2009年8月31日

〈焦点〉 破綻する“オバマの戦争” アフガン・イラク新情勢

週刊『前進』06頁(2405号5面2)(2009/08/31)

〈焦点〉 破綻する“オバマの戦争”
 アフガン・イラク新情勢

 米帝オバマの新戦略のもとで、アフガニスタン・イラク侵略戦争体制と軍事支配は、今日、総崩壊的危機に直面している。
 とりわけアフガニスタンでは、この数年間にタリバンが南部諸州を基本的に制圧した。タリバンは現在、カブール攻略を射程に入れて、カブールに隣接した中部のマイダンワルダック州に進出し、その大半を掌握して首都包囲体制を構築しつつある。カブール市内でもタリバンは、米軍やNATO指揮下の国際治安支援部隊(ISAF)に対する激しい攻撃を仕掛けている。NATOの統計によると、09年1月から5月までのタリバンによる攻撃件数は、前年同時期に比べて59%も増加した。
 6月11日、中央アジアを管轄する米中央軍のデービッド・ペトレアス司令官は、「アフガニスタンでの先週の治安情勢は、過去最悪レベルに達した」と述べた。米軍の増派後も「数カ月は厳しい状況が続く」との見解を示したのだ。
 首都陥落の危機に恐怖した米帝は、起死回生の一打として、6、7月に、タリバンの拠点地域に対して、増派された米・EU軍の総力を投じた全面的な掃討作戦を組織した。
 6月19日からは、英軍がアフガニスタン駐留軍9000人の3分の1を投入した掃討作戦を南部ヘルマンド州で展開した。7月2日からは、米海兵隊4000人を投入して、同州で大規模掃討作戦「剣の一撃作戦」を展開した。これは海兵隊による作戦の規模としてはベトナム戦争以来、最大規模のものであった。7月中旬以降は、ドイツ軍3000人がアフガニスタン北部で、ドイツ軍としては戦後最大規模の掃討作戦を展開した。
 米帝はこれらの作戦によって、タリバンの戦闘力と拠点を破壊して力関係を逆転して、8月のアフガニスタン大統領・地方議員選挙をのりきり、軍事支配を再確立しようとした。だが、結果は惨めなものであった。タリバンの激しい反撃で、ISAFは重大な打撃をこうむった。7月1カ月だけで76人(米軍43人)も戦死者を出したのだ。この戦死者数は、01年のアフガニスタン侵略戦争開始以来最悪だ。
 しかもタリバンは、以後も攻勢を弱めず、掃討作戦で米軍の虐殺が行われた地域の住民を結集し、選挙期間中もカブールおよび全土で攻撃を強化した。この結果、09年のISAFのアフガニスタンでの戦死者は、同年のイラクでの米・英軍などの戦死者(114人)をはるかに上回る295人(8月25日現在)となった。2万1000人の米軍を増派し、NATO諸国からも増派させて危機をのりきろうとするオバマの新戦略は完全に破産したのだ。
 イラクにおいても、米帝の軍事支配体制が急激に崩壊し始めている。米軍が組織したスンニ派武装組織・覚醒評議会をシーア派政府が解体するのに伴って、レジスタンス勢力の再生・強化と、アルカイダの復活が進んでいる。
 アフガニスタン・イラク両国におけるオバマ政権の新戦略の破産は、世界大恐慌の本格化の中で、米帝の中東支配・世界支配の危機と歴史的没落を一挙に促進するであろう。