2008年7月14日

骨太方針2008 “社会保障費削減を貫く” 公務員首切りと消費税大増税狙う

週刊『前進』06頁(2351号3面1)(2008/07/14)

骨太方針2008 “社会保障費削減を貫く”
 公務員労働者の首切りと消費税大増税も狙う福田

 福田政権はますますその危機と破産をあらわにしている。世界経済が金融大恐慌に突入する中で、洞爺湖で開かれたG8サミットは、これへのなんの対応策も打ち出せず、激化する帝国主義間・大国間の対立のみがさらけ出された。全世界の労働者階級の怒りに直撃されたサミットは、帝国主義がもはや打倒される一歩手前にあることを突き出した。その中で福田政権は6月27日、「経済財政改革の基本方針2008」(骨太の方針Ⅷ)を閣議決定した。これは、日帝の体制的危機を、とことん労働者階級を犠牲にしてのりきろうとする宣言だ。

 第1章 小泉改革を継承し最大限の歳出削減

 1000兆円近い財政赤字を抱える日帝国家は、もはやどん詰まりの危機にある。しかし支配階級は、これを労働者階級を犠牲にしてのりきろうと躍起になっている。
 今回の骨太方針は、小泉政権が06年の骨太方針で押し出した「2011年度に国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する」との目標を再確認し、「歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく……最大限の削減を行う」と明記した。
 06年度以来、この方針のもとに社会保障費を5年のうちに1・6兆円も削減するというプランが強行され、社会保障費は年々2200億円規模で削られてきた。これと併せて実施された定率減税廃止などの労働者への大増税により、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の赤字はGDP比で03年度の19・8%から07年度の4・4%へと劇的に減少した。
 これは、GDPの10%をも超える巨大な負担増が、労働者人民にのしかかってきたことを示している。今回の骨太方針で福田は、自民党内部からさえ噴き上がった悲鳴を抑え込んで、今後もこうした方針を継続していくと宣言した。
 だが、どんな強引な手法を用いようと、基礎的財政収支の黒字化達成など不可能だ。2007年度の国の税収は、予算で見込んでいた額を1兆5000億円も下回った。その最大の原因は、法人税の落ち込みだ。サブプライムローン問題に端を発した世界金融大恐慌が、日帝の国家財政を直撃したのである。
 基礎的財政収支とは「国債発行額を除く歳入」から「国債の元利償還費を除く歳出」を引いたものだが、これが赤字の状態が続くと、必ずどこかで国債は暴落する。返済の当てのない膨大な借金を抱え、もう金を貸してくれる人がいなくなることへの恐怖に震えているのが、今の日本帝国主義の実態だ。このような国家は労働者の力で打ち倒されて当然である。

 第2章 インフレ進行下で消費税率アップへ

 福田政権は、今回の骨太方針に、「消費税を含む税体系の抜本的な改革について、早期に実現を図る」と明記した。
 だが明らかに福田は、消費税増税が引き起こす労働者階級の大反乱におびえている。骨太方針の閣議決定に先立って、福田は消費税アップについて「決断しなければいけない大事な時期」と言ったかと思うと、一転して「増税は2、3年後の長い範囲で考える」と表明するなどの動揺をくり返した。
 原油や食料品の価格が上昇し、大インフレが労働者の生活を脅かしている。しかもそれは、ほんの一握りの金融独占ブルジョアジーが、原油や食糧を投機の対象にしてもてあそんでいる結果だ。彼らはついこの間までは、低所得の労働者を食い物にするサブプライムローンに群がっていた。こんな現実を目の当たりにしている労働者に対して、福田政権が大増税を強行した瞬間、引き起こされる怒りの大きさはとてつもないものになる。現に、全世界で大規模なストライキやデモに立ち上がっている労働者の闘いの基底には、大インフレに対する激しい怒りが横たわっている。
 かといって、支配階級には消費税増税以外の選択肢はあり得ない。だから自民党税制調査会も、例年になく早い時期から来年度の税制改定に向けた議論を開始した。消費税増税に向けた決戦を構えてきたのだ。
 支配階級がもくろんでいる増税の規模はすさまじい。かねてから日本経団連は、消費税率を10%に引き上げろと叫んできた。額賀財務相は、「消費税率を20%前後とし、所得税や法人税を下げてバランスを取っているのが世界の姿だ」と公言している。
 額賀があけすけに述べているように、消費税増税の本当の狙いは法人税減税の財源を確保することにある。骨太方針2008も、「抜本的税制改革に併せた法人実効税率の在り方の検討等によるビジネスコストの低減等に取り組む」とあからさまに言い放った。
 骨太方針はまた、「対日直接投資を含め企業の国際的立地選択を阻害しない」ために法人税を引き下げるという。新自由主義の攻撃が本格化した80年代以来、帝国主義は資本減税の大きさを競い合ってきた。これと、資本の延命のために投入された巨大な財政支出こそが、財政赤字の原因だ。
 世界金融大恐慌が現に始まっている中で、福田の描く「経済成長戦略」なるものは、結局は大規模な資本減税を軸に、資本に一層の自由を与えるということでしかない。骨太方針は、「資源や食料価格の高騰はリスクでもあるが、その一方で攻めの対応によって価格競争力の復活の好機にもなる」などと言う。投機マネーに全面的に市場を明け渡すことが、日帝の描く唯一の「成長策」ということだ。すでに破産し、全世界で労働者階級の反撃に迎え撃たれている新自由主義にどこまでもしがみつく以外に、帝国主義の延命策はないのである。
 支配階級は、口を開けば「財政危機だ。だから増税も社会保障の削減も仕方ない。公務員賃金の削減など当然だ」と叫び立てる。だが、「財政危機」を叫ぶ当の資本家どもは、税制をさらに改悪して税金を逃れようと必死なのだ。

 第3章 「ムダゼロ」叫んで公務員に攻撃集中

 福田政権は、消費税をはじめとする大増税を労働者に押しつける手段として、「税金の無駄使い撲滅」だの「ムダゼロ政府」だのと叫び始めた。公務員労働者の首切りと大幅賃下げに一挙に乗り出してきたのだ。その突破口に、社会保険庁の解体と、それに伴う職員の選別・再雇用の攻撃がある。
 さらに骨太方針は、道州制の本格的な導入に向け、09年度に「新分権一括法」を策定することを打ち出した。すでに、小泉以来の「三位一体改革」で、国が地方自治体に交付する地方交付税交付金は大幅に削減され、自治体財政は崩壊的危機にある。それを逆手にとって、自治体労働者に対する激しい攻撃が、大阪府の橋下知事を先頭にして仕掛けられている。
 だが、財政赤字は資本がつくりだしたものであり、労働者には一切責任がない。
 そもそも、巨大な国家財政赤字を「社会全体の危機」であるかのように言うこと自身がペテンだ。国にカネを貸す者がいなければ、財政赤字は生じない。巨大な財政赤字の累積は、裏を返せば、問題は膨大なカネを所有し、それを国に貸し付け、労働者人民からむしり取られた税金から支払われる利子をむさぼり食っている者がいるということだ。国債所有者の約3割は民間金融機関だ。大銀行や大資本にとっては、国家財政の赤字も収益の源泉になっている。
 大増税も社会保障の解体も公務員リストラも、実はこうした連中の利害のために行われていることなのだ。
 金融資本からの国の借金など、労働者が権力を握り、生産を支配して、踏み倒す以外にない。また、それ以外に現実的な財政赤字の解決策などあり得ない。消費税の大増税を打ち出した骨太方針への労働者階級の回答は、プロレタリア世界革命の実現である。

 第4章 骨太方針2008の骨子

①2011年度に国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する
②歳出全般にわたり、国・地方を通じて最大限の削減を行う
③消費税を含む税体系の抜本的な改革について、早期に実現を図る
④法人実効税率のあり方を検討し、ビジネスコストの低減に取り組む
⑤「アジア経済・環境共同体」構想を実現する