2008年11月24日

道州制=200万人首切り粉砕を 日本経団連 「09年に基本法の制定を」

週刊『前進』06頁(2369号3面2)(2008/11/24)

道州制=200万人首切り粉砕を
 先兵・橋下大阪府知 事を打ち倒せ
 日本経団連 「09年に基本法の制定を」

 第1章 「2015年導入」へ第2次提言

 世界金融大恐慌—世界同時不況のもと帝国主義間争闘戦が激化しているなかで、日帝・支配階級はその延命をかけて一斉に道州制導入に向かって動きを加速させている。
 道州制とは何か。端的にいえば公務員200万人首切り、公務員労働運動解体、改憲・戦争の攻撃だ。直接には①都道府県を廃止して全国を約10の道または州に分割し、道州に国の権限を移譲する②市町村合併で最終的に300の基礎的自治体に再編する③国の役割を外交・軍事などに特化する——国家大改造だ。戦後民主主義から戦争国家体制へ転換する改憲クーデターだ。
 日本経団連は11月14日、「道州制の導入に向けた第2次提言」を発表した。2009年に「道州制推進基本法」を制定し、2015年に道州制を導入すべきだと主張、道州制導入を麻生政権と「軌を一にして前に進めたい」と強調した。
 自民党道州制推進本部も11月13日、道州制基本法案を検討する委員会の設置を決め、基本法案の来年の国会提出を目指す方針だ。年内に道州制の理念や移行目標などを定めた基本法案骨子をまとめる。
 麻生首相は、政権発足時に公明党と「道州制に関する基本法の制定に向け、内閣に『検討機関』を設置する」ことで政権合意を交わし、所信表明演説でも、国の出先機関を地方に移すなど地方分権を進めた上で「最終的には地域主権型道州制を目指す」と表明していた。
 政府の道州制ビジョン懇談会(江口克彦座長)は3月の中間報告で2011年の通常国会に基本法案を提出するとしていたが、2年早めるのだ。
 新たに設置された自民党の「道州制基本法制委員会」の杉浦正健委員長は、次期衆院選の政権公約(マニフェスト)に「『道州制実現』と踏み込み」、「3年以内に基本計画策定」と盛り込むことを明らかにした。
 一方、民主党も11月13日の分権調査会で、市町村合併を進めて全国を700〜800の自治体に再編し、最終的には都道府県を廃止して小沢一郎代表の『日本改造計画』(1993年)がうたう「300程度の基礎的自治体」からなる地域主権型の国家を目指す方針を打ち出した。
 とりわけ橋下徹大阪府知事は道州制導入の最先兵だ。橋下は、関西財界の手代として大阪府廃止・関西州設置が目標だと宣言し、そこに向かって大阪府丸ごと民営化の攻撃を強行している。

 第2章 大資本の利益と繁栄図る

 「道州制導入に向けた第2次提言」は、①道州制導入による公共投資の効率化など国内全体で少なくとも約5兆8500億円の行政経費の削減が可能②地方の農政局、整備局など国の出先機関の原則廃止などで、新たに国と地方で約3万3000人の公務員削減が可能——として、道州制の効果を「試算」してみせ、アピールしている。
 日本経団連はこのように、国から道州への行政権限や税財源の大幅移譲、行政経費の節減など行財政改革を行い、「分権型国家を構築し、広域経済圏を形成」すれば、地方が活性化し、日本経済全体の成長力、国際競争力を向上し、日本の繁栄が保証されると描く。資本が直接統治する道州制の導入で帝国主義間争闘戦に勝ちぬき、生き残ろうとしているのだ。
 道州は、公務員の定数削減・賃金削減、公共投資削減でひねり出した財源で私企業向け産業政策を展開し、経済を成長させ、基礎的自治体は、住民福祉・医療・介護などを住民の相互扶助・共助、自己責任・連帯責任にまかせる、という計画だ。つまり道州制導入は大資本の利益の増進と繁栄のためにのみ行われるのだ。その結果は日本の貧困大国化だ。
 道州制導入で、1000兆円に上る累積債務を抱える国・地方の矛盾は基礎的自治体に押し付けられる。自治体の事務・事業は市場化テストなどで丸ごと民営化され、人員削減、正規職の臨時・非常勤への置き換えが進む。分限免職も発動される。200万人首切りだ。
 この200万人首切り攻撃は、日本経団連の「道州制導入に向けた第1次・第2次提言」では隠されているが、2006年4月の関西経済同友会の提言「5年後に『連邦的道州制』に移行せよ」ではより露骨に主張されている。

 第3章 ストライキで団結守ろう

 関西経済同友会の提言は「国・地方合わせて55兆円の歳出削減」「新たな政府で働く人材は『半分の人員で倍の仕事』を」と明記している。「410万人の公務員のうち自衛官・警察を除く360万人弱を関係法を制定の上、いったん(全員)解雇する。85万人を削減した上で……新たなエリートを中央・道州政府に登用する」「教育公務員など126万人の現業公務員は、国立・公立学校を私学化するなど組織を公設民営化した上で再雇用の機会を与える」
 85万人プラス126万人、計211万人の公務員が首になる。失職する85万人は国鉄分割・民営化時の人材活用センターや国鉄清算事業団と同様の「公務員支援事業団」に送られる。国鉄分割・民営化=20万人首切り攻撃をも上回る大攻撃だ。動労千葉のようにストライキで闘う以外にない。
 この提言を実行に移しているのが橋下徹・大阪府知事だ。橋下は「半分の人員で倍の仕事をする能力」のあるものだけが関西州で採用されるとうそぶき、「財政非常事態」「教育非常事態」「大阪維新」を叫んでリストラ・民営化を強行している。府職員の賃金を4—16%、393億円削減し、「だめ教員は分限免職にする」と叫び、学力テストの結果公表を決め、教育民営化を強行しようとしている。道州制の先取りとして大阪府と大阪市の水道事業統合=民営化を始める。
 橋下は「怠け者の労働者が社会を悪くした」と転倒した観点から労働者階級を攻撃する。労働者階級の怒りと団結の力を甘く見ているのだ。労働者が誇りと怒りをもって決起すれば橋下を打倒することができる。金融大恐慌で彼らの足元はぐらぐらなのだ。体制内労働運動を打倒し、階級的労働運動の力で道州制導入、自治体丸ごと民営化、200万人首切り、人事評価=査定給、労組破壊、改憲・戦争国家化を阻止しよう。
-------------------------
●日本経団連「道州制導入に向けた第2次提言」(骨子)
・2015年に道州制への移行を提案
・行政経費を年間5兆8483億円削減内訳は公共投資4兆3353億円と地方公務員人件費1兆5130億円
・国と地方で3万3000人の公務員削減
・全国を10程度に区割りし、道州を設置。北海道と沖縄は単独の「特別型道州」とし、国が時限的に財政支援
・地方の自立や活性化で格差を解消
・全国1800弱の市町村を合併で約1000に集約し、道州傘下の基礎的自治体に移行
・東京の首都機能は移転せず、経済都市として国際化し、地方に富を分配

●関西経済同友会提言「5年以内に『連邦的道州制』へ移行せよ」(骨子)
・憲法を改正し、5年以内に「連邦的道州制」へ移行
・国、地方合わせて55兆円の歳出削減
・国債・地方債の発行を停止
・改憲し参議院を「道州代表制」に改組
・議員を2万1000人削減
・公務員はいったん解雇、85万人削減
・教育公務員等126万人を民間に