一つしかないことだ。しかも鉄道労組のストが朴槿恵政権との全面対決としてかちとられたことによって、労働組合のスト決起が朴槿恵打倒闘争の中心に座った。
 動労千葉の国鉄分割・民営化との30年を超える闘い、外注化阻止・非正規職撤廃、反合・運転保安闘争が、韓国の鉄道労組の闘いの生きた教訓となり、相互に連携して前進していると言える。
 民主労総は、1月9日に第2次ゼネスト、18日に第3次ゼネストの方針を打ち出している。朴槿恵が大統領就任1周年を迎える2月25日には、朴槿恵打倒の全人民総蜂起に立ち上がることが呼びかけられている。韓国における新自由主義との闘いは完全な決戦、革命情勢に入った。これに連帯し、「国鉄決戦でプロレタリア革命を」の道を断固として突き進もう!
 (大森民雄)