2010年2月 1日

海外のケース 民営・外注で重大事故続発

週刊『前進』08頁(2425号2面6)(2010/02/01)

海外のケース 民営・外注で重大事故続発

 イギリス 国鉄を百社に細分 “レールが砕け散った”

 民営化、外注化、子会社によって世界中で鉄道の安全が崩壊している。
 イギリス国鉄は1994年に分割・民営化された。信号や線路など施設管理はレールトラック社を親会社とし、傘下の多数の子会社が作業を行った。列車運行は大小25の旅客会社と貨物会社5社に、さらに車両リース会社は3分割され約百社の私企業に細分化された。
 その後、細分化された鉄道で次々と重大事故が起こる。97年9月ロンドン西部で脱線事故(死者7人)、99年10月にはロンドンのパディントン駅で列車衝突事故(死者31人)、00年10月にはロンドン郊外ハットフィールドで脱線事故(死者4人)が発生した。
 とりわけ00年のハットフィールド事故は、およそ信じられない事故だ。イギリスの新聞は事故の様子を「線路は列車の下で砕け、300の破片と化した」「事故の原因となった線路の破断は、事故の1年9カ月前に発見されていたが補修は行われず放置されていた」と報じた。
 レールトラック社はコスト削減のために、傘下の子会社社員を人材派遣会社に転籍させ、時間給で雇用する体制にしていた。線路の保守も最小限にしたので、施設の老朽化が急速に進行した。同社は、レールの保守・点検についての工学的知識もなく、全国でどれだけレール破断が起きているかも掌握していなかった。
 同社はその後、事故対策費の重圧から経営破綻し、国家管理に戻された。だが事故で奪われた命はけっして戻らない。

 ドイツ 使える車両は25% 整備費削り都市鉄道崩壊

 ベルリンの都市鉄道Sバーン(写真)が安全管理の崩壊から大規模な輸送混乱に陥っている。Sバーンは、東京で言えば山手線・中央線・総武線を併せたような都市近郊鉄道だ。これが、まともに走っていないという驚くべき状況だ。
 ベルリンのSバーンは、ドイツ国鉄の子会社がベルリン市と委託契約を結んで運営している。
 Sバーンは、6年も前から車輪の安全性に問題があると指摘されながら、点検を怠ってきた。その結果、昨年5月1日にベルリン市東部で脱線事故が発生。連邦政府が全車両1264台の点検を指示したところ、安全が確認されたのは340台だけ。さらにブレーキの故障も見つかり、一時は全車両の25%しか運行できない状態に陥った。同社は、以前から点検施設の閉鎖や人減らしなどを重ね、綱渡り的な経営を続けていた。
 背景にあるのは、ドイツ国鉄の民営化問題だ。ドイツ国鉄は、08年10月に株式上場を予定していたが、世界大恐慌に直撃されて延期。株式上場をめざして赤字解消、利益拡大を図る中で、子会社に圧力を加えていた。
 「輸送混乱の解消は2013年までかかる」とも言われ、ベルリン市は運行委託契約の見直しも検討している。