■News & Review 韓国 現代自動車非正規職支会が裁判で勝利 不法派遣の1200人を正規職と認める判決

月刊『国際労働運動』48頁(0458号02面01)(2014/11/01)


■News & Review 韓国
 現代自動車非正規職支会が裁判で勝利
 不法派遣の1200人を正規職と認める判決

(写真 現代自動車の非正規職労働者が勝訴判決後、決起大会を開く【9月18日】)

(写真 勝訴に喜び、ソウル中央法院前で訴訟の代理人のクォンヨングク弁護士を胴上げ【9月19日】)

4年間の不屈の闘いが切り開いた地平

 現代(ヒョンデ)自動車非正規職労働者たちの正規職認定を求める集団訴訟に対して、9月18~19日、ソウル中央地方法院が判決を出した。労働事件を専門に担当している第41、42裁判部は、合わせて約1200人の現代自動車非正規職が現代車を相手に提起した勤労者地位確認訴訟及び賃金請求訴訟で、原告ら全員に勝訴の判決を宣告した。1200人全員が正規職であると認めたのである。
 決定的なのは、現代自動車で働くすべての社内下請け労働者が不法派遣の状態にあると認定したことだ。最高裁はすでに2010年7月、現代車非正規職のチェビョンスン組合員が提起した訴訟で不法派遣を認めていたが、会社側はこれを〝チェビョンスン氏個人への判決〟と主張し、非正規職労働者全体の正規職への転換をあくまで拒否し続けてきた。だが今回の判決は、生産ラインの全工程はもとより、鉄板プレス作業から完成車の船積みにいたる全業務において、そこで働く下請け労働者全員を不法派遣と認定した。自動車の生産工程のすべてにおいて「合法的」な請け負いなど不可能で、全労働者が正規雇用されるべきだと宣言したのである。実際に非正規職労働者たちが現代車に完勝したと言えるものだ。
 「全部勝ったぞ!」。裁判所前での座り込みを続けてきた現代自動車蔚山(ウルサン)非正規職支会の労働者をはじめとして、労働者たちは判決を聞くや否や歓声を上げ、感涙にむせんだ。「不法派遣を撲滅し、正規職転換をかちとろう!」のシュプレヒコールがこだました。
 現代自動車の非正規職労組は2003年に結成されて以来、「人間らしく生きたい」を合言葉に正規職化を求めて11年間闘い抜いてきた。2010年秋には蔚山第1工場での25日間の工場占拠ストを闘い、2013年には296日に及ぶ鉄塔籠城闘争をも闘った。
 今回の集団訴訟はその中で2010年11月、チェビョンスン氏の勝訴を引き継いで提訴された。それから3年10カ月ぶりにようやく一審判決が出たのだ。
 続いて9月25日には起亜(キア)自動車においても、社内下請け労働者約500人が提起した訴訟に対し、原告全員の正規職としての地位を認定する勝利判決がかちとられた。
 これらの判決は、現代車のみならず韓国の自動車産業全体に広がる不法派遣を満天下に明らかにした。サムスン電子など他の多くの製造業の不法派遣問題に対しても、大きな影響を与えていく判決だ。

(写真 9月18日に判決のあったソウル中央地方法院の前で。横断幕には「すべての社内下請けを正規職に転換せよ! 現代車【株】=不法派遣→正規職化」と書かれている)

分断・切り崩し攻撃との激しい闘い貫く

 判決に先立ち、現代自動車会社側と現代自動車支部(正規職)は結託して、非正規職支会の正規職転換要求闘争に対する激しい分断・切り崩し攻撃を加えてきた。今回の勝利は、この攻撃を必死に打ち破る中でかちとられた。
 8月18日、現代車労使は蔚山工場で行われた19次特別交渉で暫定合意案を妥結した。この特別交渉は、現代自動車非正規職支会3支会のうち組合員が最も多い蔚山支会が抜けた状態で行われた。蔚山支会長は、会社が非正規職の正規職への転換を拒否する代わりに2012年から主張してきた3500人新規採用案から進展した案を出していないとして、交渉決裂を宣言していた。その後の交渉は、蔚山支会を除いたまま全州(チョンジュ)支会と牙山(アサン)支会だけが参加して行われ、8月18日に暫定合意案を確定し、妥結した。
 暫定合意案によると、現代車は3500人を新規採用する時に労組組合員を優待するという、会社側がこれまで主張してきた案に全面的に合意した上で、採用規模を500人増やして4000人にしている。これは「正規職転換」とは根本的に異なる。これでは会社の不法行為の責任を追及できず、正規職労働者と差別されてきたために受け取れなかった賃金の差額を補償させることもできない。現代車資本に免罪符を与える内容に満ちているのだ。
 それだけではない。暫定合意案はさらに、「新規採用」に応募して会社が採用を決定した者については、すぐさま「地位確認訴訟」を取り下げることを要求している。恐るべき分断攻撃であり、闘争圧殺攻撃である。
 現代車資本はこの間、非正規職3支会の闘いに対し、数百人にのぼる解雇や組合員に対する巨額の損害賠償攻撃を加えて徹底した弾圧と圧迫を強めてきた。この中で非正規職労組の中には、それまで掲げてきた「すべての社内下請けの正規職転換」の要求を貫き通すのは困難として、要求水準を引き下げようとする傾向も生まれていた。8月18日の暫定合意案は、この間の交渉で論議された案の中でも最も後退した案である。しかも組合員が最も多い蔚山支会を排除して決定されたのだ。
 蔚山支会はこの日、暫定合意がなされるだろうというニュースに対し、労働者側交渉団が会議をしている金属労組現代車支部事務室で連座籠城を行った。蔚山支会は合意案が蔚山支会には適用されないという文句を入れることを要求して闘い、これが受け入れられるという確約のもとに午後5時頃、籠城を解いた。だがこの約束もまた踏みにじられた。そして会社側はこの合意がなされたことを理由に裁判所に判決延期申請を行い、8月22日の判決予定は9月18日に延期された。
 これに対して蔚山支会は不屈の闘魂を燃え立たせて決起した。「訴訟は両刃の剣だ。裁判の結果、その危険な刀の柄を誰が握るかは、結局は現場の闘いが決める」(チェビョンスン組合員)――この決意のもと、9月11日からソウルの裁判所前で無期限のハンスト座り込みに突入した。牙山支会の労働者も執行部の妥結を批判してこの場に合流した。そしてついに9月18日の歴史的判決を力ずくでもぎりとったのだ。
 現代自動車側はすぐさま控訴した。裁判を長引かせることであくまでも正規職化を拒む方針だ。会社側は判決後、広報ビラ「共に進む道」を出し、一審判決だけをもって無条件に結果を履行することはできないと表明し、特に2次下請け労働者までも派遣と認定した判決は納得できないと反発している。さらに「個別工程についてのどんな社内下請けも不可だというような判断は直営雇用安定に致命的影響をもたらし、国内産業界全体の雇用問題を揺るがす結果」だと悲鳴を上げている。
 現代自動車非正規職労働者の闘いは今や、より大きな闘争として民主労総の中で大きな位置を占めていく闘いに発展していこうとしている。これは労働者全体の未来をかけた闘いだ。

(写真 2010年11月、現代自動車蔚山第一工場での占拠闘争)

11月全国労働者大会へ

 民主労総は9月25日、第12次中央執行委員会を開催し、セウォル号特別法制定および安全と生命保障闘争、非正規職撤廃労働者大会(10・25)、44周年チョンテイル烈士精神継承2014年全国労働者大会(11・8~9)、労働基本権立法をかちとることおよび改悪立法阻止闘争、医療民営化および公務員年金改悪阻止闘争などの闘争計画と3期戦略組織化事業計画を審議し、史上最初の委員長―首席副委員長―事務総長の直接選挙実施のための選挙管理規則を制定した。
 中央委員会は当面、セウォル号特別法制定要求局面に対応する反朴槿恵(パククネ)闘争を展開して特別法制定以後に「生命と安全」を中心にした局面転換に積極的に備えることにする一方、懸案闘争と直結した主要労働基本権関連立法闘争と10月に予定されている政府の非正規職総合対策発表に対する対応も全国化することにした。また、現代・起亜車不法派遣判決など主要労働情勢に対応する事業を推進することにした。
 これにより11月8~9日に開催される全国労働者大会に最大人員を結集して、労働基本権および生命と安全問題を社会争点化し、9月27日のセウォル号特別法制定のための汎国民大会と惨事200日になる11月1日の大会を力強く展開することとした。特に11月1日には医療民営化阻止汎国民大会と公務員労組などの公的年金改悪阻止大規模集会が予定されている。10月末と11月初めに毎週大規模集会が開催され力量が分散されるのではないかという問題提起と論議もあるが、重大な時局を勘案して最大限努力すると決議した。

直接投票実施を公告

 民主労総は本年12月の選挙で、1995年創立以来初めて委員長など執行部を直接選挙で選出する。
 民主労総は10月2日、公式選挙公告を発表した。選挙は委員長と首席副委員長、事務総長がチームを作って出馬する。3名中1名以上が女性でなければならない。
 シンスンチョル委員長は選挙公告とともに発表したアピール文で、「直選制は新しく生まれる民主労総の運命と今後20年の労働運動の未来に踏み出す第一歩になるだろう」と述べている。そして「直選制は断絶した民主労総内部の意思疎通を改善し、『労働者直接民主主義』の成果を世の中に示す自負心となるだろう」として「加盟・傘下組織は一層近く連結され中央と組合員の関係は『互いに』から『我々は』に発展するだろう」と強調した。
 今回の選挙に参加することのできる人は選挙公告日である2日午前までに民主労総加盟組織に加入しているすべての組合員だ。民主労総は今月30日まで選挙人名簿を中央選挙管理委員会に提出して確定する方針であり、総選挙人数が62万名に達するものと見ている。
 民主労総は2007年4月に役員直選制を導入すると規約を改訂したが、これまで準備不足とシステム不備などを理由に施行を留保してきた。間接選挙制に比べて相当な費用がかかり選挙管理が難しいということも理由の一つだった。しかし民主労総内では、代議員が役員を選ぶ間接選挙では新執行部がどんなふうに構成されなければならないのかについての組合員たちの総意がまともに反映できず、結果的に闘争力を低下させているという批判が絶えず提起されてきた。
 今回の選挙の候補登録期間は11月3日から7日であり、選挙運動は11月8日から12月2日までの25日間だ。第1次投票は12月3日から9日まで1週間行われ、過半得票候補が出なかったならば1、2位候補を対象に12月17日から23日まで決選投票が行われる。
(大森民雄)