2010年1月 1日

国鉄労働者座談会 1047名解雇撤回・JR体制打倒へ

週刊『前進』12頁(2422号6面1)(2010/01/01)

国鉄労働者座談会
 安全破壊と団結解体の検修外注化は絶対阻止だ
 国鉄決戦で民主党・連合政権を倒すぞ
 1047名解雇撤回・JR体制打倒へ

 JR東日本は4月1日、検修・構内業務の全面外注化を強行しようとしている。労働者の団結を解体し、安全を破壊するこの攻撃との闘いは、1047名解雇撤回闘争とともに、国鉄分割・民営化に決着をつける歴史的な意味を持つ。大恐慌情勢下、全労働者を低賃金・非正規職化・大失業にたたき込む激しい攻撃が吹き荒れる中で、これに立ち向かう闘いの中軸に、検修外注化阻止の決戦は位置している。それはまた、民主党・連合政権打倒の最先端の攻防だ。決戦の渦中にある国鉄労働者に、この闘争の意義と展望、決意を語っていただいた。(司会・本紙編集局)

 出席者
田中康宏 動労千葉委員長
渋沢彰彦 動労千葉幕張支部
石井真一 動労水戸委員長
富田益行 国労近畿地本 5・27臨大闘争弾圧被告
羽廣 憲 国労小倉地区闘争団 5・27臨大闘争弾圧被告
原田隆司 国労近畿地本 5・27臨大闘争弾圧被告
小玉忠憲 国労秋田闘争団
吉野元久 国労東京地本
高杉 靖 国労千葉地本
大村吉男 国労仙台地本
筒石 惇 国労新潟地本
荒山弘平 JR車両工場労働者
     (敬称略)

 国鉄分割・民営化に決着つける闘いに

 丸投げ外注化と出向・転籍の強要

 ——JR東日本は車両の検査・修繕(検修)業務と車両基地の構内運転業務の全面外注化を提案してきました。これは、職場に何をもたらしますか。
 田中 JRがやろうとしているのは検修・構内業務の丸投げ外注化です。近い将来、検修部門は完全別会社になるでしょう。その過程で、検修部門の労働者は転籍を強いられ、NTTでやられたように雇用も賃金も徹底的に破壊されると見て間違いない。
 2000年にJR東日本が「ニューフロンティア21」という大合理化計画を出した時から、動労千葉は「これは第2の分割・民営化攻撃だ」と訴えてきた。保線、信号通信、電力、土木の全面的外注化が強行され、東労組や国労本部がこれとまったく立ち向かえない中で、われわれはこの8年、必死に闘ってきました。
 この攻撃が決定的にエスカレートして、検修・構内業務の全面外注化が来た。ここまで外注化したら、鉄道会社であることを放棄するに等しい。しかも、われわれの拠点が直接の対象になっている。だから、国鉄分割・民営化攻撃に決着つけるような闘いに持ち込みたい。本当にここが勝負です。
 渋沢 千葉では外注化を阻んでいるけど、うちがストライキをやるから、総武快速線の検修業務は全部、鎌倉車両センターに持っていかれた。その結果、運転台には「故障・故障・故障」のシールが張りっぱなし。故障を発見しても、半年以上も直せない。鎌倉では修繕できないんです。幕張車両センターでは、うちの車じゃないからと、必要な部品を置かない。だから、幕張で直そうと思っても直せない。車輪が規定値を超えて磨耗した車両を走らせている。
 今でもこれだけ問題が出ているのに、外注化されたらよけいにめちゃくちゃなことになる。
 田中 外注化は労働者を最底辺に突き落とす仕組みです。エルダー社員(JRを定年退職後、再雇用された人)や現役社員を外注先に強制出向させて、JRは外注費を徹底的にたたく。必然的に労働条件は最悪になり、安全も崩壊する。千葉は検修の外注化を阻んでいるから、外注会社の業務は清掃だけ。清掃の仕事でも、夕方6時に出勤して夜中の2時半に終了という勤務まである。こんなやり方が検修部門にも適用されるのは目に見えている。
 大村 私の工場では、09年4月に車体と台車の切り離し・つなぎ合わせの作業が外注化された。その結果、考えられないような事故が起きている。配線ミスでエンジンがかからなくなったり、エンジンオイルのホースと冷却水のホースを逆に付けてエンジンの中を水だらけにしちゃったり、スピードメーターが動かなかったり。
 「工場から出た車はそんなのばっかりだから危なくて乗れない、注意しろよ」と他の区所の人から言われて、本当に悔しい思いをしている。その原因は外注化です。
 外注会社にはJRからの出向者もいる。でも、今まで13人でやっていた仕事を10人でやらされるから、外注先の労働者に仕事を教えている余裕はない。指導しながら仕事をやるとしたら、13人いたところを15人にしなきゃ駄目。それを逆に減らしているから、人の仕事を見ている暇がない。
 吉野 保線の場合、線路が壊れていても外注化されているからJRの社員は手を出せない。その結果、レール事故が続発している。
 大村 外注会社は何回も同じミスをする。直営のおれらは「仕事をちゃんとやれよ」と思うけれど、外注会社の労働者は「大した教育もされてないのにまともな仕事ができるかよ、しかも賃金も安いのにさ」と思いますよね。

 団結の解体が事故をもたらす

 荒山 私は車両製作所で働いています。外注会社の労働者です。賃金は、御用組合の役員ですら「うちは安く使われている」とぼやくくらい、本当に安い。
 同じ現場で同じ仕事をしているのに、元請け、下請けで分断される。現場で働く労働者同士のつながりがなかったら、絶対に事故が起きる。自分の安全は仲間の安全と一緒。外注化は、労働者にとって一番大事な団結を破壊する。自分の組合は会社の手先みたいな組合です。これを安全を守ることができる組合につくりかえたい。
 筒石 自分がいるのは機関車の検修ですが、貨車の職場はあっという間に外注化が進んで、本体で貨車の検修をやっているところはほとんどない。駅の入れ換えの誘導や信号の扱いもグループ会社に請け負わせている。
 田中 要員不足だから貨物が一番外注化が進んでいる。平成採用の青年で、JR貨物の制服を1回も着たことがない人もいるんですよ。入ったとたんに出向。
 富田 JR西日本の状態もすさまじい。私は土木の仕事をしているけど、実際は外注会社から上がってきた報告書にハンコを押すだけ。全部丸投げです。
 しかも、保線で言えば一つの仕事を三つの外注会社がやっている。この前、下請け会社の青年が作業中に貨物列車にはねられた。ばらばらにされてるから、別会社の人の安全まで考えられない。
 大村 外注会社は、清掃しかしていなかった女性労働者にフォークリフトの運転までさせている。
 吉野 外注化すればどうしても偽装請負のオンパレードになる。JRが外注先の労働者に指示を出さなければ、列車は動かない。
 JRは、外注会社が直雇いする「プロパー社員」を育てると言うけれど、保線の場合、下請け会社にプロパー社員はほとんどいない。実際の作業はJRからの出向者と孫請けの人にやらせている。
 田中 この攻撃は矛盾だらけ。千葉では8年間、外注化を止めてきたから、外注会社には検修業務を請け負う体制も労務支配の体制も何もない。仮に外注化が強行されても、外注先でわんわんストライキをやったら、それを制圧することなんかできない。

 現場には怒りがあふれている

 大村 外注化された結果はみんな目の前で見ているし、怒りは誰もが持っている。平成採の青年も、われわれが外注化反対で点呼の時に会社に抗議している姿を見て、「すごいですね、おれも考えは同じです」と言ってくる。
 石井 動労水戸が検修外注化絶対反対のビラをまいたから、東労組も職場集会をやらざるをえなくなった。その中で怒りがばーっと出てきている。「おれはJRに入ったんであって別会社に行くのは納得できない」「役員の説明はまったく分からない」と怒ってる。
 高杉 設備部門の外注化の時、東労組は「保線なんか国労の職場だから外注化すればいいんだ」と言った。だけど今度は、攻撃の対象の大半が東労組の組合員で、ほとんどが出向に出される。自分が例外だなんて誰も思っていない。
 吉野 東労組は、カクマルの延命のために青年の未来を資本に売り渡した。国労本部も、革同は職場集会で「国労は反対です。だけど、今和解の一番大事な時期だから、反対していることは表に出さない」なんてのうのうと言う。これに対して組合員が「何しに来たんだ」って弾劾している。職場には怒りがあふれている。
 大村 おれたちは国労の上部機関に「安易に妥結するな」と言っている。だいたい団体交渉なんて形骸化されていて、おれらがいろいろ言っても、会社は「組合さんの言うとおりですけど、やらせてもらいます」という対応しかしない。その上、国労東日本本部が妥結したら、現場の抵抗は困難になる。ところが役員は、「妥結しろと言う人も半分いる」なんて答弁する。絶対阻止の腹はない。そんなこと期待もしていないけど。
 高杉 分会の職場集会では、本部の役員を呼びつけて「ストに入れろ」って追及しようとなった。本部はスト指令なんか出さないと思うけど、現場には怒りがある。
 田中 動労千葉はストライキをやるけど国労がスト破りやるという構図をぶっ壊さなければ。組合の枠を越えて階級的に団結するためには何が必要か。結局は「体制内派との闘い」です。うちの組合員は「国労本部は許せない」と思っている。そして「国労本部と闘っている仲間とは団結できる」と。階級闘争の核心は体制内派と闘って団結を拡大することです。
 石井 職場で大討論を巻き起こすことだと思う。職場の労働者一人ひとりに「反対なのか、賛成なのか、どっちなんだ」と突きつけて組織拡大をしていく。どの組合が闘う組合なのかをはっきりさせて、選択を迫っていく。
 高杉 われわれは「国労本部打倒」と訴えてきた。そのためには革同とか協会派を徹底的に追い詰めることが必要。「敵を打倒するしか生きられない」という覚悟でJR資本と対決し、JRに屈服した国労本部を打ち倒す。
 渋沢 平成採には「うちに来い、外注化を止められるんだから」とオルグしている。組織拡大を第一に考えて、この過程で、絶対に平成採の青年を組織したい。

 反合理化・運転保安闘争路線を武器に

 外注化を阻んだ動労千葉の闘い

 ——どのように闘えば勝てるのか。路線を明確にすることが必要ですね。
 田中 00年にJR東日本はシニア協定の提案をしてきた。これは、外注化推進を誓った労組の組合員だけに定年後の再就職あっせんをするというもの。われわれはその締結を拒否しました。
 当時、東労組は毎日、機関紙で「東労組だけが再雇用される」と叫び、「今日は国労から何人脱退!」とビラに書きまくった。そういう時に、労働組合の指導部は問われるわけです。
 この過程で、保線や電力、信号通信の全面外注化が強行され、その途端に線路はガタガタになり、尼崎事故、羽越線事故、伯備線事故が立て続けに起きた。
 われわれは反合・運転保安闘争でこれと8年間立ち向かい続けてきた。重要なことは、ここまでは勝っているということです。
 渋沢 シニア協定は、資本とカクマルが仕組んだわけです。定年を迎えても、うちの組合員だけは再雇用から排除する。「動労千葉から抜ければ働かせてやるよ」という、分割・民営化の時と同じ本当に汚い攻撃でした。
 その人の生活もありますし、すごく苦しい闘いでした。組合員が涙を流す時もあるし、執行部が涙を流す時もある。こっちも、代わりの仕事を探してきたり。最後はみんな、「自分たちだけじゃなくて、残る動労千葉の組合員たちを守る」と決断をしてくれた。全力でやってきて良かったですよね。
 田中 こっちは必死でやってただけなんだけど、抵抗し続けたら敵の側に矛盾が起きてきた。シニアに動労千葉から採用できないから、人が足りなくなる。だから、外注化できないだけでなく、分割・民営化以来、駅や売店に強制配転されていた組合員を運転職場に戻さざるをえなくなった。
 この8年間の闘いがあるから、展望がある。6人の平成採が動労千葉に入ってくれたのも、外注化絶対反対で闘ってきたからです。

 “闘えば勝てる”と確信つかんだ

 石井 動労水戸は組合員の多くがずっと運転職場から排除され、売店に飛ばされてきた。しかし、JRがギブアップして、私も売店から運転職場に戻りました。23年間、不当労働行為と闘いぬいて勝利した。
 動労水戸は運転士登用差別事件で最高裁で勝って「運転士にしなければならない」という判決が出た。水戸支社は最初から「動労水戸の仰せのとおりにいたします」という態度だったけど、本社は全然違う。逆に判決を動労水戸解体に使ってきた。運転士になりたければ遠隔地に行け、運転士になりたくないやつも運転しろと。
 われわれは猛烈な怒りをたたきつけて、業務命令で強制的に入れられた白河の研修センターでもストライキに立った。支社との団交でも夜中までガンガン追及した。最後に280人で本社に押し掛けて、本社を屈服させて勝利した。
 動労水戸の組合員3人が12月から乗務し始めました。決定的ですよ。周りは「なんでこいつら勝ったんだ」と不思議に思ってる。
 力関係が一切を決める。組合員が徹底的に団結して闘いぬいて、資本を圧倒しきった。「闘っても駄目」論を打ち破ることが重要なんです。

 JR体制との非和解的激突へ

 田中 動労千葉は反合・運転保安闘争をやりぬく中で団結を固めてきた組合です。鉄道労働者にとって事故は最も切実な問題。
 国鉄時代の大きな事故に、1962年の三河島事故、翌年の鶴見事故がある。この事故が起きたのは、57年の国鉄新潟闘争を経て、60年安保闘争で労働運動が復権していく過程だった。労使で事故防止対策委員会をつくるという協定を巡って、動労の大会で「そんなことで安全が保てるのか」と大激論になり、協定の批准が否決されて執行部が総辞職した。しかし、結局、これはATS(自動列車停止装置)の設置を「成果」として確認して終わっている。
 その後、機関助士廃止を軸にした5万人合理化攻撃があり、これに対して激しい闘いが展開されたけれど、民同的な反合闘争は完全に限界に突き当たった。
 これを突破したのが動労千葉の反合・運転保安闘争です。72年に動労千葉の組合員が運転する電車が船橋駅構内で前方の電車に追突した。動労千葉地本は、「責任の一切は当局にある」「運転士を絶対に守れ」と闘って、運転士への解雇攻撃を粉砕した。この闘いに動労カクマルは、「そんなの労働運動にならない」と激しく敵対した。安全を敵の弱点ととらえ、そこで資本と非和解的な闘いを展開する反合・運転保安闘争路線は、明らかに民同やカクマルの限界を超えるものだったわけです。
 反合闘争を巡って、動労千葉は動労本部カクマルと決裂した。これがあったから、動労本部との分離・独立闘争を闘えたし、ジェット燃料輸送阻止闘争も、国鉄分割・民営化反対闘争も闘えた。
 今回の検修全面外注化との闘いは、三河島事故以来の反合・運転保安闘争の総括と発展をかけた決戦にしなければいけない。
 石井 検修外注化との闘いは、まぎれもなく安全問題。労働組合が安全問題で一ミリでも妥協した時に、事故で労働者が殺される。
 もう一つは、労働者の誇りという問題。検修職場の労働者は、安全を守ることに強い誇りを持ってきた。その誇りを徹底的に奪う攻撃です。今、あらゆる労働者が自分の仕事に誇りを持ちようがないくらいに、あっち行け、こっち行けとやられている。労働者の誇りと団結が決定的に問われている。
 大村 職場集会で「外注会社への技術指導を拒否しよう」と訴えたら、猛反発された。おれらは技術者だから仕事を教えないなんてできないとか、そんなことしたら会社に目を付けられるとか。
 動労千葉もシニア問題で組合員と激しくぶつかった。外注化を巡りそういう議論になるでしょう。現に革同は「反対だけじゃ駄目だ」なんて言っている。これとのぶつかりあいの中から、真の団結が生まれてくる。現場の一人ひとりは外注化反対。最後は5・27弾圧との闘いと同じです。敵は体制内労組幹部だ。体制内との闘いで外注化を阻止する決意です。
 石井 労働者が本気になって団結し闘ったら絶対負けない。動労千葉の中野洋前委員長が『甦る労働組合』で「労働者を軽んじ、蔑視する考えに取り込まれない限り労働者は必ず勝てる」と書いている。その確信を持つことが重要。
 富田 運転職場であろうが保線であろうが、全職場で反合・運転保安闘争に立つべきだという立場で闘ってきた。それで、尼崎事故弾劾闘争を5・27被告団が動労千葉とともに呼びかけるところまできた。JR西日本の歴代社長の井手、南谷、垣内、山崎は分割・民営化の時、運輸大臣の三塚に分割・民営化推進の血判状を出したやつら。こいつらが尼崎事故を引き起こし、事故調査報告書の改ざんをやった。12月3日にJR西日本本社包囲闘争を闘ったけれど、職場で資本とやり合い、青年を組織してJR体制を打倒したい。

 5・27弾圧うち破った大勝利に続こう

 ——検修外注化阻止の攻防と1047名闘争が、いずれも重大な決戦を迎えました。
吉野 われわれは11・1労働者集会を「国鉄1047名解雇撤回」を前面に掲げて闘いぬき、闘う労働運動を復権していく基軸として打ち立て直した。この地平は限りなく大きい。1047名闘争は、国鉄分割・民営化反対闘争を今日まで継続する闘いであり、動労千葉—動労総連合とともに階級的労働運動の革命的拠点そのものです。この闘いはいよいよ情勢とかみ合い、本来の力を爆発的に発揮する時を迎えている。われわれ11月集会派が1047名闘争を主導し、闘争団員を一人残らず獲得すべき時が来ています。
田中 1047名闘争に求められているのは、労働者の団結のみに依拠し、自らの闘いの持つ位置を自覚し、今こそ全労働者の怒りの先頭に立つことです。完全に機は熟し、大きなチャンスが到来しています。大恐慌に立ち向かう労働者の巨大な決起をつくる決定的環は、間違いなく1047名闘争と検修外注化阻止決戦です。

 暴処法弾圧粉砕した画期的地平

 ——この大決戦の冒頭で、国労5・27臨大闘争弾圧を完全に粉砕した意義は大きいですね。
吉野 大失業と戦争の攻撃が激しく吹き荒れる中で、労働運動の力で暴処法(暴力行為等処罰法)を粉砕した。戦前にもこんな勝利はなかった。ここにたどり着く前に全部つぶされてきたわけです。被告がみんな、裁判闘争をとおして自分の原点は分割・民営化反対闘争にあり、1047名闘争に責任を取る立場をはっきりさせて、「有罪判決で解雇もありうる」と腹をくくった。判決の前に国鉄労働者として勝っていた。
富田 5・27弾圧との闘いは1047名解雇撤回闘争そのもの。被告には闘争団員もいるけどJR本体の国労組合員が5人いたことも大きい。裁判でも「1年3カ月も勾留されても1047名解雇撤回を闘う、こういうJR本体の国労組合員がどこにいるんだ」「こう闘おう」と体を張って訴えてきた。闘争団にも「解雇撤回を堂々と貫け」と言いたい。
原田 判決を迎える時は正直、懲役刑プラス執行猶予と覚悟を決めていました。それが、暴処法適用も共謀の認定もすべて粉砕した。しかも検察を控訴断念に追い込み、検察が「首謀者」に仕立てた向山さんの無罪を確定させた。こんな見事な勝利はほかにない。どんな弾圧が来ても負けないという自信を得ました。やはり、弁護士主導だった裁判闘争を被告の手に取り戻した08年2月22日の旧弁護団解任が大きい。これをとおして被告が闘う主体になった。
富田 僕らの判決に対して、旧弁護団は「ビデオ分析と証人尋問で勝った」と言っている。つまり弁護士が頑張ったってこと。被告が存在しないんですよ。僕らが裁判で訴えたのは、1047名闘争に全人生をかけて闘ってきた正義性。これが裁判所をも圧倒した。
原田 正しい方向に転換できたのは、動労千葉を軸とする階級的労働運動路線が僕たちの身になってきていたから。判決を受け、1047名闘争に責任を取りきるぞとあらためて決意している。職場の問題に責任を取り、職場で多数を組織して職場支配権を握っていく。裁判闘争の勝利を、組織化の武器にしていきたい。
小玉 5・27裁判の勝利は闘争団員を揺さぶっています。他方、鉄建公団訴訟原告団の一部指導部はこれに大打撃を受けている。検察官が主張した「向山をリーダーに中核派が起こした暴力事件だ」という論は結構、影響力を持ってきたんです。4者4団体もそういうレッテルを張って労働者を遠ざけようとしてきた。これが完全に打ち砕かれた。

 4者4団体路線は全面的に破産

 ——5・27被告団の勝利の対極で、4者4団体路線の破産は完全に明らかになりました。
羽廣 僕が訴えているのは「解雇撤回という当たり前の原則を貫こう。団結の力に依拠して闘えば必ず展望は切り開かれる」という単純なことです。闘争団員もJR本体の組合員も、分割・民営化による解雇は納得できないとずっと頑張ってきた。「政治解決」なんて納得できるわけがない。
小玉 4者4団体が悪質なのは「解雇撤回」を下ろしながら「雇用・年金・解決金」と言い換えて「中身は同じ」と言っていること。ここが最悪のペテン。
羽廣 彼ら自身、政治解決路線に展望はないことは十分わかっている。実は彼らは、和解を拒否する闘争団員がいっぱい出てきそうだと戦々恐々としているんです。
 現場の闘争団員は、どんなに指導部が腐っても踏みとどまっている。そういう闘争団員にウソばかり吹き込み、闘いを終わらせようとする一部指導部は本当に許せない。長期化して苦しいのは敵の側です。23年を経てなお1047名闘争が存在し続けていることで、JR体制はガタガタになっている。なぜ、こちら側から闘いを終わらせようとするのか。「国労本部も原告団指導部も駄目だ。僕らとともに原則的に闘おう」とガンガン呼びかけていきたい。
 田中 僕らは1047名闘争を押し立て、労働者の怒りをここに全部結集しようと思っている。しかし4者4団体は、ひたすら権力に頭を下げ、今度の検修全面外注化なんか最初から認めている。丸っきり進む方向が違っちゃってる。そんなんで、国労で長年やってきた組合員が「こういう人生を選んで闘ってきてよかった」と思えるのか。国労組合員はそんな存在じゃないですよ。国労は分割・民営化と闘えなかったにもかかわらず、JR発足時に4万人が残った。「国労にいたら新会社には行けない」と散々脅されても、人生をかけて決断した組合員がそれだけいた。今も1万人以上いる。「誇りある国鉄労働者が、なぜあの時に闘えなかったのか」とこの二十数年を総括して、「今こそ立ち上がろう」と一から闘いを始めるべきなんです。
小玉 労働組合にとって一番重要なことは解雇の撤回。11・1労働者集会で韓国の全解闘の人が「労働者にとって解雇は殺人だ」と発言したとおりです。労働組合としてのこの原点を、あらためて打ち立てることが重要です。
 もう一つは、「JR民営化成功物語」を根底から打ち砕くこと。JR西日本が尼崎事故で、事故調報告を改ざんさせてまで死守しようとしているのは「民営化は成功した」って神話ですよ。1047名闘争をつぶさない限り、民営化は成功したと言いきれないし、連合も完成しない。
田中 12月に開かれた動労千葉鉄建公団訴訟では、元国鉄官僚の証言で、23年の時を経て分割・民営化攻撃の生々しい姿があらわになりました。鉄道労連(現JR総連)カクマルの突き上げで、動労千葉争議団を含めた本州闘争団員は解雇された。それを直接指示したのは、当時国鉄職員局次長で今はJR東海会長の葛西敬之だった。こんな連中をのさばらせておいて労働者の未来などない。

 解雇撤回の原則貫く2・13闘争へ

小玉 検修外注化絶対反対の職場生産点での闘いと1047名闘争を貫くことは一体です。この決戦をとおして「第2、第3の動労千葉」を国労の中につくりたい。
吉野 動労千葉などが呼びかける2・13全国総決起闘争は決定的な位置にある。5・27弾圧粉砕の勝利を受けて、闘争団員の中から「和解なんてできるか」と言う人が公然と登場してきている。闘争団を獲得するチャンスです。
小玉 4者4団体は「今年の2・16集会は勝利集会にする」と言い、日比谷野音を借りて大動員をかけようとしている。ガチンコの勝負になりますよ。
 4者4団体の宣伝もあって、本当にJRに戻ろうと思っている闘争団員は結構いる。全面屈服の結果が出たら、すごい怒りが噴き出すことは間違いない。こういう中で、検修外注化阻止決戦があることはすごく大きい。JR東日本を揺るがす闘いにしたい。JR7社の中でも東日本は、労組破壊と労務管理のためだけに存在するようなJR体制の要。ここを揺るがした時、展望も見えてくる。

 大恐慌下の攻防貫き春季ゼネストを

 国鉄闘争が動く時、歴史が動く

 ——大恐慌情勢はさらに深まっています。この中で国鉄闘争はどんな意味を持ちますか。
田中 国鉄分割・民営化とセットで労働者派遣法がつくられ、労働法制が二十数年間で全面的に解体されました。その中で、民営化、外注化、非正規職化が強行されてきた。例えばNTTは全面的に分社化され、本体には十数%の労働者しか残っていない。あとは退職—転籍させられた。
原田 その攻撃がついにJRで全面的に始まった。検修全面外注化は、95年日経連プロジェクト報告が打ち出した「9割の労働者を不安定雇用にする」という攻撃の柱です。
田中 こうした現実は、労働組合がまったく対応できない中で引き起こされた。「首にして転籍」なんて違法行為。だけど労働組合が協定を結ぶ形で合法性を与えてきた。この現実をどこかで断ち切らなければ、労働運動の階級的再生なんて空論。外注化阻止決戦でこれを断ち切り、大恐慌情勢に立ち向かう決起を切り開きたい。
吉野 国鉄分割・民営化でやりきれなかった国鉄労働運動解体を貫徹することなしに、支配階級は道州制導入なんてできない。社会保険庁を巡っても、正規職の分限免職と非正規職の雇い止め攻撃に対して「第2の1047名闘争」が始まっています。国鉄分割・民営化以来、全労働者が資本のすさまじい圧制のもとに置かれてきました。外注化阻止決戦はここに挑んで革命的決着をつけ、労働運動全体を変える闘いになる。
田中 そのためには自分の職場でどう闘うかです。実際に自分の職場で闘いをつくり出すことで、初めて労働者の信頼は本物になる。その大変さを突き破っていくことです。11月労働者集会に結集したみんなが同じように問われていると思う。1人、2人から闘いを始め、それをどう職場全体に広げ、情勢全体を動かす闘いに押し上げていくのか。条件はある。見通しはそう簡単につかめるものではないけど、それは動労千葉も同じです。
 11月に1万人集まらなかったことを主体的に考えると、動労千葉は必死になってこの1年間闘ったけれど平成採の獲得はまだ6人。その壁なんです。みんなが同じ壁にぶつかっている。そしてそれは、全面外注化という組織根絶攻撃との決戦の中でしか打開できない。ここにこそ可能性がある。
高杉 われわれは「国労本部打倒」を掲げてきた。それが、職場で闘い、仲間を増やしていくこととひとつにならないといけない。外注化阻止決戦を「組織拡大のチャンスだ」と思って、本気でやりきることが勝負を決める。
田中 歴史を見ると、国鉄闘争が動いた時に歴史は動いてきた。戦後革命期の攻防の決定的軸は国鉄です。1957年の国鉄新潟闘争から60年安保闘争に向かう過程もそうだし、70年安保・沖縄闘争も、67年からの国鉄5万人合理化反対闘争や反マル生闘争と、青年労働者や学生の決起が一体になってわき起こっている。「国鉄闘争を基軸にした4大産別決戦」の意味をもっと明確にしたい。
 さらに言えば、戦後労働運動の軸になってきたのは、国鉄闘争の中でも国鉄反合闘争なんです。検修・構内外注化阻止の闘いをやりきったら、絶対に新しいものが生まれてくる。この闘争で、大恐慌下における壮大な労働者の決起、70年安保・沖縄闘争ぐらいの総決起をつくる。この闘いは、ものすごい可能性を持っている。
吉野 “よくぞこの時期にこの決戦が巡ってきた”という気構えで闘いたい。紆余(うよ)曲折はあっても、23年にわたり1047名闘争が展開され、それが日本帝国主義を大変な危機にたたき込んでいる。しかも、沖縄米軍基地問題で労働者階級の怒りが噴出し、民主党・連合政権と日米安保を揺さぶっている。その情勢と国鉄決戦が重なって、鳩山政権打倒の展望が見えてきた。当面する2・13闘争を突破口に、外注化阻止決戦を全力で闘い、春季ゼネストをこじ開けるということです。
富田 今年の1〜3月は、外注化攻撃と1047名闘争がともに正念場を迎える。この決戦を全力で闘うことをとおして4月25日の尼崎事故闘争に攻め上りたい。
石井 JR東日本も、今まではカクマルとの結託体制でやりたい放題の不当労働行為をやってきた。それが崩壊した。東労組も盤石じゃない。松崎明なんか労働者からほとんど相手にされていない。「浦和事件」で引っ張り回そうとしても、青年は全然ついて行かない。「行ってもしょうがない」「署名なんてやらないよ」という声がバンバン出ている。

 JR総連解体し青年の総反乱を

荒山 それは実感します。11・1労働者集会に向けて職場でビラまきしたら、1047名闘争に共感する青年が出てきた。二十歳そこそこの青年は国鉄分割・民営化当時のことなんか知らない。でも「分割・民営化の時に首を切られて……」という話をすると「わかりました」と署名してくれる。首切り攻撃が吹き荒れているから、東労組の青年にも1047名闘争は響く。それと外注化問題がつながったらすごい決起になる。
 これだけバラバラに分断されていると敵が誰なのかわからない。でも「原点は分割・民営化にある」「分割・民営化を強行したやつらと、自分の職場の現実をつくっているやつは同じじゃないか」と訴えてわかってもらえたら、下請けの労働者も団結できる。国鉄闘争の位置は大きいが、職場で自分がやることは特別でもなんでもなくてオーソドックスなこと。そこは気負わずにやりたい。労働者の立場を曲げたり薄めたりせず、どんな相手でもそれを真っ向から貫く。同じ労働者だから、信頼して普通にやることだというのが、いろいろやってみての実感です。
 筒石 最初は“職場で闘いをつくるなんてできるのかな”と難しくとらえていました。自分の世代は、就職した頃はJR総連の全盛期。国労と親しくすれば自分の身が危いと本能的に思っていた人が多いんです。それに、平成生まれの人たちに1047名闘争を訴えても「自分が生まれた頃のことなんて……」と言われたら、どう言い返せばいいのかと頭を抱え込んでしまったり。
 だけど今も分割・民営化の状況は続いています。「やってみよう」と決断し、職場でビラを配ったら意外に反応があった。自分が何者であるかを明らかにしたことで分岐が生じたんです。国労の青年労働者にも11・1労働者集会のビラを配り、メールでも働きかけました。ビラを配ったことを名指しで問題にされましたが、今は「それが何ですか」と居直れるようになった。そこまで自分が変化できたことが大きい。
荒山 先日、マル青労同第6回大会が開催され、外注化阻止闘争をマル青労同と2千万青年労働者の未来をかけた決戦としてやろうと確認しました。外注化との闘いはJRだけの問題じゃない。みんな「おれの職場の話と同じだ」と思い、闘う気になっている。
吉野 2千万青年労働者と結びつく決定的な環が国鉄闘争にある。青年労働者は、不当労働行為はやり放題、労働法制なんか関係ない、団体交渉なんか応じないという資本の圧制のもとに置かれている。これはJR方式そのもの。諸悪の根源がJR体制なんです。青年たちは、自分がやられていることを見て国鉄闘争の意味をつかんでいく。われわれ自身が、自分たちの闘いの大きさに自信を持つことが必要だと思う。
石井 勝田車両センターには百人規模の東労組の青年労働者がいます。彼らの獲得を巡って、あと一歩のところまできている。だからこそ、われわれが労働者をとことん信頼しぬいているのかが問われる。最後の最後は、青年労働者の中に彼らのリーダーをつくることが勝負です。青年自身の中から旗を振る人が出てきた時、ワーッと決起が始まる。青年が反乱し、JR総連をガタガタにしたら外注化なんて絶対にできない。
吉野 問われているのは党の力です。革共同の09年の決定的勝利は、綱領草案を打ち立てたこと。これは「新しい綱領を作ったからこれに従え」というようなスターリン主義的なものではない。“プロレタリアートの存在と闘いの中にのみ勝利がある。党はプロレタリアートの存在と闘いの中にのみ存在するんだ”という綱領です。この綱領草案は、あらゆる体制内諸党派によるマルクス主義の歪曲を根底からぶっ飛ばしています。労働者階級が自らの欲求として党をつくっていくプロセスをつくり出すことです。労働者階級全体の未来をかけ、これを外注化阻止決戦の中でやりぬきましょう。