2009年11月30日

〈焦点〉 保護主義の連鎖止まらず

週刊『前進』06頁(2418号5面2)(2009/11/30)

〈焦点〉 保護主義の連鎖止まらず
 「超大国アメリカ」先頭に

 世界大恐慌の過程に本格的に突入した08年10月以降、52カ国・地域で合計290件の保護貿易措置が導入されたことが分かった。多い順にインド42件、アメリカ35件を始め、アルゼンチン27件、中国26件、ロシア25件などが続く。
 特に重大なのは「超大国」アメリカの保護措置だ。その筆頭が、8000億㌦(約80兆円)を超える予算規模で成立した米景気対策法に、米国製工業製品の購入を義務付ける「バイ・アメリカン」条項が盛り込まれたことだ。対策事業で使われる資材の調達のみならず、外国企業はことごとく事業の入札から締め出された。
 さらに輸入品に対する直接の貿易規制も大幅に増やした。今年の米国の反ダンピング・相殺関税賦課は14件で昨年の2倍。「自由貿易」を世界中に強要してきたアメリカ帝国主義が、いまや30年代ばりの保護主義に走っている。
 こうして世界的な通商戦争の引き金が引かれた。米国での事業入札から除外されたカナダは、12の都市が米国製品の購入を禁じる条例を可決。オーストラリア、ブラジル、カナダ、EU、日本及びメキシコは、米国の保護主義への対抗措置の協議を始めた。
 この中で、世界の帝国主義者が「世界の工場」となった中国スターリン主義との危機的な駆け引きを始めた。米国の中国企業に対する今年の貿易規制件数は全体の86%を占めた。05年の60%から大幅な増加だ。9月には中国製タイヤに対する緊急輸入制限の発動を決定、18億㌦に上る中国製輸入タイヤに35%の上乗せ関税を課した。これに対し中国商務省は、米国製の輸入自動車と鶏肉製品の反ダンピング調査の実施を発表した。また欧州連合(EU)も、固定材の中国からの輸入に対する、平均80%ものアンチダンピング税を課す措置を取った。
 この事態は帝国主義者にとって真に危機的である。00年から8年間で、中国の輸出入総額は520%も増大した。特に05年以降の伸びは凄まじく、貿易拡大率は年率25%を超えた。08年の輸出入総額2兆5千億㌦は日本の2倍に近く、アメリカにも並ぶ勢いだ。これが世界大恐慌で、一転して巨額のマイナス(前年比20%以上)に転じたのだ。中国は米国債の世界最大の保有国でもある。
 保護主義の一環として為替切り下げ競争も始まっている。保護主義は相互に連鎖し、報復合戦に発展する。大恐慌が深まる中での世界経済の劇的な収縮と分裂・ブロック化は、世界の帝国主義国・大国の「勢力の不均衡を除去するのに、戦争以外にどのような手段があるだろうか?」(レーニン)という事態に間違いなく突入する。米国の完全失業率は10%を突破、オバマの支持率はあっという間に50%を切った。もう後がないのだ。
 この事態の中で、オバマ政権は保険最大手AIGの経営最高責任者に対する17億円の報酬支払を承認した。大恐慌下で食糧配給の列に並ぶ労働者たちは、巨額の税金で大資本を救済するオバマ政権に怒りを爆発させようとしている。アフガニスタンへの泥沼の米軍大増派も不可避だ。労働者の国際的団結で、大恐慌と戦争を世界革命に転化するために闘おう!