●翻訳資料 2014QDR(4年毎の戦力見直し) (下) 2014年3月4日 アメリカ国防省 村上和幸 訳

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月刊『国際労働運動』48頁(0457号04面01)(2014/10/01)


●翻訳資料
 2014QDR(4年毎の戦力見直し) (下)
 2014年3月4日 アメリカ国防省
 村上和幸 訳

■目次

国防長官の書簡(略)
要旨(略)
本文
 はじめに
 第一章 安全保障環境の将来(以上7月号)
 第二章 防衛戦略(以上9月号)
 第三章 統合軍のリバランス(以上本号)
 第四章 防衛機関のリバランス(以下略)
 第五章 歳出強制削減措置レベルの防衛費削減の影響とリスク
 第六章 本QDRについての議長の評価

【解説】

 QDR発表後、関係者の多くの論評が出された。たとえば米議会機関、米国平和研究所・国防委員会(ペリー元国防長官ら)が7月に発表したQDR点検報告書は、
 「海軍は、12年度防衛計画の目標、323隻がQDRで260隻以下にされた」「削減はあまりに行き過ぎ。陸軍と海兵隊は9・11前レベルより削減すべきでない」
 と軍予算・軍備削減を非難している。
 しかし、本誌前号特集で指摘したように軍事予算は削減されていない。米軍需産業とその利権構造は、単に軍事予算の維持だけでなく、大幅増加がなければ成り立たない構造になっている。それは、狭い意味での軍事産業だけでなく、アメリカ経済全体にいえることだ。超巨大な米軍需産業は、29大恐慌―第2次大戦で作り出されて以来、その肥大化こそ「恐慌対策」「景気対策」となっているからだ。
 この軍需産業と軍、それを利権とする議会、軍事研究開発予算を軸に再編された大学が一体化し〝軍・産・政・学複合体〟が成立し、政治・経済・社会全体に「深刻な影響」(61年アイゼンハワー大統領辞任演説)を及ぼしている。
 だから2014DQRは、支配階級内の激烈な分裂と対立を引き起こさざるをえない。表向きの「軍事的必要性」の建前さえ捨て、むき出しの利権抗争が噴出している。あの悪名高い欠陥戦闘機F―35の導入をめぐる論争でさえ、「F―35の開発と製造で46州の12万5千人の雇用が維持される」「国防省のプロジェクトの中で最大の雇用創出力をもっている」というロッキード・マーチン社の性能面での反論などほとんどなしの主張の当否がメインテーマにされたのだ。
 アジア太平洋の米軍基地強化は米国内基地の閉鎖統合・海外移転とセットであり、そこに利権を持つ企業・政治家の死活にかかわる問題で、激しい抗争が起こっている。
 米帝国主義の没落と不正義性が白日の下にさらされている。世界プロレタリア革命の歴史的チャンスの到来だ。

■第三章 統合軍のリバランス

 戦略環境の変化に鑑み、わが国の防衛戦略の更新に即して、国防省は統合軍〔注〕の主要な要素のリバランスを行うリアリスティックな措置をとる責任がある。12年以上の紛争を経て、また予算削減の中で、統合軍は不均衡になってきている。この紛争期間から即応性のレベルは低下し続けてきたが、13会計年度の歳出強制削減適用によって大幅に低下した。近代化の必要性に追いつけていない。
〔注〕統合軍(ジョイント・フォース)――4軍(陸軍・海軍・空軍・海兵隊)を統合した米軍全体。第2章(本誌前号)の「統合軍」(コンバタント・コマンド)は、北米・欧州・中東などの担当地域別ないし担当任務別に編成された4軍統合軍。

 国防省の12年度予算割り当てでは、11年の財政管理法で定められた10年間で4870億㌦の支出削減を消化し始めたことが、大きなインパクトを与えている。また財政管理法では、21会計年度まで毎年500億㌦の追加削減をする歳出強制削減メカニズムも定められている。13年の超党派予算法は、歳出強制削減に対して当面のささやかな救済となった。しかし議会が動かない限り、毎年の歳出強制削減は16会計年度には復活する。大統領の15年度予算は、14年度予算要求のレベルと比較して防衛予算を5年間でさらに1130億㌦削減している。これは超党派財政法によって定められた裁量的支出に対する厳しい制限に沿ったものであるが、それ以後の歳出強制削減レベルのカットは受け入れておらず、歳出強制削減で予定されていたレベルよりも5年間で1150億㌦多い額を国防省に支出するものである。統合軍は防衛5カ年計画をとおして小さくなっていくであろうが、徐々に近代化し、歳出強制削減前のレベルの即応性を回復するであろう。
 このQDRで述べられている慎重な短期的措置で財政状況が改善しない場合でも国防省が国家安全保障の要請に応える力を増していくことができる。財政的制限が撤廃されるであろうとの希望に基づいた重要決定の先延ばしは、追加資金が得られなかった場合、戦略を遂行する能力への大きなダメージになる。大統領の15年度予算に反映された決断は、枢要な優先事項を守り、リスクを最小化するためのものである。

空軍

 航空戦略は、グローバルな戦力投入と迅速な有事対応のために死活的である。空軍は、空、宇宙、サイバー空間における国家安全保障にとって決定的な能力を持ち、それぞれの能力を向上させ続ける。次世代の装備と構想を戦力に取り込み、高度な脅威に対処する。新世代の作戦機を配備し続け、サイバー能力、航空電子、兵器、訓練を向上させる。空軍は次のことを始めとする最も重要な近代化を優先していく。
▽高い生存性と統合されたセンサー群を有し、わが国の戦闘機の大部分に取って代わる、戦闘機多用途第5世代F―35戦闘機
▽遠距離からの作戦を持続し、大きなペイロードを運搬し、紛争中の空域で作戦できる、打撃航空機
▽効率的で迅速な遠距離派兵を可能にするために、わが国の従来の給油機に取って代わる、KC―46A次世代給油/輸送機
 これらのための原資を捻出するために空軍は、空輸・指揮・戦闘機の領域で短期的能力を削減していく。もしも16年度以降も歳出強制削減レベルの削減が課せられるなら、空軍はグローバルホーク・ブロック40を退役させ、統合打撃戦闘機〔F―35〕調達をスローダウンし、プレデターとリーパーによる24時間戦闘パトロールを10回減らし、飛行時間を大幅に減らすであろう。

陸軍

 陸上兵力は、わが国の平和と安全の維持の能力にとって、不可欠の要素であり続けるであろう。米国が主導したアフガニスタンでの戦闘作戦の終了は、将来のより広範な課題に対して準備するための機会を与えるものとなった。グローバルに関与し、近代的で、訓練され、即応性を有する陸軍であるためには、多種多様な作戦を遂行する能力がなければならない。それは、米本土における文民当局への支援から治安部隊の支援や大規模戦争作戦まで、そして侵略の抑止から抑止できなかった場合の決定的な撃破まで含むものである。長期にわたってバランスのとれた戦力を回復するために陸軍は、そのすべての構成要素を削減していく。正規陸軍は戦時の大兵力である57万人から44万人ないし45万人に、陸軍州兵は戦時の大兵力である38万8千人から33万5千人に、連邦陸軍予備役は20万5千人から19万5千人に削減していく。
 この陸軍削減計画のペースは、短期的に即応性と近代化の不足を招くが、陸軍戦力を破壊せずに、早期に節約を実現するものである。陸軍の全構成要素削減の計画は、陸軍航空隊の再編やGCV〔新型戦闘車両〕開発の終結とともに、即応性の回復と戦争遂行能力の改善のための資金を確保するものである。それらには、戦闘車両・支援車両・航空機の選択的更新や21世紀の戦争に必要な新たなテクノロジーへの投資が含まれる。もしも16年度以降も歳出強制削減レベルの削減が課せられるなら、陸軍の全構成要素がさらに削減され、現役42万人、陸軍州兵31万5千人、予備役18万5千人にまで低下するであろう。

海軍

 グローバルに安全保障を築き、戦力を投入するためには、世界の大洋の水上でも上空でも水中でも、海軍力が引き続き必要である。投資の焦点は、米国の海上優越性を確保し、安全と繁栄を守る力である。海軍は次のことを優先事項とする。
▽信頼性があり、近代的で安全な海洋配備の戦略抑止力の維持。それにはSSBN(X)潜水艦の21年度建造が含まれる。
▽敵の脅威のペースに対応あるいはそれを凌駕し続けるために、非対称的優位性を維持ないし可能なかぎり強化すること。それには対海上戦闘攻撃兵器、次世代陸上攻撃兵器、バージニア・ペイロード・モジュールおよびF―35プログラムが含まれる。
 海軍の艦船は20年代まで増大し続け、新たな安全保障環境に鑑みて将来の水上艦隊が見直される。とりわけ、使用しうる耐用年数を大きく延ばし、海軍防空司令官の能力を30年代まで維持するために、イージス艦近代化のために長期的改装作業を行う。フライトⅢDDG―51駆逐艦の製造計画は、対空・対ミサイル防衛能力を大幅に向上させる。LCS〔沿海域戦闘艦〕は32隻を超えて新たに契約されることはない。海軍は、それに代わる、能力があり、破壊力がある小型水上艦の調達を提案していく。19年度に、LSD―41/49級の水陸両用艦の再活用とともに、LX(R)の調達前払い支出が開始される。決定的な戦力構成と近代化への投資の維持のために、海軍は、業者のサービスへの支出を年間30億㌦削減し、01年レベルに戻す。もしも16年度以降も歳出強制削減レベルの削減が課せられるならば、空母ジョージ・ワシントンは、燃料補給・修理の期日を待たずに退役させることが必要になる。われわれがこの決定をするならば16年度予算要求では、10空母打撃群が残ることとなる。

海兵隊

 海兵隊は、紛争を抑止し、同盟国及びパートナーを安心させ、全世界の危機に対応するために前方展開される、即応性をもった遠征軍であり続ける。決定的な地域ないしは同盟国へのアクセスが阻止されるか悪化した場合、迅速に使用しうる海兵隊は、米国の国益を守るための上陸作戦を遂行する訓練を受け、即応性を持っている。こうした作戦をさらに推進するため、海兵隊は次の措置をとる。
▽ACV〔水陸両用戦闘車両〕の段階的調達というアプローチ。これは、沿岸帯機動作戦を可能にするテクノロジーと能力への科学技術的投資を継続しつつ、ACVを調達していくことを可能にする。
▽この水陸両用能力の決定的な近代化に投資するために、海兵隊は最終的に18万2千人の兵力にしていくプランを立てている。もしも16年度以降に歳出強制削減レベルの削減がなされるならば、さらに17万5千人にまで削減していく。この最終的兵力には、大使館警備プログラムの要員として、900人の海兵隊員を増員することも含まれる。

現役・予備役のバランスの調整

 現役と予備役の正しいバランスを達成することは、将来の統合軍の規模を決め、形成していくために不可欠である。予備役陸軍、海軍、海兵隊を10年以上にわたって継続的・大規模に海外有事作戦と国内非常時支援に使用したことにより、予備役は広範な任務に常時従事する部隊に転換していった。
 米国はアフガニスタンでの任務を終了するが、予備役は本土防衛・グローバルな安全保障の樹立・戦力投入及び決定的な撃破という枢要な役割を引き続き果たしていく。将来の防衛の必要性を満たすために国防省は、必要な時に現役を補完する訓練された部隊と人員である予備役を維持していく。

枢要な優先事項を守る

 特に資金が削減されている時代にあって、国防省は、新たな戦略の柱に最も密接に関連する諸能力を守る努力を倍加していく。

 空/陸・海。米国の空域・海岸・国境を防衛することは国防省の優先事項である。ノーブルイーグル作戦を遂行する空軍戦闘機は、主要都市の上空からの脅威に対して、警戒態勢を保ち続ける。また、上空にある敵対的ターゲットを迅速に迎撃できる首都地域の地対空防衛に特化した施設も維持する。海では、海軍の施設が、米国の海岸の海洋域監視と安全保障を提供し続ける。

 文民当局への支援。国内のパートナーとともに立案・対応活動を続行する。国防省は連邦文民警察諸当局と協力し、国土を脅かす国内出身の暴力的な過激派や他のグループの攻撃を予防していく。

◆本土を防衛する
 国防省は今後とも、わが国の最も死活的な国益である米国本土を防衛する必要性に基づいて、統合軍の規模を決定し、形成していく。

▽ミサイル防衛。GBI〔地上発射型迎撃ミサイル〕の数を30から44に増やすとともにセンサーネットワークの縦深性を高める。日本政府の支持に基づき、早期警戒と北朝鮮が発射するいかなるミサイルも追跡することができる、第二の偵察レーダーを設置しつつある。2020年までの期間、大陸間弾道ミサイルの脅威からの本土防衛を確保するために、迎撃ミサイルの信頼性と有効性を向上させ、識別能力を改善し、より堅牢なセンサーネットワークを確立することを投資目標とする。必要な場合に迎撃ミサイルを追加配備するのにかかる時間を短縮するために、国防省は、米国内の新たなミサイル防衛基地の立地を研究している。同盟国及びパートナーが、相互運用性のある弾道ミサイル防衛能力を調達し、地域的な抑止と防衛アーキテクチャ(機構)に参加することは、敵の弾道ミサイルシステムの強要的・作戦的価値に対抗するものとなるであろう。
▽核。米国の核戦力は、ロシアとの交渉・協定を通じて縮小されているが、残余の核戦力を安全・確実・効果的なものとして確保していくことの重要性は増大している。したがって、国防省はエネルギー省と協力して不可欠な核運搬システム、弾頭、警戒・指揮・統制、及び核兵器インフラに投資していく。こうしたプログラムは、核兵器運搬の三本柱、及び核兵器を運搬でき前方配備できる戦術航空機を維持することを確保するものである。
▽サイバー。近年のサイバー要員の募集・訓練・定着の著しい進展に基づいて、国防省は新たな大きなサイバー能力を作るために投資し続ける。その取り組みの核心は国防省サイバーミッション部隊である。この部隊には国防省のネットワークを防衛し世界的規模の軍事作戦をサポートするサイバー防衛部隊、統合軍〔地域別・機能別の〕司令官の軍事的任務の立案と遂行をサポートする戦闘任務部隊、及び米国に対するサイバー攻撃に反撃する国家任務部隊が含まれる。サイバーミッション部隊への人員配置は16年までに行われる。人員に加え、最先端のツールとインフラに投資する。国防省自身のネットワークを防衛するために、情報システムをJIE(統合情報環境)という防衛全体に共通のネットワークインフラストラクチャーに移行する。JIEは、より防衛しやすいネットワークアーキテクチャを発展させ、ネットワーク運用を改善していくために不可欠である。

◆安全保障をグローバルに築く
 安定・安全・繁栄を支える米国のグローバルな態勢とプレゼンスは、財源に制約がある中でいっそう困難に――しかし、だからこそいっそう不可欠に――なってきている。国防省は、国益をより効果的に防衛するために、海外でのプレゼンスと態勢のリバランスを続けていく。

▽アジア太平洋。この地域へのより広範なリバランスを行うため、米国は、北東アジアでの強力な存在を維持し、オセアニア、東南アジア、インド洋のプレゼンスを強化していく。20年までに、日本における海軍の決定的なプレゼンスの強化を含めて海軍の60%を太平洋に置くこととする。これにはシンガポールとローテーションされるLCS、太平洋に母港を置く駆逐艦と水陸両用船の増加や、JHSV〔統合高速艦艇〕などの水上艦をこの地域に配備することが含まれる。国防省は、海軍・空軍を増強し、また海兵隊をグアムに移転している。その結果、地理的により分散した戦力態勢となり、作戦上の抗堪性が増し、政治的に持続可能なものとなる。空軍は、戦術的・長距離打撃機を含む装備をすでにアジア太平洋地域に駐留させており、同盟国及びパートナーと連携して陸空海の警戒を改善すべく運用されているISR〔諜報・監視・偵察〕装備などをさらにこの地域に増加させていく。オーストラリアのダーウィンへの海兵隊の配備は、この数年でMAGTF〔海兵空地任務部隊〕の2500人ローテーションプレゼンスを行い、大きく増強される。すでに先の10年間に、二つの戦争を戦いながら、米陸軍は侵略を抑止し地域安定への関与を示すために朝鮮半島と北東アジアに持続的で大きなプレゼンスを維持してきた。イラクとアフガニスタンでの米国の戦闘の終了は、そこでの紛争に向けられていた戦力のリバランスのために元の駐留地――その多くはアジア太平洋地域――に戻されるか、他の任務に向けることができるようになることを意味する。これらの戦力は、通常の二国間ないし多国間演習を再開し、パートナー諸国の能力を向上するための訓練機会の増大を追求し、また地域の安定に寄与する人道的作戦、災害救助作戦、反テロ作戦などの諸作戦を支援していく。

▽中東。国防省は湾岸地域において、危機に迅速に対応し、侵略を抑止し、同盟国を安心させる強力な軍事態勢を維持し続けつつ、新たな脅威に対処するために米軍の能力を発展させていく。米軍は今日、先進的な戦闘機、ISR装備、ミサイル防衛能力、パートナーシップを作る能力があるローテーションの地上兵力、及び強力な海軍プレゼンスを含め、湾岸とその直近に3万5千の軍事要員をも持っている。今後国防省は、同盟国が米国の強力な軍事プレゼンスを補強するための同盟国の能力の形成にさらに重点を置いていく。われわれは統合された対空防衛・ミサイル防衛、海洋安保、特殊作戦部隊を含む枢要な多国間能力を強化するために密接に協力していく。この前方展開態勢に加えて、危機の時には追加的戦力を送る計画である。

▽欧州。米軍は、前方駐留部隊の維持、同盟国・パートナーの施設の共用を含むローテーションプレゼンスの提供によって、欧州の同盟国・パートナーの軍事能力を強化する核心的な方法を追求していく。アフリカ・中東双方での作戦に欧州が戦略的な重要性を持っていることに鑑み、われわれはホスト国と緊密に協力してこの地域やその周囲の危機への対応を改善するために欧州における米軍基地のアクセスと柔軟性を改善していく。そして、欧州における米軍のインフラと司令部を緊縮財政の時代においてさらに統合することと、この地域一帯の危機に対応する戦力を提供し、NATOの同盟国・パートナーとともに訓練するという変わらぬ責任との間でバランスをとっていかねばならない。欧州諸国が米国のグローバルな作戦における主要なパートナーであることに鑑み、国防省は欧州諸国との訓練を強化するあらゆる努力をしていく。平和で繁栄した欧州を実現するために尽力し続け、その目標のためにロシアに建設的に関与していく。

▽アフリカ。国防省は、効果が高い訓練・演習への関与、柔軟な協定についての交渉、諸省庁との協力、新たな効果的・効率的な小規模基地への投資、ホスト国施設や同盟国との共同基地を使った革新的なアプローチを進め、アフリカにおける米国の比較的小さいプレゼンスの影響力を最大限にしていく。

▽ラテン・アメリカ。諸省庁及び国際的パートナーと協力し、規模・範囲・影響を拡大しつつあるラテン・アメリカの多様な違法麻薬密売や国を越えた犯罪組織ネットワークへの対策を適宜支援していく。今後とも、中南米の平和と安全を維持するために、積極的な安全保障関係を進展させることによって、米国のラテン・アメリカにおけるプレゼンスの影響を最大化していく。

◆戦力を投入し決定的に勝利する
 大規模な戦力を海外に投入する能力は国益を増大させ世界中で安全保障を推進するためには核心的である。空輸、空中給油、陸上輸送、海上輸送及び海外配備によって可能となっている優越した戦力投入力の維持は、緊縮財政環境下にあっても引き続き戦力立案の優先順位のトップである。

▽空/海。戦闘機・長距離打撃を含む作戦機、生存性がある監視、抗堪性があるアーキテクチャ、水中戦闘は、A2/AD〔アクセス阻止/エリア拒否〕という挑戦に対抗する統合軍の能力を増大させる。国防省は空軍・海軍・海兵隊のF―35プログラムへの関与などの必要な能力への投資を続けていく。また、高度化した敵に対抗する枢要な同盟国・パートナーの将来の戦力・能力の開発にあたって、彼らとの協力を深めていく。同盟国のF―35調達は、相互運用性を大きく強化する一歩である。

▽地上戦力。敵の地上戦力を撃破し、領土を占領する能力は、侵略を抑止し、アクセスを獲得し、戦力を投入し、決定的に勝利するわれわれの能力にとって、核心的である。われわれのドクトリンを練り上げ、能力を近代化し、過去の10年間に直面してきた敵よりも大規模化しまた能力を増している敵に対する強行突入と大規模軍事作戦を遂行する熟練を再獲得していく。

▽宇宙。抗堪性を強化し、抑止し、防衛し、米国ないし同盟国のシステムへの攻撃を撃破する能力を提供する宇宙投資に、引き続き重点を置く。レーダーと宇宙監視望遠鏡のオーストラリアへの移転などの、宇宙情勢警戒における国際パートナーシップは、節約をしつつ多様性を増大し、カバーする枢要な地域を拡大するものである。

▽反テロと特殊作戦。国防省は世界中のテロリストの脅威に反撃する能力を守り続ける。SOF(特殊作戦部隊)は、この取り組みの中心的任務を果たす。危機対応・有事戦力としての任務に加えて危機防止のために継続的な前方配備を拡大・継続するのである。SOFの全兵力を6万9700人まで増加させる。アルカイダを撃破し、他の台頭しつつある国を越えた脅威に対抗し、大量破壊兵器に対抗し、反テロのパートナーを形成し、敵の聖域を許さず、直接行動を適宜遂行ないし支援するための継続的でネットワーク化された分散型の作戦を維持するために、SOFの能力を守っていく。アフガニスタンから戦力が引き揚げられたことにより、〔各地域別の〕統合軍司令官の様々な分野での世界中の課題への取り組みに使用できるSOFを増加できるようになった。例えばマグレブ(北西アフリカ)、サヘル(サハラ南部地域)、アフリカの角での作戦及び活動は、米軍の大規模な関与なしに国家安全保障上の利益を追求することができる。

▽精密打撃。空でも陸、海でも国防省は精密打撃を重視している。空軍は、戦闘機と爆撃機の双方が敵の防御を完全に抑え込んでいない場合でも多種のターゲットを効果的に攻撃できる空対地ミサイルを調達していく。海軍も制空権を有する空域での水上戦艦を攻撃する統合軍の能力を改善するために、新たな統合対艦巡航ミサイルを開発している。海軍は水上艦にも潜水艦にも配備されているトマホーク対地巡航ミサイルの年間調達数を削減していくが、これらの長射程で精密なミサイルを海軍は保持し続ける。

▽諜報・監視・偵察(ISR)。作戦的・戦術的状況についてのタイムリーで正確な情報は、いかなる軍事任務の効果的な完遂にも不可欠である。イラク・アフガニスタンからの部隊の引き揚げと国家的な敵からの挑戦の増大に鑑み、制空権のある空域及びアクセスを拒絶された空域において効果的なシステムへの投資にリバランスしていく。

▽抗堪性。抗堪性を改善し、大規模な連携攻撃においても抗堪性がある空、海、陸、宇宙及びミサイル防衛の能力にしていく。兵站要員・支援要員のわずかな補足しか用いずに簡素な基地から作戦し前線作戦機を維持する能力を提供する、地上を基地とする遠征部隊と海軍遠征部隊そして他の基地や作戦拠点の分散能力を強化していく。

 リスク(略)

2019会計年度における米軍構造のプラン、主要な要素

◆陸軍省
18師団(10正規、8陸軍州兵)
22航空旅団(10正規、2予備役、10陸軍州兵)
15パトリオットミサイル防衛大隊、7THAAD)ターミナル段階高高度度地域防衛ミサイル防衛隊(すべて正規)
軍人員数は正規44万~45万、予備役19万5千、州兵33万5千

◆海軍省
〔海軍〕
11空母、10空母航空団
92大型水上戦闘艦(68DDG―51、3DDG―1000〔ミサイル駆逐艦、アーレーバーク級68隻とズムウォルト級3隻〕、21CG―47〔タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦〕、及び10~11隻の近代化のために一時的に係留されている巡洋艦)
43小型水上戦闘艦(25LCS〔沿海域戦闘艦〕、8MCM〔掃海艇〕、10PC〔沿岸パトロール艇〕)
33水陸両用戦闘艦(10LHA/LHD〔強襲揚陸艦〕、LPD〔ドック型輸送艦〕、12LSD〔ドック型輸送艦〕、及び1隻の近代化のために係留されているLSD〕
51攻撃潜水艦(SSN)及び4誘導ミサイル潜水艦(SSGN)
人員数は、現役32万3200、予備役5万8800
〔海兵隊〕
2海兵隊遠征部隊――2現役、1予備役の師団/飛行隊/兵站グループに組織される
3海兵隊遠征旅団指令機関
7海兵隊遠征部隊指令機関
人員数は、現役18万2千、予備役3万9千

◆空軍省
48戦闘飛行隊(26現役、22予備役)(971航空機)
9重爆撃飛行隊(96航空機うち44B―52、36B―1B、16B―2)
443空中給油機(335KC―135、54KC―46、54KC―10)
211戦略輸送機(39C―5、172C―17)
300戦術輸送機(C―130)
280ISR機(231MQ―9、17RC―135、32RQ―4)
27指揮統制機(18E―3、3E―4、6E―8)
6運用中衛星群(ミサイル警戒、ナビゲーションと計時、広帯域暗号衛星通信、環境モニタリング、他用途)
人員数は、現役30万8800、予備役6万6500、州兵10万3600

◆特殊作戦部隊
約660の特殊作戦チーム(陸軍特殊作戦派遣隊部隊A[ODA]ないしその同類、海軍シール、海兵隊特殊作戦チーム、空軍特殊戦術チーム及び作戦飛行派遣部隊を含む。民生支援チーム[CA]や軍情報支援作戦〔MIS〕派遣部隊は含まない)
3レンジャー大隊
259機動及び火力支援機
約83機のISR航空機(40無人、43有人)
人員数は、6万9700

◆戦略核部隊
以下の戦略核運搬手段のための1550以下の報告義務を有する配備済弾頭
420以下のミニットマンⅢ大陸間射程弾道ミサイル
240潜水艦発射型弾道ミサイル――14のうち12の弾道ミサイル搭載戦略潜水艦に配備
60以下の核兵器搭載可能10爆撃機――核配備済重爆撃機を核弾頭1つとカウントする

◆サイバー任務部隊
13国家任務チームと8国家支援チーム
27戦闘任務チームと17戦闘支援チーム
18国家CPT(サイバー防衛チーム)
24各軍〔陸、海、空軍〕CPT
26〔地域別〕統合軍CPT及び国防省情報ネットワークCPT
〔第四章以下略〕