2009年7月13日

JPEX出向「内命延期」 恐慌で「小包事業」破綻も

週刊『前進』06頁(2399号2面3)(2009/07/13)

JPEX出向「内命延期」
 現場の大半が出向拒否
 民営化の正体露呈 恐慌で「小包事業」破綻も

 7月1日に予定されていたJPEX(小包部門の子会社。日本郵便と日通の共同出資)への出向者内命が全国で「延期」になった。郵政民営化の「戦略事業」と銘打った鳴り物入りのJPEX計画が、入り口で破綻をさらけ出した。
 ある地方ではJPEX計画の中核をなすSD(セールスドライバー)要員が6月末時点で150人も不足していることが分かった。今年度のSD要員計画は48都道府県全体で6600人なので、要員確保にほぼ完全に失敗したのだ。「要員不足には組合が責任を持つ」と会社に忠誠を誓ったJP労組中央の度し難い裏切りにもかかわらず、現場労働者はJPEX計画の労働地獄と首切り攻撃を拒否したのだ。
 5月に行われた当局の「意向調査」に対して、闘う全逓労働者は「JPEX子会社化絶対反対」「現在の職場で引き続き働く意思表示を」と全国で訴えた。この呼びかけが圧倒的な現場労働者の心をとらえたのである。
 07年郵政民営化は、まずもって全逓労働運動の解体攻撃だった。そして労働者人民が身を削って働いた350兆円もの預金資産を、一握りの資本家が簒奪(さんだつ)する国家的略奪だった。その一端は「かんぽの宿」問題等で明るみに出た。
 また郵便事業本体(年間売上2兆円)は、これも人民の財産である全国規模のインフラを私的資本が簒奪し、文字どおりの市場原理で現場労働者からの搾取を極限化する攻撃だった。「半分の賃金で2倍働かせる」——これが民営化なのだ。それゆえ、労働組合の先兵化と現場労働者の分断が民営化の成否を決める核心問題だった。しかし現場労働者の抵抗で、民営化それ自体の根本的な破綻が、JPEX計画の破綻として表面化してきたのである。
 小包物流は、ヤマトと佐川の2社で7割を占める寡占市場だ。現状で日通・郵便連合が13%。折しも大恐慌の中でJPEX計画が市場争奪戦をエスカレートさせ、事業統合がもたつく日通・郵政連合から大口の荷主が逃げ出す事態も続出した。業界では早くも「JPEXは失敗」が常識だ。
 物流資本の利益(資本の取り分)は「1人の労働者が一日何個運ぶか」の「働きの度合い」で決まる。「民営化で現場の労働密度は3倍になった」と多くの現場労働者は語る。そして年収で正規職の3分の1に満たない非正規職が職場の半数を超えた。JP労組中央の裏切りに支えられた劇的な賃下げと首切りの“自由化”だ。それでもまだ「コスト削減にゴールはない」(日経ビジネス)と言われている。
 これが民営化なのだ。JPEX計画は「9割の労働者を非正規職に置き換える」攻撃でもある。その成否を決める労働者分断政策も、組合中央の全面屈服で「人事評価制度」と「成果主義賃金」の全面的導入として打ち出された。
 今回の内命挫折で、現場の怒りは充満していることがあらためて浮き彫りになった。JPEXの破綻は、郵政民営化そのものの破綻だ。腐ったJP労組中央を打倒し、労働組合をよみがえらせる展望がいままさに広がっているのである。