2010年1月 1日

“世界を視野に入れた労農連帯” 今年は三里塚の年反対同盟は闘う

週刊『前進』12頁(2422号3面1)(2010/01/01)

“世界を視野に入れた労農連帯”
 今年は三里塚の年反対同盟は闘う
 2・25現闘本部裁判 反動判決は絶対許さぬ

 三里塚芝山連合空港反対同盟から激闘の2010年を闘う決意が寄せられた。日帝・成田空港会社(NAA)と一体となった千葉地裁・仲戸川裁判長による現闘本部建物の強奪・撤去の策動を粉砕し、市東孝雄さんの農地を守れ。3・28三里塚全国総決起集会に攻め上ろう。(編集局)

 44年の闘いは正義 事務局長 北原鉱治さん

 44年間、政府の暴政と闘いつづけてきたことは正しかった。本来なら30年も前に完成しているはずの空港がいまだ半分しかできておらず、いびつな姿をさらしている。人民の闘いに正義があったからにほかならない。
 1966年に全国の支援者の浄財をもって建てられた反対運動の拠点である天神峰現地闘争本部——その裁判が2月25日に判決を迎える。23回の弁論が開かれたが、正義がどちらにあるか、法を犯しているのはどちらかが法廷で明白になった。裁判長はおそらく反動判決を書いているだろうが、それがいかなるものであろうとわれわれは不屈に闘いつづける。
 また市東さんの農地を奪おうとする攻撃も、絶対に許せない。三里塚で行われている無法に立ち向かうことは、日本の将来を決める闘いである。
 成田は「有事」にアジア侵略の拠点、軍事空港の姿をあらわすだろう。民主労総の方々が昨年も三里塚を訪れてくれた。戦前・戦中に日本が朝鮮・韓国に行った侵略と戦争を私は率直に謝罪した。気持ちは通じたと思う。私は、日本と韓国とがこのアジアの一角から平和を作り出そうと提案している。労働者が軍事物資をつくらず、運ばず、農民が生命の糧である食糧をつくれば戦争は起きない。昨年の11・1日比谷での集会で米、韓国、ブラジル、ドイツの労働者の参加を見たときにあらためて確信した。
 私のこの闘いの姿勢、生き方はもう誰に何を言われても変わるものではない。2010年、全国へ、そして地元へのアピールの先頭に私は立つ。

 現地制圧の攻防に 事務局次長 萩原進さん

 前原国交相の「羽田ハブ空港化」発言は、三里塚闘争の位置をはっきりと示した。成田に比べれば羽田の空港としての優位性は明らかで、しかし羽田だけでハブというわけにもいかない。それで羽田・成田の両方を使って対応する。しかし実質的には国際線のドル箱を羽田に取られることになるので、利権がらみで大騒ぎになっている。結局われわれが44年間に渡って成田空港を破綻に追い込んでいることがこういう事態をもたらした。
 東側に新誘導路をつくったと思ったら今度は第3の誘導路なんて言い出すんだから、無計画で場当たりなやり口の失敗を自認したに等しい。
 現闘本部裁判も、市東さんの農地裁判も向こうの言っていることは矛盾だらけでなんら整合性がない。だからこそ攻撃を力ずくで押し通そうとしてくるだろう。
 2・25現闘本部裁判の判決では、仮執行のついた判決を予想しておかなくてはならない。そして3・28の全国集会を大爆発させ、4〜5月の現地攻防戦が白熱化するという過程が考えられる。われわれは2期決戦の時のように、毎日団結街道を2度3度とデモをやり、かけずり回る、そういう状況を作る必要があるのではないか。現地を敵味方どちらが制圧するかの攻防に入るだろう。その中で市東さんの農地を守る厚い陣形を構築する。労働者と農民の連帯がますます必要になる。
 昨年は11月に韓国を訪問して民主労総との交流を深め、世界を視野に入れた労農連帯へと一歩を踏み出した。確信をもって2010年は三里塚の年だ、と訴えたい。

 体張って闘う覚悟 中郷 鈴木謙太郎さん

 飛行機事故をきっかけに暫定滑走路北延伸が前倒しで供用開始されたわけだが、東側誘導路をつくったら今度は第3誘導路計画などと言い出した。北延伸はもともと南側の天神峰・東峰の住民を追い出す攻撃であり、これに反対同盟も東峰部落も負けなければ永久に成田空港は完成しない。暫定滑走路はしょせん暫定で終わるだろう。
 現闘本部裁判の一審の判決が出ようとしているが、反対同盟は本部と市東さんの農地を体を張って死守すると固く意思一致している。その覚悟で今年を闘う。
 空港の利権をめぐる騒動の中で、元反対同盟でもある芝山町長・相川勝重が、発着の時間制限を取り払えとか、新滑走路をつくれなどとNAAにアピールを行った。NAAも年間30万回の発着が可能だとぶち上げているが、机上の計算だ。旅客も貨物も減っているのは近くで見ていて手にとるようにわかる。静岡、茨城と採算のめどが立たない地方空港が開港するが、隣の県に行くのに飛行機を使う人はいない。
 反対同盟はこの間、労農連帯を訴えながら前進してきた。そして日本全国の農民の心をつかむような闘いを心がけてきた。今全国の農民が置かれている苦境は、けっして一時的なものではない。民主党も賛成して農地法の改悪が強行された。まさに耕す者から権利が奪われようとしている! 「空港建設のための農地強奪」という市東さんにかけられた攻撃との闘いこそ、日本農民にとって最重要課題だ。

 10月集会が大成功 白枡 伊藤信晴さん

 10・11三里塚全国総決起集会が画期的な大結集をかちとり、大成功した。三里塚闘争勝利のために労農連帯の発展が不可欠であるといっそう浮き彫りになったと思う。現闘本部をめぐる決戦と国鉄決戦、検修・構内業務外注化攻撃との闘いが一体で爆発することが、勝利のかぎとなる。
 敵はさまざまな攻撃をかけて同盟と空港反対運動をつぶそうとしてきたが、今ははその攻撃を粉砕したと言える。5・27国労臨大闘争弾圧裁判での勝利に明らかなように、敵は磐石では全然ない。2月25日の判決内容について楽観視はできないが、いかなる判決だろうと、市東さんの気概、動労千葉との連帯、そして何より不屈の44年の闘いがある限り反対同盟の破壊は絶対にできない。
 昨年も民主労総の大訪日団を三里塚に迎えたが、仕事と生活を抱えぎりぎりの条件の中でがんばって来てくれた。労働者の自己解放にかける情熱を韓国の人びとから受け取った。
 まさに資本主義は終わりの時を迎えている。日帝の航空政策も破綻している中でアジア侵略の拠点という成田の姿があらわになるだろう。これを労働者と農民の力で粉砕して、空港廃港の展望を切り開くことができる。

 許せぬ市長の暴言 婦人行動隊 宮本麻子さん

 成田市長は東峰・天神峰で空港に反対し闘っている人びとについて、「交差点の真ん中に住んでいるようなものだから早く移転してほしい」などと発言しました。自分たちでそういう状況をつくりだしておいて、怒りを抑えられません。
 昨年は裁判闘争に明け暮れた1年でした。多いときには一月に3回4回と弁論が開かれ、毎回傍聴にも多くの人が駆けつけ、反対同盟は弁護団とともに全力で闘いました。不公平でまったく理にかなわない姿を引きずり出し、仲戸川裁判長やNAA、千葉県を追いつめました。
 そして市東さんの農地を守る運動がさらに広がったことを感じました。国際連帯もますます深まっています。韓国でも労働者・農民に対して政府が行っていることは、力ずくの弾圧、強制排除など本当に同じですね。
 資本の攻撃に対して、生きるために手を携えて闘うことが本当に求められます。私の周りでも失業、首切り、生活苦などの問題が深刻化しています。1年前に派遣村のことを報道で見たときは、「東京は大変なことになっている」と話していましたが、今やその現実は成田のものです。
 社会を変える闘いに立ち上がることが求められる2010年。反対同盟はその先頭で闘います。

 毎回の傍聴が力に 東峰 萩原富夫さん

 振り返ると、裁判闘争で1年を駆け抜けたという感じです。法を悪用して土地の強奪を画策するNAAに対して、法廷ではつねに気迫で押す闘いをやりぬけたと思います。なにしろ相手は国家権力なんだからもっと傍若無人に攻撃をかけてきてもおかしくないくらいだが、やはり毎回傍聴にたくさんの人たちがつめかけていることが大きな力になりました。
 東側の誘導路のために東峰の森が伐採されて、うちから畑への道も遮断され大きく迂回を余儀なくされた。工事に次ぐ工事で、現地の状況は道やトンネルを継ぎ足され、変形され、空港は絶えず騒音や排気ガスをまき散らしている。そうやって敵は物質力でわれわれを屈服させようと日常的に迫ってくる。これに負けないことが肝心だ。畑を耕し農民として生活していくことが空港を追いつめることになります。
 脱落派のように提言とかなんとか言ってはだめだ。「空港は必要かどうか」なんて議論に乗ったら「必要」という話にしかならないもの。そういう立場に立たず、一切の話し合い拒否、農地死守の原則を貫くことだ。
 先日東峰神社の掃除を行ったが、あそこの木はすくすくと育っている。NAAからは「航空法違反だから切ってくれ」と言ってきているが、絶対に切らせません!

 正義の暴力で反撃 森田恒一さん

 10・11集会での私の開会宣言を「インターネットで見た」と後輩の牧師が手紙をくれた。彼自身もかつて三里塚に参加したことがあり、私の訴えに共感してくれた。集会でもはっきりと述べたが、現闘本部と市東さんの畑を守るために、私自身が体を張って立ち上がる。不正義はまさに政府とNAAであることは誰の目にも明らかだ。ところが千葉地裁は今や国家権力の手先というか子分というか、三里塚をつぶすためにはどんな無理でも押し通そうとする姿勢をあらわにしている。
 民事訴訟法には主尋問に対しては反対尋問を行うことが明記されているにもかかわらず、仲戸川裁判長は石橋証人らへの反対尋問の機会を奪い去ったまま結審に持ち込んだ。この手口から、2月25日の判決が法と道理にかなうものであるとは到底予想できない。そして国家権力の本質をむき出しにして、遅かれ早かれ暴力をもって現闘本部建物と市東さんの畑を奪いに機動隊を大動員して襲いかかるだろう。
 私はすでに91歳となり、自由に体が動くわけではないが、このような権力の理不尽な暴力に対しては人民の側が正義の暴力をもって反撃するしかないと確信する。市東さんの不屈で果敢な決意がある限り、三里塚は絶対に負けない。

 “第3誘導路”認めない

 自然体を貫き10年 天神峰 市東孝雄さん

 現闘本部裁判、そして私の農地裁判を09年は全力で闘った。裁判のたびに仕事を一日休むのは農民にとって大変なことだと、裁判官らは知っているのかな。昔、うちのおやじについて空港公団が「猫の額ぐらいしかない土地だから、追い出すのはいつでもできる」と豪語した。それでおやじがものすごく腹を立てて闘った。結局「猫の額」を取れなくて44年も経ってしまった。
 私も、あの千葉県農業会議で県の役人が「1億8千万円もらって出て行けば土地から上がる収益の150年分にあたる」と言い放ったときの怒りを、けっして忘れることはできない。どこまで農民を見下すんだ。もともとそんな金額に興味はないが、もしだまされて1億8千万円で土地を売ったら、NAAはその何十倍ももうけるわけでしょう。絶対に許せない。
 日本全国の農民は、田んぼ、畑、果実、酪農と種類は違っていても岐路に立たされている。政府の施策に従順なところには手当てするようなことを言っているが、われわれのような有機農法にまじめに取り組んでいるようなところは、はずされている。労働者と農民が互いによく理解して連帯し闘うことが大事だ。
 第3の誘導路計画など認めない。私が三里塚に戻り、ちょうど10年がたった。たかが10年、されど10年。みなさんの支援のおかげでもあり、また私自身も自然体を貫くことでやってこれた。今後もどんな攻撃がやってこようとこれまでどおりやり続けますよ。

 だい10章 悪政をただす闘い 天神峰現闘本部裁判を支援する会代表世話人 戸村義弘さん
 現闘本部裁判で反対同盟側はあらゆる意味で優位に立ち、敵方を圧倒している。弁護団が同盟と一体となって奮闘していることに、頭が下がる。NAAは木造建物が「滅失した」と言っているが、鉄骨の建物の内側に、登記された木造の建物はちゃんと残っているんだ。実地検証を行えば疑問の余地なく分かる。ところが裁判長はそれをやろうとしない。今は反動的な判決を準備していると予想される。
 またこうした裁判の形をとった攻撃をマスコミが報道しないことに、私はすこぶる腹を立てている。「飛行回数を何万回増やす」などとNAAのカラ宣伝をストレートに流すのに、われわれが裁判で敵を追いつめていることは、あれだけ記者が毎回取材に来ていながら1行も記事にしないのか。民衆の側に立ち資本・権力を撃つような気骨ある報道がないのは嘆かわしい。これでは戦時中に大本営発表をそのまま垂れ流して、戦意高揚、戦争推進の立場に堕したころと同じだ。
 だったらわれわれ自身が「事件」「騒動」を起こしてでも、マスコミがそれを報じざるをえないような闘いをやる。
 三里塚は単に「自分の土地を手放したくない」という守りの運動ではなく、農地を武器に悪政をただし、日本全体のあり方をただす、言うならば革命の運動なのだ。