2009年7月13日

オバマ翼賛かオバマ打倒か 青年・学生を先頭に広島・長崎へ

週刊『前進』06頁(2399号5面1)(2009/07/13)

オバマ翼賛かオバマ打倒か 労働運動の力で核戦争阻め
 青年・学生を先頭に広島・長崎へ

 8・6広島—8・9長崎に全国の職場生産点から総結集しよう。情勢は昨年と一変している。最大の焦点は何か? 第2次世界大戦の帰結であるヒロシマ・ナガサキは、帝国主義の核と戦争を最も鋭く糾弾する存在だ。このヒロシマ・ナガサキを北朝鮮侵略戦争に動員しようというのだ。それがオバマのプラハ演説であり、日本共産党や連合、秋葉・広島市長に至るオバマ賛美運動だ。それは「ヒロシマ・ナガサキをくり返さないためには日本も核武装を」「ヒロシマ・ナガサキをくり返さないために北朝鮮を攻撃せよ」と主張する前航空幕僚長・田母神俊雄と変わらない。ヒロシマ・ナガサキをめぐる攻防点、すなわち〈オバマ翼賛かオバマ打倒か〉〈北朝鮮侵略戦争に賛成か反対か〉——それは資本主義の打倒か救済かをめぐる党派闘争そのものだ。

 急迫する北朝鮮侵略戦争

 世界大恐慌の爆発の中で崩壊的危機に立つ帝国主義の体内から、激しい戦争への衝動が噴出している。大恐慌と戦争・核戦争は一体なのだ。
 北朝鮮侵略戦争情勢が超緊迫している。北朝鮮スターリン主義の体制延命をかけた核実験の強行を格好の餌食にして、日米帝国主義は戦争策動を一気に強め、臨戦態勢に入っている。
 国連安保理の制裁決議が出るや否やオバマ政権は、北朝鮮企業2社の資産を凍結し、直ちに米軍が北朝鮮船の追跡を行っている。沖縄に原潜や戦闘機、偵察機が集結し、臨戦態勢に入っている。
 麻生政権は、ラクイラ・サミットで北朝鮮の国連安保理決議違反を訴え、各国に制裁措置の確実な実施を求める、などとわめいている。また国際原子力機関(IAEA)の次期事務局長ポストに初めて日本人を押し込み、北朝鮮情勢の主導権を握ろうと躍起だ。
 防衛省は、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)に加え、新型迎撃ミサイルの導入を狙う。地上配備型の「高高度広域防衛システム」(THAAD=サード)と呼ばれ、防御範囲がPAC3より10倍程度広い。7月6日には海賊対処法のもとで第2次ソマリア派遣部隊を横須賀、舞鶴から派兵した。
 麻生は6月7日、「(北朝鮮に対して)われわれは戦うべき時は戦わなければならない。その覚悟だけは持たなければ、国の安全なんか守れるはずがない」と街頭演説。世界大恐慌に直撃された底なしの体制危機、政治危機を戦争突入で打開しようとしている。さらに自民党は、相手国のミサイル基地などを日本から攻撃する「敵基地攻撃能力」の保有を求める提言を出した。
 ブッシュ以上に強硬な政策で戦争の危機を生み出しているのがオバマ政権だ。オバマは4月、プラハで演説し、新たな核政策を発表した。「核兵器のない世界を訴えた」なるデマ宣伝を絶対に粉砕しなければならない。

 プラハ演説が戦争の起点だ

 オバマは、帝国主義の圧倒的な核独占と軍事力と比較して無力に等しい北朝鮮やイランの核開発を”世界最大の脅威”であるかのように扇動。そして米帝の核政策を「やむを得ざる自衛措置」であるかのように描いて、世界の労働者階級に「承認」を迫っているのだ。
 プラハ演説の後半でオバマは露骨に語っている。「核兵器が存在する限り、わが国は、いかなる敵であろうとこれに対する抑止を行い、同盟諸国に対する防衛を保障するために、安全、確実で効果的な核兵器備蓄を維持する」
 「核兵器を保持し、実際にそれを使う」と鮮明に宣言しているのだ。米帝は先制核攻撃戦略を完全に堅持している。その上でプラハ演説は、北朝鮮とイランを名指しで「行動する」と言っている。それは”核開発阻止”を口実とした武力行使を含むことは明白だ。
 実際に6月の米韓首脳会談でオバマは、米国が「核の傘」を提供して米本土並みに韓国を防衛すると発表し、北朝鮮の核開発に対しては核で対抗することを断言した。
 プラハ演説の提唱する包括的戦略とは核拡散防止条約(NPT)体制の強化だ。NPTが米ロ英仏中の核独占体制であることは世界の常識だ。オバマは、世界の過半数の核独占は維持した上で世界の核を取り締まるために「断固として行動する」と言っているのだ。
 プラハ演説こそは「核廃絶」演説の宣伝とはまったく逆に北朝鮮やイランへの戦争の起点になっている。「大量破壊兵器の脅威」「民主主義の擁護」を旗印にイラクやアフガニスタンで侵略戦争を行ったブッシュと同じ論理だ。
 許し難いことにオバマは、「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」と語っている。これは広島・長崎への原爆投下を過ちと認めたものでは断じてない。むしろ「核兵器を使用したことがある唯一の帝国主義」であることを肯定的・積極的に誇示しているのだ。
 「唯一の核使用国」として北朝鮮やイランのような「ならず者国家」や「テロリスト」の核保有を阻止する戦争、場合によっては核攻撃もするという宣言なのだ。
 64年前、広島・長崎に投下されたわずか2発の原子爆弾は一瞬にして二つの都市を壊滅させ、数十万人の生命を奪った。原爆の衝撃波・熱線・放射能は地上の地獄をもたらした。現在も約30万人の被爆者がその影響と闘っている。
 広島・長崎の未曽有の惨劇に対し、米政府は一度として過ちを認めたことはない。米帝は一貫して原爆使用が米帝の「勝利」をもたらしたと正当化する。(日本政府も「国民は戦争の犠牲を等しく受忍すべき」との立場で被爆者への国家補償を拒否している)オバマは原爆投下を居直るだけでなく、今度は広島・長崎への原爆投下の歴史を新たな核戦争正当化の根拠にしようというのだ。これほど被爆者と世界の労働者を愚弄(ぐろう)する話があるか!

 犯罪的な役割果たす日共

 一方での田母神反革命の突出、他方での日本共産党を先頭とするオバマ絶賛運動——この画歴史的なヒロシマ・ナガサキつぶしの攻撃は同時に、反戦反核闘争の最大実体を形成してきた日教組・自治労を始めとする4大産別労組の解体攻撃、道州制攻撃そのものだ。
 日本共産党のオバマ賛美はきわめて犯罪的だ。圧倒的な核独占を背景にイラク・アフガニスタンから北朝鮮・イランへと侵略戦争を拡大する米国を免罪しているのだ。
 オバマのやっていることは何だ! 現実にオバマ政権は新たな核開発を進め、核使用を準備している。全世界に核基地、核搭載の原潜や空母を展開している。世界中で侵略戦争を継続している。アフガニスタンで04年のイラクのファルージャ掃討作戦以来の大規模作戦を展開しているのだ。
 オバマ政権は北朝鮮のミサイル発射を非難する一方、自らは6月29日、核兵器用の大陸間弾道弾(ICBM)の発射実験を行った。日共の志位委員長はこれらの事実を百も承知で「平和のリーダー」などとオバマを賛美し追従しているのだ。
 連合の「核兵器廃絶1000万人署名」もNPTを全面的に美化するものだ。米国の核独占は問題にもせず「北朝鮮の脅威」を一方的に扇動する排外主義運動だ。
 核武装論者の前空幕長・田母神が8月6日に広島に乗り込み「ヒロシマの平和を疑う!」と題して講演しようとしている。田母神は「核廃絶は世界の安定にはマイナス」「ヒロシマ・ナガサキをくり返さないためには日本も核武装して北朝鮮を攻撃せよ」という扇動をヒロシマで展開しようというのだ。
 特に指摘したいのは、極右・田母神のファシスト的主張と、オバマやそれを賛美する日共や連合の論理にはそれほど差はないということだ。帝国主義戦争の帰結である被爆の体験から生まれた「ヒロシマ・ナガサキをくり返すな」のスローガンが、帝国主義による新たな侵略戦争・核戦争を扇動する論理に使われようとしているのだ。
 次元を画するヒロシマ・ナガサキつぶし、労働組合をめぐる鋭角的な分岐と激突が始まっている。核心問題は、戦争を止める力は労働者階級にあるということだ。兵士も、武器も、後方支援も労働者の存在なしに戦争は1秒も継続できない。生産と社会の実体である労働者階級にこそ戦争を止める力がある。これは労働運動の路線をめぐ激突なのだ。

 労働運動の主流派へ飛躍

 帝国主義とそれに屈した体制内派は、あらゆるペテンで愛国主義や排外主義、祖国防衛主義で労働者階級を身動きできなくしようとしている。日共や連合のオバマ・NPT賛美運動は、日教組・自治労を始めとする4大産別労組解体攻撃への屈服・加担そのものだ。戦後的な反戦意識、階級意識を根絶やしにすることで道州制導入への地ならしをし、北朝鮮侵略戦争に労働者階級を丸ごと動員する先兵の役割を果たしているのだ。
 この現状を鮮烈に打開する労働運動を職場生産点からよみがえらせることが決定的だ。今夏8・6広島—8・9長崎反戦反核闘争は、既成原水禁運動、連合・全労連の支配を決定的に打ち破り、労働運動の主流派に躍り出る決定的な跳躍台だ。麻生の来広と祈念式典参加を許すな! 広島・長崎闘争で麻生をノックダウンしよう。核と戦争を止める力はオバマのイニシアチブではなく、労働者階級の国際的団結にこそある。
 11月労働者集会1万人結集の展望をかけ8月広島・長崎闘争の大高揚をかちとろう!