特集 中国の新自由主義政策の矛盾爆発 バブル崩壊、金融恐慌へ 香港を始め闘いが高揚 Ⅰ 中国を揺さぶる香港の闘い――大陸でも労働者の決起が続発

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月刊『国際労働運動』48頁(0459号03面01)(2014/12/01)


特集 中国の新自由主義政策の矛盾爆発
 バブル崩壊、金融恐慌へ 香港を始め闘いが高揚 Ⅰ
 中国を揺さぶる香港の闘い――大陸でも労働者の決起が続発

(写真 8月27〜29日、中国江西省贛【がん】州市の鉄道労働者【ドライバー】がストライキに立ち、賃上げと責任者の更迭をかちとった警察と対峙して街頭占拠闘争を闘う香港の学生・労働者【上=10月8日、下=10月15日】)





(写真 警察と対峙して街頭占拠闘争を闘う香港の学生・労働者【上=10月8日、下=10月15日】)


 中国バブル経済の本格的な崩壊が始まり、金融恐慌へと波及し、世界大恐慌の本格的爆発に発展しようとしている。それは帝国主義・大国間争闘戦を激しく激化させ、朝鮮半島や中国を焦点として、東アジアをめぐる戦争政治の本格的な展開になろうとしている。中国スターリン主義の新自由主義政策の矛盾が爆発し、中国スターリン主義および世界帝国主義全体を破綻の危機に追い込んでいる。
 第Ⅰ章は、そうした中での香港の学生・労働者によるセントラル占拠闘争など、爆発する中国人民の闘いを描く。
 第Ⅱ章は、東南アジアをめぐる中国と日本の争闘戦の焦点となっている鉄道輸出の問題を見ていく。
 第Ⅲ章は、中国スターリン主義のバブル崩壊―金融恐慌爆発が切迫している実態に迫る。
 第Ⅳ章は、「改革・開放」=新自由主義政策の歴史的経過をスターリン主義の破産として突き出している。

 1966〜77年に毛沢東によって強行された「文化大革命」の中で一度は崩壊の危機に直面した中国スターリン主義は、1978年以後、鄧小平らが帝国主義の新自由主義政策に学び、「改革・開放」政策を展開し、その体制の延命を図った。ソ連崩壊後、さらに一層「改革・開放」政策を推進し、リーマン・ショック後には膨大な国家財政を投入して世界大恐慌が本格化するのをいったんは回避した。
 そして自らは「世界の工場」としてバブル経済での延命を図った。大国化した中国スターリン主義は今、その「改革・開放」政策で積もり積もった矛盾をあらわにし、米帝との対峙対決構造の中で争闘戦も激化させ、その末期的な危機を爆発させている。
 中国スターリン主義の危機を何よりも根底で規定しているのは、中国における労働者階級の嵐のような決起である。大陸の労働者の闘いは、新自由主義的な「改革・開放」政策と真っ向から対決して、中国スターリン主義を根底で揺さぶっている。今回の香港危機もその観点が重要である。

①香港危機の爆発

 香港で学生と労働者によるセントラル(*)占拠闘争が、香港政府・中国政府の弾圧、民間反革命の破壊攻撃と対決しながら9月末より闘われている。それは中国スターリン主義を揺るがし、東アジアの大激動を促進する歴史的な闘いになっている。
〔*セントラル=中環。香港中西区に位置する香港島北岸の一地域で、香港の中心商業地区、金融街がある〕
 この街頭占拠闘争の直接のきっかけになったのは、香港の行政長官をめぐる選挙制度改革である。1997年に香港がイギリスから中国に返還された時、今の香港の体制を50年間は維持すること(いわゆる「一国二制度」)、および行政長官の選挙には将来的に普通選挙を導入することを中国スターリン主義は確約した。

香港行政長官の選挙制度改革を巡る闘争

 その香港での普通選挙の導入に関して、今年8月31日に「第12期全国人民代表大会常務委員会第10回会議」は、選挙制度改革を決定した。しかしそれは実にペテン的なものであった。
 普通選挙を香港に導入する代わりに、候補者をあらかじめ2〜3人に決定する「指名委員会」という組織を新設することとし、最初から中国政府に対して批判的な候補者は立候補できない制度になっているのである。これでは何も変わらない。このペテン的な「普通選挙」導入に反対し、誰でも立候補でき、投票権を持つ本来の普通選挙の導入を要求して、今回の大闘争が爆発したのである〔事件全体の経過は、10月18日現在までで、14〜15㌻の表のとおりである〕。

学生がストに突入

 9月22日に、香港の大学生ら(大学など25校)が授業のストライキに突入し、香港中文大学で1万3000人の決起集会を開催した。ここには教員も数多く参加している。そして梁振英行政長官に、48時間以内の直接対話を要求した。直接対話を拒否したことから、26日より数千人の学生が政府庁舎前で集会を行い、100人以上が敷地内に突入し、警察隊と激突した。27日に警察は政府庁舎前から学生を強制排除しようとしたが、逆に参加者が増大し、5万人にふくれあがった。61人の逮捕者が出たという。
 また24日には、香港の30の労働組合と民間団体(後に41団体に拡大)による「真の普通選挙が必要で、民衆の生活を改善しなければならない」と題する声明が発せられた。その声明では「中国共産党は、ほとんど完全に植民地政府の統治手法を用いており、大企業と一気に手をつないで香港を治めようとしており、それは香港の貧富の差のひどさをますます激しくしている。......現在の政治制度と全人代常務委の決定は、基層の労働者の訴えと政治的権利の保障を抑圧するものであることは明らかである」と弾劾し、真の普通選挙の導入などを訴えいている。
 28日にいたって、10月1日に予定されていたセントラル占拠闘争を前倒しで行うことが決定された。

9月末から始まったセントラル占拠闘争

 街頭占拠は金融街に隣接する政府庁舎から銅鑼湾地区などの香港島内の繁華街、さらに対岸の九龍半島側にまで一挙に拡大した。金融街に続く幹線道路が占拠され封鎖された。参加者は日々拡大し、9月28日に7万人、9月29日に13万人、10月1日には20万人を超えたとも言われている。連日警察隊と激突。この運動は、警察の催涙スプレーを防ぐために参加者が雨傘を持っていたことから「雨傘革命」と呼ばれるようになった。

香港職工会連盟がストライキ宣言

 9月28日には、香港職工会連盟が「ストライキ宣言」を発表し、全香港ストライキを宣言した。「このような不正義の政権を前にして、暴力的な弾圧を前にして、労働者は絶対に身を挺して立ち上がらなければならない。全香港の労働者が決起することで、初めて独裁政権を敗北させることができる。民主と正義を守るために、強権的な弾圧と対抗し闘い、学生を孤立闘争に追い込んではならない」として、翌29日に労働者は仕事を放棄して政府庁舎前にかけつけ、学生と市民とともに闘うことを訴えている。この運動を根底で支えているのは、実は労働者であり、労働組合なのである。
 こうした呼びかけに応えて、昨年3月に英雄的な40日間の長期ストライキを闘い勝利した香港の港湾労働者も再びストライキに突入した。
 こうした学生・労働者の闘いの空前の拡大に、香港政庁は警察隊の弾圧で応えるとともに、民間の反動勢力を数千人規模で組織して、白昼公然と参加者を襲撃し、泊まり込みテントを破壊するなどのテロで、この運動を破壊しようとした。彼らは、香港ブルジョアジーに金で雇われた民間反動勢力である。香港ブルジョアジーは、こうした学生と労働者の運動の発展が、自分たちの階級支配を脅かすことに恐怖して、中国スターリン主義と一体となり全面的な闘争破壊攻撃に出て、反動分子を金で組織しているのである。
 この学生と労働者の大闘争に追いつめられた香港政庁は、一方で「対話に応じる」という姿勢をちらつかせながら、もう一方で警察の弾圧と、民間反動勢力を動員しての暴力的な運動破壊を続けている。いくつかのバリケードの撤去に警察は入っており、それとの激突が開始され、情勢は極めて流動化している。
 この香港の闘い、現在起きている事態をどう見るか?

「民主主義」問題と直結する新自由主義の破綻

 何よりもはっきりさせなければならないことは、香港情勢が、そして中国情勢がまったく新しい段階に入ったということである。
 香港の存在は、1978年から始まる中国の「改革・開放」政策に決定的な役割を果たした。最初の経済特区である深圳市は香港の隣にある。それは世界で最も極限的な新自由主義的な資本主義を体現している香港を中国が利用し、それに依拠して自国の巨大な経済発展を遂げていったことを意味している。それは97年の香港返還以来、中国スターリン主義が香港を自分の体内の一部に取り込むことでますますそうなっていった。それはすなわち、香港が持つ新自由主義的な資本主義の矛盾を、中国政府も抱え込んだということであり、そうならざるを得ないということである。
 今回の事態は、直接的には「長官選挙」をめぐる「民主主義」の問題として問題が爆発している。だが、香港経済の破綻、すなわち新自由主義の破綻とこの「民主主義」をめぐる問題(すなわちスターリン主義による人民支配の問題)は直結しており、大恐慌の進展と新自由主義政策の破綻、中国経済、香港経済の破綻の中で、この運動は結局、階級闘争の課題として必然的に発展していかざるをえないのである。
 本質的には妥協の余地のない問題で学生、労働者民衆と中国政府が対立し、大闘争になっているが、この問題は、「民主主義」をめぐる問題としてではなく、階級闘争の問題としてしか解決しないのであり、それは中国スターリン主義と、今の香港政庁を労働者階級が倒す以外にないのである。

スターリン主義打倒までやむことのない闘い

 したがって今回の事態が、仮にいったんどのような形になろうとも、根本問題は何ら解決していない。中国スターリン主義打倒に至るまでこの闘いはやむことはない。それは1989年の天安門事件がやはり「民主化」のレベルの問題ではなく、実は労働者の階級的な闘いにかかっていたのだという総括と一体である。香港の労働者人民の課題と中国本土の労働者人民の課題は完全に一体だということが示されたのだ。
 したがって、今回の闘いは極めて歴史的な闘いになっている。この運動の先頭には10代の若い学生や青年が立っているし、また労働組合・労働者が根底でこの運動を支えている。そのように見た時、この二つの事実は実に決定的だと言える。
 大陸の労働者に大きな影響を与えていることも重要である。中国政府が最も恐れることは、この運動が大陸に波及し、89年の天安門事件のようなことが再び起きることである。そのために、北京の天安門広場を厳戒態勢に置き、ネット規制をかけてネット上からこの香港の事態の報道や書き込みを抹殺し、さらに大陸の民主運動家などを次々と逮捕する弾圧をかけている。この香港の事態が、中国スターリン主義の支配を揺さぶっていることを認めたようなものである。恐れているのは、大陸での労働者の決起である。
 香港情勢は、中国の「改革・開放」政策の展開、新自由主義的な政策の展開が生み出した巨大な矛盾の爆発である。それは香港の労働者の闘いが、大陸の労働者の闘いと結びつき、労働者の階級闘争として大陸の労働者とともに中国スターリン主義打倒の闘いへと発展していくまでやまない闘いである。
 そしてそれは同時に、全アジア、東アジアの大激動、労働者階級の決起とつながっている。今回の香港の学生・労働者の闘いは、アジアの学生・労働者の決起を促し、世界革命の一環としてのアジア革命を大きく促進していこうとしている。

②失業、賃下げ、民営化・非正規化に反対して決起する労働者

 香港情勢は大陸の労働者の闘いとも完全につながり、新自由主義に対する闘いの新たな発展を生み出そうとしている。バブル崩壊で、企業、工場の倒産や閉鎖、移転が相次ぎ、多くの労働者の首切りや整理解雇、賃下げが強行されている。この間多いのは、工場の経営者が資金を持って夜逃げしてしまうケースであり、それに対する怒りと、その補償を求めたストライキが増大している。インフレの進行が、これにますます拍車をかけている。もはや「生きられない」という現実が、労働者を命がけの職場闘争と労働争議に決起させ、資本とスターリン主義政府への激しい闘いとなっている。
 10月4日、上海駿養生チェーン有限会社の2000人の労働者が上海市政府前に座り込み、未払い賃金の支払いを求めた。上海にあるこの会社の60の店舗が倒産しようとしており、労働者は3カ月賃金未払いの状態だ。警察の弾圧に遭い、20人以上が逮捕され、多数の負傷者が出た。
 10月1日、江蘇省無錫市堰橋鎮にある湘楽貿易有限会社の社長が、金を持って夜逃げし、100人以上の労働者が数カ月賃金を受け取れなかった。地元政府は、10・1国慶節の準備を口実にして対応を拒否したので、労働者は仕方なく恵山区政府まで賃金の支払いを求めてデモをして警察の弾圧に遭った。多数が負傷し、2人が逮捕された。
 一方で最近特徴的なのは、不動産に関する証券を取り扱う証券会社(多くがシャドーバンキング)がバブル崩壊、金融危機への突入の中で倒産し、債権者への債務返済不能に陥り、債権者が抗議行動に立つケースである。中国の場合、一般の労働者庶民が政府の仲介・「保障」もあって、騙されてなけなしの貯金で証券を買っているケースも多い。バブル崩壊、金融危機への突入の中で、こういう形でも労働者の怒りが資本に対して爆発している。
 9月25日、四川省成都市で、滙通融資担保会社の1000人を超える債権者が、債務の支払いを求めて会社と政府関係にデモ行進し、警察に弾圧され、20人が逮捕された。この会社の最大の株主が金を持ち逃げし、多くの会社幹部と連絡がとれなくなった。損失金は40億元(680億円)にものぼっている。債権者は、証券会社と政府の癒着、詐欺的な経営などを弾劾している。
 このような闘いが今、中国では連日のように各地で起きている。さらに工場の大気汚染や廃液、有害物質の散布や廃棄など、政府と資本による環境破壊に抗議する闘いもあちこちで起きている。
 一方で、バブル下の乱開発のもとで農地や宅地の強制収用に反対して身を張って闘う中国の農民の闘いも激しく各地で闘われている。こうした労働者、農民の闘いが今、中国政府を激しく揺さぶっているのである。

③ウイグルなどの諸民族の決起

 ウイグルで相次ぐ爆破事件など中国スターリン主義に対する決起は、ウイグルやチベットをはじめとする諸民族の怒りがすでに極限にまで達していることを示している。
 今の中国の民族問題は、ひとつは一国社会主義建設を自己目的とするスターリン主義体制自身が本来持っているすさまじい民族排外主義支配が根底にある。だが、さらに今日的には、中国の「改革・開放」政策、新自由主義の政策が諸民族と漢民族の異常な格差を生み出していること、また「改革・開放」政策のもとでの乱開発が諸民族の土地を奪い尽くし、生活を破壊していること、さらにこれらの諸民族の土地が歴史的に核実験場にされ、深刻な放射能汚染にさらされていること、そうした政治的経済的差別の上で、農民工となって都市に出た諸民族の労働者は、職場でも最も待遇のひどい非正規雇用として差別される現実があることなどが、民族差別を拡大し、その決起を生み出している原因となっている。
 つまり、今日の中国の民族問題は、本来スターリン主義が持っている民族排外主義的な本質に加えて、まさに「スターリン主義体制のもとでの新自由主義的な政策」が生み出しているものなのである。したがって諸民族の労働者と漢民族の労働者が階級的な団結を形成することで中国スターリン主義と闘い、それを打倒することこそが求めらている。民族を超えた階級的な団結の形成こそが、核心である。

④国際連帯こそが求められている

 中国のバブル経済の崩壊は、世界大恐慌の引き金を引く。帝国主義がその末期的な政策として展開している新自由主義政策は、帝国主義下の労働者の激しい闘いを今呼び起こしている。そして国際連帯を求めている。
 今の中国の労働者階級は、帝国主義から学んだ新自由主義の手法を採った「改革・開放」政策の中で徹底的に搾取・収奪されている。それは農民から諸民族の労働者にも、場合によってはさらに激しい形で襲いかかっている。
 まさに求められているのは新自由主義との対決であり、それを推進する帝国主義とスターリン主義の打倒である。現代世界を転覆し、労働者階級が真に社会の主人公となる社会を革命を通じて自らの手でつくりだすことだ。
 そのためには、何よりも国境や民族を超えた労働者階級の団結が求められている。
 帝国主義を今こそ打倒しよう! スターリン主義を打倒しよう! 中国の労働者階級の占める位置は世界革命にとって決定的である。
 動労千葉の「外注化阻止」「非正規職撤廃」の闘いは、新自由主義と闘うすべての労働者の共通のスローガンである。ここで全世界の労働者は団結し、この腐りきった社会を転覆しよう!
 国鉄決戦を貫き、その闘いの地平で、中国の労働者との連帯をかちとっていこう!

(写真 上海市政府前に座り込んで、未払い賃金の支払いを求める上海駿養生チェーン有限会社の労働者【10月4日】)
(写真 賃金の支払いを要求して恵山区政府前で抗議する江蘇省無錫市の湘楽貿易有限会社の労働者たち【10月1日】)
(写真 四川省成都市で債務の支払いを求めて会社と政府関係にデモする滙通融資担保会社の債権者たち【9月25日】)