2009年3月30日

資本救済の先兵と化す連合 日本型ワークシェア推進

週刊『前進』06頁(2385号1面3)(2009/03/30)

資本救済の先兵と化す連合
 日本型ワークシェア推進 政労使合意に反撃を
 春闘でベアゼロ・定昇凍結に総屈服
 日本型ワークシェア=賃下げと不安定化、税金投入、スト圧殺

 09春闘は、賃上げどころかベアゼロ・定昇凍結が続出し、大幅賃下げ春闘となった。「経営の危機」を前面に出した経営側の主張に、連合はもろ手を挙げて屈した。それどころか3月23日、連合の高木会長と日本経団連の御手洗会長、麻生首相らは「日本型ワークシェアリング」と称する政労使合意を発表したのだ(写真)。

 第1章 09春闘の惨敗

 国内自動車メーカー8社の2月の生産・輸出実績によると、国内生産は前年同月比56%減。輸出でも64%減と大きく落ち込んだ。昨年9月15日のリーマンショックから半年。1930年代以来の世界大恐慌は日本経済を直撃し、金融のみならず自動車・電機などの産業全体が未曽有の危機に陥っている。
 こういう情勢の中で連合と経団連は09春闘の期間中の1月と3月に「雇用の安定・創出」などと唱えて労使共同宣言を発表した。今回それが政労使合意にまで行き着いたのだ。ブルジョアジーは、連合を丸抱えで体制内に取り込み、必死で日本資本主義救済の政治をやっているのだ。これが政労使合意の正体だ。
 政労使合意の記者会見で高木と御手洗は口をそろえて「最大の雇用対策は景気回復」と語った。すっかり利害と使命を同じくする同志なのだ。政労使合意の狙いは、労働者の怒りを資本主義救済にゆがめ、労働者の反乱とストライキを圧殺することにある。これが連合の労働運動の一切なのだ。58単産670万人の組合員を擁する日本最大の労働組合のナショナルセンターの正体である。
 日本型ワークシェアとは、数十万人に及ぶ派遣労働者の首切りの上に正社員の大幅賃下げと不安定雇用化である。のみならず生産性向上運動を労働者に強制する。さらに各種助成金と称して巨額の税金を投入してブルジョアジーを救済する。これを労働組合の名で遂行するのだ。
 09春闘もベアゼロのみならず定期昇給凍結=事実上の大幅賃下げを労働者階級に強制する史上最悪の春闘となった。

 第2章 連合への怒り

 資本の代官となっている連合に対する労働者の怒りは大きい。連合は体裁だけの8年ぶりのベア要求を掲げた。当然、回答は一律ゼロ。逆に日立・東芝・NEC・富士通などが定昇凍結を提案し、電機連合傘下の主要15労組の半数が定昇凍結を受け入れたのだ。一時金もパナソニックや東芝などは業績連動型でガタ減りは不可避だ。自動車はベアゼロ・定昇維持で並んだが、トヨタが一時金67万円ダウンなど各社で大幅減額となった。
 電機連合は結局「雇用維持が最優先」としてベア要求を引っ込め、定昇凍結=実質賃下げをのんだ。だがその雇用も「派遣切り」「雇い止め」について議論もほとんどない。雇用維持も一蹴された。3月14日、「雇用の安定と創出に最大限の努力を行う」と唱える空証文の労使共同宣言を発表しただけだ。
 いまや日本資本主義は、労働者をまともに働かせて賃金を払うこともできない。金融も産業も壊滅状態で資本主義社会は土台から崩れる危機に陥っている。
 資本主義そのものが社会のくびきと化しているのだ。「3月危機」の次は「5月危機」が来ると言われている。年度末決算が発表される時期だ。日本銀行やFRB(米連邦準備制度理事会)は数十兆円単位で国債や社債を買い取る禁じ手を乱発している。数百万人の首切りが始まっている。労働者の怒りは満ちあふれ、労働者階級の存在そのものが巨大な情勢を生み出しているのだ。
 資本主義はもう終わりなのだ。資本主義の存在そのものが問題なのだ。資本主義と労働者は共存できない。世界大恐慌をプロレタリア革命に転化することが人類史の課題なのだ。
 これを「雇用を守れ」を旗印に資本主義救済にねじ曲げているのが連合なのだ。考えてみれば89年結成から20年。これほど連合が社会的に注目され、経団連や政府から「尊重」され「対等」に扱われるのは初めてだ。いつ何時、労働者の大反乱が始まってもおかしくない情勢の中で、連合は資本主義救済を叫び、階級支配の矢面に立ち、日本帝国主義の支柱になっているのだ。連合こそが労働者の反乱を抑える最悪の存在なのだ。逆に言えば連合労働運動を打倒することが日本資本主義打倒のプロレタリア革命の展望を切り開く。
 労働組合をどうするのかが最大の問題なのだ。何より4者4団体派が国鉄1047名闘争圧殺の最悪の先兵に堕し、動労千葉攻撃の急先鋒になっている。連合や日本共産党、4者4団体派などの体制内労働運動との激突こそが資本や当局との力関係を変えるのだ。これが労働者階級が社会の真の主人公として階級的パワーを発揮し、命脈が尽きた資本主義を打倒して、新たな社会を建設する道なのだ。
 米国では、オバマ政権のもとで医療や清掃労働者の組合であるSEIU(サービス従業員国際労組)が非正規の低賃金労働者を組織して急成長している。約200万人の組合員を擁する。だがSEIUは資本とまったく闘わない。非正規化や首切りを前提として、企業と共同で職業訓練や転職をあっせんする運動をやっているのだ。

 第3章 オバマ支える米の労働組合

 昨秋の大統領選でSEIUは約80億円の資金を投下し、3千人の専従スタッフ、10万人のボランティアを投入し、オバマを当選させた。スターン委員長は一時、労働長官候補に名前が挙がった。
 オバマ政権を支えているのはブルジョアジーのみならずAFL—CIO(米労働総同盟・産別会議)やSEIUなどの体制内労働運動なのだ。この連中はオバマ政権を支持することが「労働者の雇用を確保する」労働運動だと主張している。
 だからイラク反戦6周年の3月20日でも、SEIUなどがかかわるピース&ジャスティス(イラク開戦時には数十万人のデモを組織)は「未曽有の経済危機の中でイラク反戦は取り組まない」としてデモを中止した。
 世界の労働者の直面する課題は同じだ。「自分たちの労働組合を甦らせ、労働運動の現状を変革することだ。それこそが今、最先端の変革である」(『新版 甦る労働組合』)
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 ■製造業大手の09春闘の状況
企業名 ベア 定昇 一時金
トヨタ自動車 0(1000) 実施 186万円(253万円)
日産自動車  0(1000) 実施 4.2カ月(6.1カ月)
ホ ン ダ  0(800) 実施 5カ月(6.6カ月)
三菱自動車 要求せず 実施 2.4カ月(4カ月)
マ ツ ダ  0(800) 実施 4.06カ月(5.8カ月)
富士重工業  0(0)  実施 4.2カ月(5カ月+5万)
日立製作所  0(1000) 凍結 4.2カ月(4.91カ月)
パナソニック 0(1000) 実施 業績連動型
東   芝  0(1000) 凍結 業績連動型
N E C  0(1000) 凍結 業績連動型
富 士 通  0(1000) 凍結 業績連動型
三 菱 電 機 0(1000) 凍結 5.06カ月(5.83カ月)
シ ャ ー プ 0(1000) 凍結 4.1カ月(5.26カ月)
※カッコ内は昨年春闘実績