2008年4月14日

命を縮めろと言うのか 後期高齢者医療制度許すな

週刊『前進』06頁(2339号4面2)(2008/04/14)

命を縮めろと言うのか
 後期高齢者医療制度許すな
 

 前首相・安倍晋三はその著書『美しい国へ』で「少子国家の未来」と題して「本来の寿命が来るまでに、病気で苦しんだり寝たきりになったりしている期間がある。この不健康な期間を短くし、平均寿命と健康寿命の落差を小さくすることができれば医療費や介護費用が大いに節約できる」とうそぶいている。まさにこの「命を人為的に縮める」政治が4月、福田内閣の後期高齢者医療制度の開始とともに始まっているのだ。
 後期高齢者医療制度とはそれまで行われてきた国保や健康保険加入を前提とした世帯単位を含む医療制度(老人保健法)とはまったく異なる。75歳以上(65歳以上の一定の「障害者」も含む)を完全に分離し、要は「高齢者だけ独立採算でやってくれ」というとんでもない医療切り捨て策だ。 
 これまで保険料無料だった被扶養者200万人が新たに徴収に組み込まれ、生活保護者を除き1300万人近い人が平均毎月6千円を取り立てられる。遺族年金や障害年金からは禁止されていたはずの保険料天引きも介護保険と同様に強行される。当面、被扶養者の2年間徴収軽減が行われるというが、保険料見直しでいくらでも値上げできる。国庫負担・支援金引き下げも可能で労働者家族への直撃は必至だ。
 他方、医療内容はどうか。08年改定時に後期高齢者医療制度に対応して新診療報酬体系に変わった。75歳を境に「年齢で異なる診療報酬」という珍妙でおぞましい分断と抑圧の格差医療が登場したのだ。
 (1)「後期高齢者診療料」(600点)。これは担当医制を伴った包括定額制の導入である。患者や医者の選択によって診療報酬の総額を決めた医療を選べるというが、実は定額制のもとで検査や診断等の「手抜き」を誘い、医療機関のもうけを導き出すための道具であることを弾劾しなければならない。
 (2)「後期高齢者総合評価加算」(50点)「後期高齢者退院調整加算」(100点)。これは入院当初よりあらかじめ「退院後の生活を念頭に置いた医療を行う」ことを奨励し、報酬を出すのである。つまり病院からの追い出し攻撃そのものである。
 (3)「後期高齢者にふさわしい医療」の柱に「終末期医療」を掲げて、「後期高齢者終末期相談支援料」(200点)を新設した。患者を「終末期」(まったくのインチキな造語である!)と見なして本人の同意を文書や動画で取りさえすれば「延命治療の中止等ができる」と強弁するものである。まさに「リビングウイル(生前の意思表示)」の強要であり、75歳以上の患者を「死に急がせる」ことで最末期の資本主義を防衛しようとしているのである。しかし死すべきは資本主義・帝国主義だ!
 新自由主義攻撃のもとで世界的な医療・福祉の民営化が始まっている。労働者階級の分断に乗じ、スキあれば資本家だけが搾取し収奪し肥え太ろうとしている。しかし労働者階級は団結することで資本主義を終わらせることができる。後期高齢者医療制度を階級的労働運動の力で粉砕しよう。
 (高野晶)
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 後期高齢者医療制度のポイント
◆75歳以上は強制加入
 75歳以上が全員強制加入。「障害者」や寝たきりの人、人工透析患者は65歳以上から。
◆保険料を年金から天引き
 後期高齢者医療保険料を徴収。被扶養者(家族)からも保険料を徴収。月1万5000円以上の年金受給者は年金から天引き。介護保険料と合わせれば月1万円以上に。
◆医療費負担も増加
 70~74歳の患者負担(窓口負担)も1割から2割に、「現役並み所得者」は3割に。
◆「包括払い」で医療を制限
 診療報酬の「包括払い」で高齢者の医療を制限。病院は検査や手当などをやればやるほど赤字。長期の治療が必要な慢性疾患患者は病院から追い出されることにつながる。「家で死ねっていうこと」「病院に連れてくるな」(厚労省発言)
◆保険料を払えない人から医療を奪う
 滞納者からは保険証を取り上げて短期保険証・資格証明書を発行し、医療を奪う。