2009年11月12日

JR西日本の尼崎事故「報告書」改ざん工作 民営化の正体

週刊『前進』08頁(2414号3面3)(2009/11/12)

JR西日本の尼崎事故「報告書」改ざん工作
 民営化の正体がこれだ
 体制内の労組幹部も共犯者

 JR西日本の幹部が、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の委員に飲食接待を繰り返し、鉄道事故報告書の改ざんをたくらんだ事件は、その詳細が次々と明るみに出ている。107人の乗員・乗客の命を一瞬にして奪いながら、事故の責任をひたすら現場労働者に押しつけ、卑劣な生き残りを図ったJR西日本の経営幹部の姿勢は、国鉄分割・民営化の本質を示して余りある。

 トップが指示組織ぐるみで

 山崎正夫前社長らJR西日本幹部は、事故調委員と極秘裏に接触し、飲食接待を繰り返しただけではない。国鉄OBや大学教授ら4人に、事故調が開いた意見聴取会の公述人に応募しJR西日本の主張を代弁するよう依頼していた事実が発覚した。しかもJR西日本は、国鉄OBの2人に対し、謝礼として10万円を渡していた。まさに、カネの力で尼崎事故の真相を闇に葬り去ろうとしたのである。
 また、JR西日本から飲食接待を受けていた事故調委員は、4人に及ぶことも明らかになった。事故調鉄道部会の委員は計6人、そのうち4人もがJR西日本と極秘裏に接触していたということだ。事故調の報告書そのものが、まったく信用できない代物なのだ。
 事故調報告を改ざんする策動は、会社の組織ぐるみで行われた。事故調委員への飲食接待には、山崎だけでなく元社長の垣内剛も関与、また土屋隆一郎副社長は部下に事故調委員との接触を指示していた。
 JR西日本は10月23日、社長辞任後も取締役にとどまっていた山崎と土屋副社長を辞任させた。だが、問題は経営幹部の辞任で済まされるようなものではない。しかも、この2人は嘱託社員として今後も「被害者対応」に当たるという。分割・民営化以来、JR西日本に君臨してきた井手正敬や、南谷昌二郎ら歴代社長の責任も伏されたままだ。
 107人の乗員・乗客を殺しておきながら、それへの一片の反省もなく、事故の真相隠しに奔走したJR西日本幹部の姿は醜悪きわまる。そうした連中が、運転士を除く「106人の犠牲者」への黙とう・献花を現場労働者に強い、「会社の発展は自らの幸せ」などという経営理念の唱和を強制していること自体、怒りに堪えないことだ。
 まさにこれこそが国鉄分割・民営化の本質だ。私鉄との競争のために無謀なダイヤを設定し、東西線の開通に併せて造った半径304㍍の急カーブにATS(自動列車停止装置)も設置せず、現場労働者を日勤教育の恫喝で締め上げてきたことが、尼崎事故を引き起こした。そのいずれもが、国鉄分割・民営化によってもたらされたものだ。
 JR西日本幹部は、尼崎事故という形であらわになった国鉄分割・民営化の破産を塗り隠し、JR体制を何としても護持するために、事故調報告の改ざん工作に総力を挙げたのだ。
 尼崎事故被害者に対する「おわびの会」で山崎は、「(事故調の)報告書の内容によっては、弊社の進むべき方向性が変わるかもしれないと危機感を感じていた」と吐露した。05年4月の尼崎事故は、総資本が全力でまき散らした「国鉄改革成功」神話を最後的に打ち砕いた。JR資本が恐怖したのは、民営化に対する労働者階級の怒りが、尼崎事故をきっかけに奔流となって噴出することだった。それは、JR総連カクマルを極少数勢力に追い込み、革同支配下の国労西日本本部の屈服を取り付けて、資本の専制支配をつくり出してきたJR西日本の労務支配体制が一挙に崩壊することをも意味していた。
 そのことに恐怖したからこそ、JR西日本は事故調報告改ざんに躍起となったのだ。
 このJR資本を救ったのが体制内労働運動だ。JR連合・西労組やJR総連・西労はもとより、革同支配下の国労西日本本部も資本を擁護し救済する側に回った。資本の責任を現場から追及する闘いを圧殺し、労使安全会議に参加して労使協調にのめり込んだ国労西日本本部もまた、事故の真相隠しの共犯者だ。

 闘いなくして安全もなし!

 JR西日本は、学者らによる「コンプライアンス(法令順守)特別委員会」なるものを設置し、事実関係の調査を進めるとうそぶいている。だがJR資本が「法令順守」を口にすること自体がとんでもない欺瞞(ぎまん)だ。
 JR東日本の信濃川違法取水にも現れているように、JR資本は利潤のためなら法など平然と無視する。それは、JR体制が労組解体を存立基盤としてきたからだ。憲法も労働組合法も踏みにじって国労や動労千葉−動労総連合への不当労働行為を繰り返してきたのがJR体制だ。
 JR資本を法に従わせれば安全は守られるのか。断じて否だ。安全は労働組合の闘いによって資本に強制する以外にない。動労千葉は反合・運転保安闘争路線のもとにその闘いを貫いてきた。この闘いはJR体制を揺るがしている。
 11・1労働者集会は、動労千葉を始めとする3労組の呼びかけのもと、「1047名解雇撤回」を軸に圧倒的に打ち抜かれた。新自由主義の攻撃と対決し、世界大恐慌を世界革命に転化する労働者階級の国際的な団結を打ち固めた。その力を基礎に、職場からJR体制への総反乱を巻き起こし、JR体制を打倒する時が来たのである。
 資本に屈しその手先となった国労西日本本部=日本共産党スターリン主義を始め4者4団体派を打倒して、1047名解雇撤回、JR体制打倒へさらに闘いぬこう。