2009年11月30日

〈焦点〉 深まるデフレスパイラル

週刊『前進』06頁(2418号5面3)(2009/11/30)

〈焦点〉 賃下げと失業が一層激化
 深まるデフレスパイラル

 政府は20日、11月の月例経済報告で日本経済について、「緩やかなデフレ状況にある」と認定した。
 デフレは一般的には2年以上にわたって物価が下がり続ける状態とされるが、明確な定義はない。日本経済はこの10年間、大きくはデフレが続いてきた。昨年、原油の高騰で一時的に物価が上がったが、昨秋から世界大恐慌に本格的に突入し、デフレは一層深刻化した。9月には消費者物価指数が前年同月比マイナス2・3%と急激な落ち込みを記録した。消費が冷え込んで、つくってもモノが売れず、安売り競争が激化している。企業倒産や操業停止、工場閉鎖が相次ぎ、日本経済は「危機を脱した」どころか、恐慌は日増しに深刻化している。そもそもデフレとかデフレスパイラルといわれる物価の持続的低落は、大恐慌・大不況の典型的な現れなのだ。
 デフレの最大の原因は、賃下げと首切り、非正規雇用化にある。1980年代以降、帝国主義の歴史的行き詰まりの中で、米欧日の帝国主義各国は、グローバル化した利潤獲得競争に勝ち抜くために(勝たなければ淘汰される)、労働者階級に対する決定的な攻撃と金融バブルを強めてきた。それが新自由主義の攻撃だ。「人件費の徹底的削減」を至上命令にして正規職のリストラ、非正規職化、賃金半減、労働強化、労組破壊を激しく続けてきた。その結果、労働者階級は果てしない賃下げ競争に巻き込まれ、職場の安全は破壊され、多くの労働者が犠牲にされてきた。2千万人が非正規職化され年収200万円以下の「ワーキングプア」が膨大に生み出された。
 現在、完全失業者の数は12カ月連続して増加し、昨年末より90万人増の363万人に達している。統計上の完全失業率は5・3%(9月)だが、雇用調整助成金の対象者や求職活動をしていない失業者を含めると、実際の失業率は15・6%ともいわれる。
 こうした中、企業はますます国内生産拠点の廃止や人員削減の攻撃を強めている。労働者階級をますます犠牲にして資本家だけが生き延びようとしている。
 だが、そんなやり方がいつまでも通用するわけがない。価格競争にあえぐ資本が労働者の賃金や雇用の削減を強めれば、家計を圧迫して消費はさらに落ち込み、大恐慌を深刻化させるだけだ。
 「資本主義はもう命脈が尽きた」という点に情勢の核心はある。労働者階級を「賃金奴隷」としてすら、まともに食わせることもできなくなった資本主義に、どのような展望や未来があろうか。何よりも労働者階級が黙ってはいない。連合など体制内労働運動の指導部が資本家と結託して闘いを抑えつけようとしても、労働者階級は必ず怒りを爆発させ、嵐のような闘いに立ち上がる。
 「日本はデフレが構造化しており、簡単に解消しない」と開き直るエコノミストもいるが、実際、現在の大恐慌は目先の財政政策や金融政策で解決するような問題ではない。プロレタリア革命による以外に、どのような解決もない。一切のかぎを握っているのは労働者階級である。階級的労働運動が勝利する時代がついに到来したのだ。