2009年8月31日

〈焦点〉 米金融システムに「新たな爆弾」 大恐慌はいよいよ激化へ

週刊『前進』06頁(2405号5面3)(2009/08/31)

〈焦点〉 米金融システムに「新たな爆弾」
 大恐慌はいよいよ激化へ

 世界大恐慌は、1929年〜30年代を超える後のない大恐慌として進行し、激化している。日米の政府やブルジョアジーは、大恐慌下の異常とも言える株価の上昇や、「会計のマジック」=粉飾決算に支えられた大手金融機関の「黒字化」などを理由に、「底入れの兆し」「最悪期は脱した」などと宣伝している。だが金融も実体経済も、天文学的な規模の財政投入というカンフル注射によってやっと延命しているに過ぎない。
 そして次の金融的危機の爆発や、雇用、設備投資、個人消費などのさらなる悪化で不可避となる「二番底」「三番底」の到来に、戦々恐々としているのが実態だ。
 まず、そもそもシティグループ、AIG、住宅金融2公社などの巨大金融機関は、依然、政府管理下のきわめて危機的な状態にあり、公的資金返済のメドも立っていない。また住宅ローンの証券化バブルの崩壊で生まれた金融機関の膨大な不良資産も解消されてはいない。「レベル3」と呼ばれる値段も付かない不良資産だけでも、大手18社の合計額で6575億㌦に達するのである(3月末現在)。
 その上でゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースなど大手商業銀行・投資銀行は、粉飾決算でストレステスト(健全性審査)をのりきり、相次いで増資や預金のかき集めに走っているが、企業や家計は逆に、貸し渋りと信用収縮に直撃されているのだ。
 この間の株価の急上昇なるものも、新たな危機を準備するものでしかない。米帝が「強いドル政策」を打ち出した95年以降、世界の金融資産は急膨張した。95年の63・9兆㌦が、ピークの07年10月には実に187・2兆㌦だ。これがリーマン・ショックをはさんだ株価暴落で20兆㌦減少し、08年11月には165・8兆㌦となった。だが95年以降に増加した約100兆㌦は消えたのではない。破綻したリーマンを含む旧5大投資銀行などがつくり出したこの膨大なバブル資産が、またぞろ投資先を求めて、日米の株価を押し上げているのだ。しかし、これがまたどこかで暴落を不可避とし、大恐慌を新たに激化させるのである。
 さらに重要なことは、米帝の金融システム自身が「3大リスク」と言われる「新たな爆弾」「新たなサブプライム問題」を抱えていることだ。その第一は、ニューヨークなどに林立する巨大オフィスビルが象徴する商業用不動産市場の悪化だ。これが当面、最大の「爆弾」だ。第二は、プライムローンにも拡大している住宅ローンの債務不履行の急増である。第三は、中小金融機関の経営悪化である。すでに09年1月以降、8月中旬までに全米で77行が破綻したが、今後、「数百の地域銀行が破綻する」と言われている。
 まさに大恐慌情勢は「底打ち」「回復の兆し」などの大宣伝とは正反対の現実にある。29年大恐慌の場合も、30年には早くも「回復」などと言われた。しかしその後、危機と崩落を断続的に深め、33年3月の「最低点」へと転落していったのだ。世界大恐慌がもたらす戦争・大失業の攻撃との闘いは、いよいよこれからだ。11月1万人決起で立ち向かい、大恐慌を世界革命へ転化しよう。