2008年7月21日

〈焦点〉 破産し危機深めたサミット 戦争・恐慌・貧困の帝国主義打倒へ

週刊『前進』06頁(2352号3面5)(2008/07/21)

〈焦点〉 破産し危機深めたサミット
 戦争・恐慌・貧困の帝国主義打倒へ

 G8サミットは大破産を遂げた。厳戒体制を打ち破った6・29渋谷デモを始めとする国際プロレタリアートの怒りの決起に迎え撃たれただけではない。ブルジョア的な意味でも失敗したのだ。
 米・EU・日・ロの間でも、G8にG5(中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ)などを加えた主要排出国会議(MEM)やアフリカ7カ国を加えたサミット拡大会合でも、あらゆる問題において深刻で激烈な矛盾と対立があらわとなり、ほとんど何も一致できなかった。国際帝国主義とG8サミットは、もはや世界を統治する力を失っている。帝国主義の世界支配自体が破綻(はたん)している。帝国主義諸国は、サミットをも契機に自らの延命をかけて外への侵略戦争—世界戦争と内への階級戦争とを絶望的に強めざるをえない。そしてそれは労働者階級・被抑圧民族人民の怒りの大反乱をますます呼び起こすのだ。
●「50年までに50%削減」消滅
 最大の焦点に設定された地球温暖化対策問題では、G8首脳宣言は「2050年までの温室効果ガス排出量半減」という世界全体の長期目標について「国連気候変動枠組み条約のすべての参加国との共有を求める」とするにとどまり、「G8の合意」として明記することもできなかった。しかもMEMでは「50年までに50%削減」の長期目標数字さえ消された。
 米帝が「G8の合意は他のすべての国の合意があって初めて成り立つ」(米政府高官)と言っているように、中国やインドなどの大量排出国が参加するMEMが行動しない場合、G8宣言は「空証文」に終わる仕組みになっている。米帝は中国やインドの抵抗を当て込んで「共有」の文言盛り込みに賛成したのだ。
 しかも許せないことに、「気候変動対策」と「エネルギー安全保障」の名で核=原発推進が積極的に位置づけられたのである。
●世界金融大恐慌に無力を暴露
 世界経済、つまり世界金融大恐慌対策、投機マネー・ドル安・インフレ(原油と食糧の高騰)対策の問題については、米帝自身がこれに触れることさえ嫌がり、まともな論議にもならなかった。帝国主義諸国は、金融大恐慌の現実に対して無力であり、恐慌対策をめぐって分裂・対立している姿を世界にさらけ出した。サミット後も米住宅金融公社2社の経営危機が激しく爆発し続けている。
 異常な原油価格高騰に対して、G8首脳宣言は「強い懸念」を表明。価格高騰の原因をめぐって需給逼迫(ひっぱく)説と投機資金説とで意見が対立した。具体的には精製能力の増強、産油国への増産要請、消費国の省エネルギー推進など中長期的対策を提起したが、これらは強力な施策ではない上に、投機資金を規制できず、G8には原油価格高騰を止められないことが明らかになった。
 インフレの要因となっているドル安への対応については、ブッシュの「強いドルは自国の利益だ」との発言には反論が唱えられず、欧州首脳のほぼ全員が「ユーロは強すぎる」との認識で一致した。しかしドル安是正策は議論されず、表面的な協調が保たれただけだ。現実にはサミット直前の7月3日に欧州中央銀行(ECB)が利上げに踏み切るなど、ユーロとドルとの争闘戦が激化している。
 金融市場の混乱には打つ手がない。G8首脳宣言は「深刻な緊張が依然存在している」と事態を追認することしかできなかった。
 食糧価格の高騰問題に対応して「食糧安全保障」に関する特別声明が出された。高騰の原因と指摘されるバイオ燃料についての指針づくりや、輸出規制の撤廃、国際的な備蓄制度の検討、農業増産へ投資の増加などの方針が打ち出された。投機資金規制策は盛り込まれず、当面の穀物価格の上昇には歯止めはかからない。
 何よりも帝国主義がアフリカを始めとする新植民地主義体制諸国(「途上国」)の農業を徹底的に破壊してきたことが食糧不足、食糧暴動、飢餓の根本原因だ。帝国主義には食糧問題を解決することはできないのだ。
●イラン包囲網で侵略戦争切迫
 政治問題では、イランと北朝鮮への圧力・包囲網が確認された。
 イランに対して「深刻な懸念」(議長総括)を表明、ロシア以外の全体が「このままなら制裁強化しかない」と大合唱するに至った。ブッシュは「イランのウラン濃縮活動の断念に向けた連携強化」をロシアのメドベージェフ大統領やドイツのメルケル首相らに求め、イラン包囲網構築に躍起となった。対イラン制裁強化の恫喝にもかかわらず、イランはむしろ帝国主義への対抗を強め、7月4日からの米英のペルシャ湾軍事演習、6月のイスラエルの大規模軍事演習に対抗して中距離弾道ミサイル発射実験を行った。
 北朝鮮に対しては、「核申告」と「テロ支援国家指定解除」、数百万㌧の食料援助、6者協議再開で封じ込めを図り、拉致問題の「早期解決」を迫ったが、米日帝が戦争政策を転換したわけではまったくない。
 結局、帝国主義はイラン、北朝鮮に戦争圧力を強めるしかない。
 洞爺湖サミットの大破産と反動性・反人民性はいよいよ鮮明だ。階級的労働運動の白熱的展開で、戦争・失業・貧困をもたらす最末期帝国主義を打倒し、世界プロレタリア革命を実現しよう。