2009年12月 7日

戸塚秀夫「試論 動力車労働組合運動の軌跡について」を弾劾する〈下〉

週刊『前進』08頁(2419号6面1)(2009/12/07)

戸塚秀夫「試論 動力車労働組合運動の軌跡について」を弾劾する〈下〉
 「働こう運動」から「他労組解体」の白色暴力まで擁護する最悪の暴論
 大迫達志

 JR検修・構内業務全面外注化阻止の大決戦が始まった。国鉄1047名解雇撤回闘争と一体の国鉄分割・民営化をめぐる決着をかけた決戦だ。この重大時に、国鉄分割・民営化の先兵となった動労本部カクマル松崎明の所業を“旧来の労働運動からの華麗なる変身”“JR労働者の相当部分を組織する、JR総連の中心を占める新しいユニオニズム”などと絶賛する戸塚秀夫・東大名誉教授らの反階級的行為は断じて許されない。彼らはJR総連カクマル松崎明に全面協力する国鉄決戦の最悪の破壊者だ。前号に続き、今号ではファシスト労働運動路線への明示の転換点となった82〜83年動労カクマル「働こう運動」批判を中心に追撃する。

 国鉄分割・民営化とは何かカクマル松崎の反革命所業

 日帝・中曽根政権は、1987年4月1日をもって国鉄分割・民営化を強行し、JR7社の新事業体をスタートさせた。国鉄分割・民営化は、日本帝国主義の延命をかけた中曽根「戦後政治の総決算」攻撃の最大の柱だった。成田空港2期工事着工をもって農地死守・軍事空港建設阻止を闘い抜く反戦の砦=三里塚闘争を国家暴力でたたきつぶす。国鉄における戦闘的労働運動を壊滅させて総評を解散に追い込み、軍事大国化・改憲に突き進む。日本労働者階級に対してかけられたこの戦後最大の階級決戦において、動労カクマル・松崎明は中曽根に全面的に協力し、国労や動労千葉を背後から襲撃してクビを切り、ファシスト労働運動の道を突き進んだ。
 この悪行が闇に葬られることなど断じてない。動労千葉が渾身(こんしん)のストライキで国鉄1047名解雇撤回闘争を切り開き、外注化・組織破壊を阻止し、JR・カクマル結託体制を破綻に追い込んだことでカクマル松崎の大罪は暴かれ、「資本の犬」「裏切り者」として全労働者から断罪され続けているのだ。

 首切り3本柱にも率先協力

 国鉄分割・民営化の先兵=松崎明の反階級的大罪の第一は、何より20万人首切りのファシスト突撃隊となり、白色暴力でカクマル分子以外の組合員を解雇・退職に追い込んだことだ。
 カクマルは白色テロルで動労組織全体を抑えつけ、現場労働者の抵抗を押しつぶして、当局がうち出した大合理化計画を丸のみした。そうして意図的につくり出された「余剰人員」の対策=首切り3本柱に全面協力し、国労や動労千葉、さらには動労の一般組合員に対しても解雇・退職を強要していった。
 松崎明の反階級的大罪の第二は、闘争圧殺と国労解体、総評解体を動労の最大の組織的課題として進めたことだ。
 中曽根「戦後政治の総決算」攻撃の核心である「国労をつぶし総評を解体する」を、動労の実践的組織方針とした。当局と一体で国労や動労千葉組合員を職場から追い出し、余剰人員化することを狙った「血の入れ替え」や「業務移管」の攻撃を総力で進めた。
 国労や動労千葉が団結を維持してJR新会社に残ることが明らかとなるや、87年1月、「採用枠を削ってでも国労や動労千葉の首を切れ」と国鉄当局に申し入れ、90年3月、JR資本に対し「清算事業団の組合員を採用するな」と反革命ストの脅しまでやった。
 松崎明の反階級的大罪の第三は、「働こう運動」による労働組合運動の変質と産業報国会化を動労カクマルの組織をあげて実行したことだ。
 松崎明は、自らの転向を日帝権力に認めてもらうために、中曽根や自民党国鉄再建小委員会・三塚博や元警視総監・秦野章、勝共連合・統一協会にまでこびを売り、彼らの機関紙に何度も登場して転向宣言をくりかえす醜態をさらした。
 それは、労働組合幹部の単なる日和見主義とか自己保身ではない。動労本部カクマルは1982年1月発表の『国鉄問題に関する動労の考え方』(以下『82年・動労の考え方』)と83年1月『83年・我々の組織的課題』(以下『83年・組織的課題』)の「全組合員総学習」を水路に、自覚的なファシスト労働運動の立場に移行し、「冬の時代」論と「働こう運動」を軸に動労全体をカクマルが牛耳る産業報国会運動への転換に踏み出したのである。

 資本の突撃隊・産業報国会路線を正当化する転向理論

 戸塚秀夫は、論文のいたるところで「国鉄の分割・民営化の過程での動労の方針転換について、それを許しがたい『裏切り』として非難する言説が、現在でもなお根強く存在している」とした上で、「そこにいたる歴史過程を運動主体の思想と行動に即して検討することが必要」だと、歴史を得手勝手に描いて松崎明を賛美する反労働者的思想を満展開させている。
 戸塚論文は「政府・自民党の『国鉄改革』に向けての合理化計画が単なる国鉄赤字問題への取り組みというより、国鉄労働者の組合運動への壊滅的な攻撃として企画されている。ではどうしたらよいか」として『82年・動労の考え方』から次のように引用する。
 「形成されつつある『民衆の敵=国鉄』の重包囲網を打破するためには、国鉄の『社会的必要論』を全面化させ……検修外注化についてはそれを阻止するためにも『働き度を高める』ことを通してわれわれ自身の『職場と仕事とそして生活』を守るたたかいを追求」
 「『働かないから赤字がでる。赤字だからつぶす』という論理に対して『ならば働くから列車を増発させ、赤字を克服せよ』と突き付けてたたかう……」
 何が「たたかう」なのか。まさに「働こう運動」ではないか。戸塚が何を言おうと、労働者としての階級意識を解体する企業防衛主義の思想、戦前の産業報国会とまったく同じである。
 国鉄分割・民営化攻撃とは、日帝こそが行き詰まり打倒されるべき情勢の到来であった。高まる労働者の怒りをプロレタリア革命に向かって解き放つことが問われた。それが国鉄決戦だった。
 そのとき動労カクマルは、敵の攻撃の大きさだけを強調して「闘う主体の条件がない」とする「冬の時代」論を満展開させ、敗北主義をあおり立て、闘争の放棄を宣言し、国鉄の経営再建に協力する立場に階級移行し、「働き度を高める」ことを実践方針化した。攻撃に立ち向かうのではなく、奴隷頭となって組合員を「働こう運動」に駆りたてたのだ。
 しかし動労千葉は、賃労働者と資本との絶対的非和解性に踏まえた絶対反対論と階級的団結論の立場に立ち、反合理化・運転保安闘争を武器に、職場生産点から戦後史上最大の決戦に立ちあがっていった。国労も現場労働者の怒りをこめて闘いに立ちあがった。
 その対極で「働こう運動」を路線化した動労本部カクマルは、臨調・自民党・国鉄当局の先兵となって「緊急措置11項目」を受け入れた。「『既得権を守る』から『世論を変える』へ」と称し、ブルトレ手当の返済に応じ、無料乗車証制度廃止、現場協議制度改悪を認め、「57・11(82年11月)ダイ改」大合理化を受け入れ、「国労ストは挑発者」として国鉄労働者の闘いにことごとく敵対していった。
 ストライキに敵対しこれを圧殺することがどれほど犯罪的か。「裏切り者」として断罪され、たたきだされて当然だ。動労本部カクマルは全国の国鉄労働者から「資本の軍門に下った動労」と弾劾を浴び、動労内部でも組合員の脱退が続出し、大動揺を引き起こした。

 闘いを継続する労組を罵倒「国労解体」を公然と掲げる

 こうした動労「働こう運動」をめぐる危機の中で、カクマル松崎がうち出したのが『83年・組織的課題』であった。
 カクマルは、「働こう運動」が大打撃を受けた理由が、カクマル自身とその「働こう運動」の裏切り性、反労働者性にあるにもかかわらず、いっさいを「国労の非」にすりかえ、国労攻撃を全面化していった。
 『83年・組織的課題』は、「国労は当局の労務政策転換の背後にあるものを分析できない」「国家意志がわかってない」「現実は(産業報国連盟が発足した)1938年に妥当する」「総評労働運動の崩壊と国労における労働運動の終えん」であるとし、「59・2(84年2月)ダイ改」の貨物大合理化を丸ごと受け入れ「効率化の土俵に乗って職場と仕事を守る」であり、「当局の具体的構想を先取りして要求を押し込む」とまで言い放った。そして現場組合員からわきあがる不満や疑問に対して、「機関あるいは役員に問いかけ、追及したり突き上げるなどは許されない……『職場と仕事を守る』ために『自分はどうすべきか』を各組合員が自らの問題として自覚せよ」と脅し、結論は、闘いを継続する他労組を蹴落とすこと、すなわち「国労解体」を実践方針としたのだ。
 戸塚論文は、こうしたカクマル松崎明のファシスト流の論理すり替えを受け入れ、動労本部の裏切りを賛美し、松崎と一緒になって国労指導部を非難してみせる。
 戸塚は、「当局が提案してきた三本柱を逆手にとって組合自身が余剰人員問題の解決」に乗り出した「動労のこの時期の『剰員整理』への取り組みは、日本だけでなく世界の労働運動史でもまれな実験であった」とほめそやし、「動労独自の職域拡大」「動労の提言運動」を賛美し、結論として「ともあれ、余剰人員問題への対応において、動労と国労は明確に異なる取り組みをした。そのいずれが有効であったか。歴史はすでに回答を与えている」とまで言ってのけた。
 現実はどうか。20万人の首切りと200人を超える自殺者である。これをどう説明するのか。断じて怒りを抑えることはできない。エセ学者の虚飾は地に落ちた。

 自治労本部も「対案路線」に

 注目すべきは、1987年当時から、自治労本部が中心になり、戸塚秀夫らとともに、イギリス・ブレア労働党政権の「第3の道」=ニューレイバー主義の基礎となった「ルーカスプラン」を日本に輸入する作業を進めてきたことである。
 「ルーカスプラン」とは、国家・資本との熾烈な闘争の中で生み出された敗北主義のもとで、「反合理化闘争の伝統的な『条件闘争路線』と『絶対反対路線』に対する第3の新しい潮流」「労働者の対案戦略運動」と称する「働こう運動」路線である。戸塚らと自治労本部は、国鉄分割・民営化をめぐる決戦の最中に「それまでの合理化絶対反対闘争ではない対案戦略運動」にとびつき、カクマル松崎の「動力車労働組合運動」に行き着いたのだと臆面もなく語っている。
 この間の自治労本部の転向・転落は見事にこれに対応する。90年代の橋本行革・民営化攻撃に対し、自治労本部は「職の確立」を唱え、「現業活性化」という自治労版「働こう運動」を現場に押しつけた。そして道州制・民営化攻撃の開始にあたって「攻めの民営化対応」と称する労働組合の側からの積極的な協力方針に踏み切り、ついに09年8月熊本大会において「道州制参加・民営化推進・北朝鮮弾劾」を大会方針として決定した。われわれが、「動労カクマルがとった道を自治労本部がくり返そうとしている」と批判してきたことが現実となったのだ。
 「国労の二の舞いになるな」を合言葉に、戸塚らと資本主義救済の体制内労働運動の道を探ってきた自治労本部は、いまや小沢・鳩山=民主党・連合政権の与党勢力として、道州制・民営化推進のファシスト労働運動の道を突き進もうとしている。われわれはこれを断じて許さない。国鉄決戦を基軸に4大産別決戦に総決起し、JR・カクマル結託体制もろとも小沢・鳩山政権打倒に突き進もうではないか。
 動労千葉の反合理化・運転保安闘争の路線こそ労働者階級の勝利の道だ。国鉄分割・民営化をめぐる階級決戦の決着をかけ、10春闘の爆発へ総決起しよう!