2008年6月23日

怒 後期高齢者医療制度 社会保障獲得を革命の課題に 団結の力で労働者の生存守る

週刊『前進』06頁(2348号5面4)(2008/06/23)

怒 後期高齢者医療制度 福田の姑息な見直し許さぬ
 社会保障獲得を革命の課題に 団結の力で労働者の生存守る

 第1章 孤立と分断、団結壊す新自由主義

 福田政権は、後期高齢者医療制度の実施強行が労働者階級の怒りの炎に油を注いでいることにすくみあがり、低所得者層の一定の保険料徴収の減額・先送りや年金天引きの家族口座からの選択制など姑息な見直し策を提示した。しかし、なんら根幹は変更されていない。撤廃あるのみだ。
 毎年2200億円削減を掲げた経済財政諮問会議の骨太方針のもと、社会保障解体攻撃は、ガソリン、食料、公共料金値上げを始め労働者階級への大収奪攻撃として襲いかかっている。
 大資本には「経済成長」をたてに減税が継続される一方、社会保障費からの大幅な公費の削減が開始された。世代間分断をあおりたて、自助努力と死をも迫る労働者の使い捨て攻撃が始まったのだ。
 政府・財界は、労働者階級に低賃金・強労働を強制し、住居を奪い、青年を「ネットカフェ難民」へと追い立て、身ぐるみ引きはがすかのように公的医療・福祉、生活保護費まではぎ取ろうとしている。
 まさに新自由主義のもとでの徹底的な孤立と分断、団結破壊の攻撃だ。
 他方で「自由選択可能な医療・福祉」と叫びながら、保険外診療の混入(要は医療をカネ次第にすること)に大きく道を開け、一握りの富裕層だけが手にすることのできる医療・福祉への大変貌(へんぼう)をたくらんでいる。「商品化や格差」を肥やしにして生き延びようとする資本主義・帝国主義を絶対に葬り去らなければならない。
 社会保障は本来、賃金では補うことのできないがゆえの階級闘争の産物といえる。
 レーニン率いるロシア社会民主労働党は1912年、プラハ協議会で「国営労働者保険綱領」を提起し、①一切の社会保障の国費・企業負担、②労働者家族全員の保障、③労働能力を失うすべての場合の保障、④被保険者の自治運営—の4原則を鮮明にさせ、1917年ロシア革命を準備し闘った。
 レーニンの闘いに学び、社会保障獲得を、賃金制度撤廃を目指した労働者階級の自己解放闘争・全人民解放そのものの課題として闘っていかなければならない。

 第2章 高齢者の分離と切り捨てが狙い

 後期高齢者医療制度は、75歳(一定の「障害者」では65歳)で世代を分断し、それまで国保や健保制度に含まれていた「世代共存」や「老後への蓄え」といった概念すら破壊し、高齢者独自の保険料徴収制度と独自の診療報酬体系(最初は部分的だが)を導入した。
 まさに高齢者の分離切り捨てだ。新制度推進のために各地で講演を担った厚労省の役人・土佐和男の弁は本音をあけすけに語っている。
 土佐は今年1月18日の石川県での講演で「月25回通院している人が多くいれば県の医療費が上がる。月20回に減らせば医療費が下がり保険料は下がる。後期高齢者の方々に痛みを感じ取っていただく」と公言している。保険者を市町村から県の広域連合に変えた理由は「市町村だと一般会計から繰り入れてしまうから問題」と自治体の医療費削減の自助努力に言及した。
 さらに「北海道では通院が気軽にできないから医療費が低い」「福岡は精神科病院が多いから医療費が高い」「大阪はかゆいところに手が届く医療をしてるから高い」と吹聴。結局「助け合いや予防活動などで保険料が下がる」「私なら風邪を引いたら乾布摩擦をしていた」とまで強弁した。
 その上、今後の給与明細では「誰のために保険料が上がったのか、誰が努力して保険料が下がったのかがはっきりみえる形になった」と世代分断をあけすけに語った。年金天引きや資格証明書発行(いったん10割窓口負担)の強行についても「国保のように徴収と給付が別ではなく広域連合で運営が一本化したので可能になった」と居直った。まさに「金がなければ救命しない」ということだ。
 保険料負担でも世代別負担を数値化し、2年ごとの改定で必ず上がる仕組みにした。窓口負担においても基本1割から「3割負担にアップする現役並み所得基準」を「将来的には400万円ぐらい(夫婦で)に引き下げたい」と公言。団塊の世代に当たる厚生年金受給夫婦などは直撃そのものだ。まさに労働者の使い捨てなのだ。
 後期高齢者医療制度は「心身の特性にふさわしい医療」を掲げた。だがその実態は診療報酬の包括・定額制を柱にした後期高齢者診療料(かかりつけ医制)の導入にある。
 さしあたっては患者の選択だが、上限のある安さを売り物に各種検査や処置をはぶき、利潤追求に走り、逆に経営の破綻すら呼び込むものだ。他方「終末期医療」を終末期相談支援料として診療報酬化させた。

 第3章 治療打ち切りを奨励する報酬化

 「終末期」という用語自体が得手勝手な「死に急がせる」造語であるが、「終末期における診療方針等について十分に話し合い文書又は映像により記録」した場合に2千円が医療側に算定される。「自発的な延命治療の中止の申請」に手助けすれば報酬になるのだ。「患者本人の希望」を装っているが、「治療を打ち切り、医療費削減に貢献すれば報酬化される」というのとまったく同じ発想だ。
 実際「ガイドラインに基づいた治療方針」とは「本人の意思が判断できないときは医療チームで延命措置を打ち切ることができる」という代物だ。またモルヒネなどの量的規制すら緩和し、致死量もいとわず処置できるという。患者殺害を合法化させる「安楽死・尊厳死」法の制定すら準備するものである。
 今国会では臓器移植法の改悪審議も強行された。「臓器提供を拒否していない時、家族が反対しない時」は小児も含めて「脳死」と見なされ、心臓を始め臓器が取り出される法案への改悪が進められている。また介護保険、後期高齢者医療制度、障害者自立支援法の統合化への動きもくすぶりながら存在している。
 今こそ階級的団結の力で労働者階級の生存を守る時だ。階級的労働運動の力でサミット、福田政権をぶっ飛ばし、後期高齢者医療制度撤廃へ突き進もう。
 (高野 晶)