2010年3月 8日

〈焦点〉ギリシャ・EUで財政破綻 大恐慌は新段階へ

週刊『前進』06頁(2430号5面3)(2010/03/08)

〈焦点〉ギリシャ・EUで財政破綻
 大恐慌は新段階へと突入

 ギリシャ・EUの財政危機の噴出によって世界大恐慌は新しい段階に入った。08年のリーマン・ショック以降、全資本主義国が巨額の財政資金を投じて恐慌対策をとってきた。その結果、財政に全矛盾が集中し、”最後の支え”とも言うべき財政で崩壊しはじめたのだ。大恐慌は07年からまず金融面で始まり、08年には生産・雇用などの実体経済面に波及し、そして今や財政面という大きな第三の局面に入った。財政危機の世界的噴出は、大恐慌を本格化させるとともに、体制的危機を深めて革命的情勢を一段と成熟させる。
 昨年11月末のドバイ・ショックは、ドバイ政府・政府系会社が債務を返済できなくなり、しかも欧州の金融機関による大規模なドバイ融資が焦げつく恐れが出たことから、世界を揺るがした。ほぼ同時に、ドバイ以上に財政・対外債務が悪化しているEU諸国の信用が揺らぎはじめた。特にPIIGS(ポルトガル・イタリア・アイルランド・ギリシャ・スペイン)と呼ばれる5カ国だ。
 ギリシャは、財政赤字の対GDP比が13%と、EU基準の3%を大幅に上回る。政府債務残高の対GDP比も09年に113%(11年は135%の見込み)に達し、ギリシャ国債の価格は急落している。ギリシャ国債は4〜5月に大量償還を迎えるが、その資金繰りができなくなると債務不履行(デフォルト)に陥る。しかも、ギリシャはユーロ圏の銀行から多額の融資を受けている。フランスから6・8兆円、ドイツから3・9兆円。政府債務と対外債務が同時に返済不履行となる可能性がある。他の諸国も同じ構図だ。
 ギリシャはユーロ圏に入っているから、金利引き下げによる景気刺激策や、自国通貨の引き下げによる輸出拡大などの政策がとれない。だからギリシャが切羽詰まればユーロ圏から離脱することもありうる。しかし独・仏がギリシャを救済しなければユーロの権威は失墜し、逆に救済しても独・仏の負担増となるためユーロの信認が崩れる。いずれにしても、ユーロ自体とユーロ圏の金融が大動揺し、世界全体に波及する。
 このように財政危機・対外債務への不信がギリシャ一国やEUにとどまらず、世界的に連鎖して次々にデフォルトに陥りかねない。29年大恐慌の時にもない史上初めての事態だ。それは大恐慌と革命的情勢を急激に促進する。
 何よりも、すでにギリシャがそうなっているように、財政赤字削減のための労働者に対する増税と社会保障削減の攻撃が階級的矛盾をさらに爆発させる。世界中でこういう形で革命的情勢が一段と深まっていくのだ。
 また、財政破綻のもとでは一層の財政資金投入が困難となる。すでに日米など、この間の景気刺激策の効果が終わりつつある。景気の「2番底」は避けられない。
 さらに、国債への信用不安が世界的に連鎖し、今や世界で最も財政が悪化している日本の国債が暴落していく。その大損失を補うため日本の金融機関が米国債を売るしかなくなれば、米国債の暴落=ドル暴落にも転化していくのだ。
 今やそのドル暴落が切迫し、大恐慌が本格化しつつある。3・20闘争に勇躍決起していこう。