■News & Review 中国 ついに始まった中国金融恐慌 「生きさせろ!」労働者の闘いは新たな段階へ

月刊『国際労働運動』48頁(0452号02面03)(2014/04/01)


■News & Review 中国
 ついに始まった中国金融恐慌
 「生きさせろ!」労働者の闘いは新たな段階へ

(写真 山西省太原市にある中国建設銀行山西支店前で理財商品の崩壊に抗議する人々【2月26日】)
(写真 投資した7億円を返済せずに逃亡した中瑞隆信託を弾劾する投資者【2月26日 深圳市】)

デフォルトへの突入

 中国で金融恐慌がいよいよ爆発しようとしている。1月末、中誠信託(北京市)の理財商品がデフォルト(債務不履行)の危機に陥った。
 理財商品とは、直接地方債を発行することが認められていない地方政府が、資金調達のために部局をつくり、そのもとで民間の金融機関をシャドーバンキングにして、それを通じて発行される債券のことである。この理財商品は年利11%~13%という高利で、主として銀行を通じて発売される。地方政府はそれで集めた資金によって、「開発」プロジェクトを進め、地方経済を成長させようとする。こうした手法で中国は、すさまじいバブル経済が続いてきた。
 巨大なテーマパークや住宅街が各地に次々とつくられていく。だが大金を投入しても、そのほとんどのプロジェクトは破綻し、テーマパークは広大な廃墟となり、住宅街は無人のゴーストタウンと化している。
 しかし失敗すればするほど、さらにもっと「乱開発」のプロジェクトを続けバブル経済を維持することで、経済の破局を避けようとする以外にない。こうして地方政府は今や破綻的な膨大な借金を抱えこむこととなり、理財商品は単なる紙切れと化そうとしているのである。その危機がついに爆発したのである。
 この1月のデフォルトの危機は、突然出現した「正体不明」の投資家が、不良債権と化したすべての理財商品を買い取ったことで危機を回避した。これは背後に中国政府がいると言われている。
 しかし事態はこれにとどまらない。2月に入ってから、山西省の聯盛能源(石炭会社)が経営破綻し、大手銀行の中国建設銀行を通じて国内の投資家らに販売した理財商品9億7300万元(約165億4100万円)のうち2億8900万元(49億1300万円)が、満期(2月7日)に返済不能となった。
 この聯盛能源は、他に5社の信託会社の投資も受けており、借金総額は50億元(850億円)と言われる。そのすべてが理財商品として販売され、近く返済期限を迎えようとしている。この返済は到底自力では不可能だとされている。このようにデフォルトは個々の現場ではすでに始まっており、それが今、本格的に爆発しようとしているのだ。
 そしてさらに、北京融典投資管理が発行した三つの理財商品(約10億元、170億円)も、支払いのめどが立たず、デフォルトの危機が高まっている。だがこれらは、まだ端緒に過ぎない。
 中国では年内に4兆元(68兆円)の理財商品が満期を迎えると言われているが、うち8分の1にあたる5000億元(8兆5000億円)が返済できないのではと言われている。中国政府が「正体不明」の投資家を使ったり、債務を繰り延べたり、あらゆる形で危機を乗り切ろうとしても、このように連続的に爆発し、額も巨大になればもやは打つ手もなくなる。そして個々のデフォルトはすでに始まっているが、それが小さいものならまだ影響が少ないが、本格化すれば連鎖的な巨大な金融恐慌を引き起こす事態となる。それは中国のバブル経済を崩壊させ、中国経済そのものを破局にたたき込むだろう。それが刻々と迫っているのである。
 カナダのシドニーで開かれ2月23日に閉幕したG20での共同声明には、世界的な金融危機への対応策として「シャドーバンキングによるリスクへの対処」を挙げた。これが中国を指していることは明白である。ここに示されているように、中国での金融恐慌の爆発は、世界金融恐慌の引き金を引き、大恐慌を本格的に爆発させることになる。その現実を前にして、米帝や日帝をはじめとする全世界の帝国主義者は震え上がっているのである。

金融危機の爆発は全中国の暴動化

 こうした中で、2月26日、先の山西省の聯盛能源に関わる理財商品のデフォルトに対して、山東省、山西省、遼寧省、吉林省、浙江省の投資者たち約40人が、山西省太原市にある中国建設銀行山西支店前に集まって、投資した元本と利息の返済を求める抗議行動が起きている。また中国の広東省深圳市で、数万人が投資した約7億元を社長らが元本も利息も返済せずに逃亡したとされる中瑞隆信託の事件をめぐり、同日に中瑞隆信託と何ら対応をしようとしない政府を弾劾して、深圳市内で100人を超える抗議行動とデモが発生している。後者の事件では、警察が全面的に弾圧し、数十人の逮捕者が出ているという。
 理財商品の破綻と金融危機の切迫が、取り付け騒ぎから、ついにいわゆる「群体性」(抗議デモや暴動)事件を引き起こしているのである。金融恐慌の本格的な爆発は、中国全土を大暴動にたたきこんでいくのは必至なのだ。
 理財商品の購入者、投資者というと、一般的には金持ちのイメージがある。もちろん金持ちはいる。しかし中国の場合、理財商品の売買は地方政府の利害と直結しており、そのスターリン主義独裁支配のもとで、地方政府自らが積極的に「安全で、絶対に儲かる」と勧誘して、労働者庶民にも買わせている現実がある。しかも異常な高利回りを謳い文句にしているのだ。こうして地方政府や銀行に騙されたり半ば強制されて、財布をはたいたりして理財商品を買う人も多い。逆に言うなら地方政府や銀行、シャッドーバンクは、こうして労働者や貧乏人からもなけなしの金を巻き上げて、自分たちの延命を図っているのである。こうした抗議行動に参加している人の中に、どうみても富裕層には見えない人がいるのはそのためである。
 したがって金融恐慌とそれが引き起こす全事態は、直接的にも政府と資本に対する労働者の怒りの爆発になろうとしている。それが労働者階級の闘いを一層促進することは明白である。資本とスターリン主義政府に対する労働者階級の暴動的闘いが始まろうとしているのだ。

(写真 上海住友化学電子の工場閉鎖に抗議行動を闘う労働者たち【2月23日】)
(写真 「同一労働、同一報酬」を求めてストを闘う契約看護師【2月15日】)

バブル経済崩壊始まる

 これに先立つ23日には、浙江省杭州市で、数時間の内に不動産価格の急激な下落が発生し、不動産購入者が不動産会社に抗議する事件も起きている。1平方㍍あたり6000元(10万2000円)にもなる下落がわずか数時間で起きたのだ。この当日に1方㍍あたり1万9300元(32万8100円)でマンションを購入した人が、50万元余り(850万円以上)をたった数時間で失うという事態となった。不動産購入者たちは不動産会社を取り巻いて抗議する事態になっている。
 この事件は、金融恐慌の始まりと同時にバブル経済の崩壊が始まることをはっきりと示している。
 イギリス金融大手のHSBCは2月20日に、中国製造業の景況感を示す2月の購買担当者指数(PMI、速報値)を48・3と発表した。景気の縮小・拡大の判断の節目となるのは50で、1月確定値の49・5からさらに低下し、2カ月連続で50を下回った。7カ月ぶりの低水準であり、中国の景況感が悪化していることを示している。こうした中国経済の行き詰まりが、金融恐慌の爆発と一体でバブル経済の崩壊の引き金を引いているのである。
 不動産価格の下落は、杭州市のほか江蘇省常州市でも起きている。バブル経済の崩壊は、これからますます本格的に進行していくことは必至である。
 今や中国の金融恐慌はあちこちで火を噴き、バブル経済も本格的な崩壊過程に突入した。それが投資家から一般の労働者庶民までも破産と生活破壊の危機にたたき込もうとしており、新たな歴史的な大激動を不可避としているのである。

勝利の鍵は国際連帯

 中国経済の行き詰まり、中国金融恐慌の切迫、バブル経済の崩壊、そして世界大恐慌への本格的な突入という状況は、すさまじい形で資本をも追いこんでいる。資本ももはや、やっていけなくなっているのである。
 上海市外の高橋保税区にある日系住友化学電子工場は、2月23日に工場閉鎖を宣言した。それも実に卑劣なことに、事前に労働者に対してはなんの説明もなかった。しかもこの工場は、日曜日も出勤するように労働者に義務付けていた。工場側は22日の夜に、突然すべての設備を撤収した。そして23日に突然閉鎖を宣言したのである。
 23日の日曜日、労働者が休日出勤すると保安員が工場に入ることを阻止しようとした。ここに至って初めて労働者たちは事態を知ることになったのだ。
 しかし工場の中には労働者個人の私物もある。何よりも、こんな倒産自身が許せない。また突然の工場閉鎖と解雇に伴う何の補償もされていないのだ。労働者たち約200人は、保安員の制止を振りきって工場内に入り、中を占拠し、不当解雇を弾劾し、補償を求めて闘っている。この上海住友化学電子の労働者たちの闘いは24日も続き、上海公安局、労働局、上海市政府を追いつめるものとなった。
 また同じ2月24日には、天津市の経済技術開発区にあるHi―P電子有限会社(シンガポールの華僑資本)で、やはりストライキが爆発した。Hi―P電子有限会社は3月末に工場を閉鎖しようとしているが、労働者にはいまだに何の説明も賠償の話もない。解雇に直面した労働者たちは怒りを爆発させ、会社が正式な話をするまでは、労働者はストライキを続けると、無期限ストライキを宣言して闘っている。
 この二つのストライキは非常に似たケースであり、しかもほぼ同時に起こっている。ここには中国での資本の経営が非常に厳しくなり、次々と工場閉鎖や移転などに追い込まれていることが示されている。同時にこの資本の攻撃に対して、労働者が団結してストライキで全力で反撃して闘っていることも示している。開始された金融危機の爆発、バブル経済の崩壊は、こうした労働者の決起をますます促進し、大暴動的な決起を生み出そうとしているのだ。
 これらの工場で働いている労働者の多くは農民工であり、短期契約の非正規労働者である。2月15日には、中国山東省菏沢市の市立病院の契約勤務の看護師たちが、「同一労働、同一報酬」を訴えてストライキと街頭デモに立ち上がった。一月あたり521元(約8900円)という低賃金で、連日の残業、休むこともできないきつい仕事をさせられている。労働条件の改善を求めて関連指導部に協議を求めても、ただあしらうだけ。「もう我慢できない!」と、正規労働者と同じ待遇を求めて契約勤務の看護師たちは立ち上がったのである。看護師たちは、市政府へとデモを進め、警察の弾圧と対決しながら全力で闘い抜いた。ここに示されているような非正規労働者の「生きるため」の闘いが、中国では連日のように爆発しているのである。
 中国経済の歴史的な破局の中で、非正規労働者を先頭に、中国の労働者の階級闘争は、まったく新しい段階に突入しようとしている。
 それは、政治的にも経済的にも崩壊過程に入った中国スターリン主義、その打倒に至るまでやまない労働者階級の階級的で暴動的な新たな闘いの始まりである。その勝利の鍵こそ、国際連帯である。
 動労千葉の掲げる「非正規職撤廃、外注化阻止」のスローガンは、こうした中国の労働者階級の闘いと完全に一体のスローガンだ。国鉄決戦を基軸に今春の闘いを力強く推進し、決起する中国の労働者階級との連帯をかちとっていこう!
(河原善之)