2010年4月26日

地域主権戦略会議 橋下提案を批判する

週刊『前進』06頁(2437号3面1)(2010/04/26)

道州制・公務員攻撃粉砕へ
 地域主権戦略会議 橋下提案を批判する
 崩壊寸前の国家財政危機で絶望的突破狙う鳩山・橋下

 大恐慌下の財政危機の爆発と帝国主義間争闘戦の敗北、労働者反乱の危機に直面する民主党・連合政権は、帝国主義としての生き残りをかけて、道州制=改憲・戦争と民営化・外注化・労組破壊の新自由主義攻撃に絶望的に突進している。橋下徹大阪府知事が主導する政府の地域主権戦略会議は、公務員制度改革・公務員労組解体を道州制の最大の突破口と位置づけた。国鉄を基軸に職場生産点での反合・運転保安闘争の実践をもって闘いぬく歴史的決戦が始まった。

 「新しい公共」を掲げた労組破壊・地方政府構想

 政府の地域主権戦略会議で、橋下徹大阪府知事は財政危機とアジアにおける国家間争闘戦敗北の危機をあおり、その絶望的突破をかけて道州制導入にむけた地方政府基本法構想をぶち上げた。その最大の「プロセス」として人事評価制度の法制化を環とする地方公務員法改悪・公務員制度解体を激しく主張している。それは「新しい公共」と称する公務員360万人の首切り、外注化・非正規職化=労組破壊攻撃と一体である。
 大恐慌は全世界で財政危機の爆発と労働者階級の反乱、帝国主義間争闘戦の激化と世界戦争情勢の深まりという重大局面に突入した。東京新聞社説(4月17日)は「公務員制度や行政改革を怠り増税を先送りした結末はギリシャに先例がある。財政危機に陥ってから手をつけようとしたら今度はゼネストの反乱に遭った。まず政権が官僚の抵抗をはねのけ公務員制度・行政改革を断行せよ。そのうえで必要なら増税を行え」と言い放った。今や道州制・公務員攻撃は、日帝政治危機下で混迷を深める政府・与野党、分岐・乱立するブルジョア「新党」の共通のスローガンともなった。
 大恐慌と大失業、戦争と革命の時代の攻防の核心は、労働組合絶滅攻撃との闘いだ。社会保険庁解体だけではない。すでに自治体業務の3〜4割に達している民営化・外注化・非正規職化の進行は、いたるところで労働条件の劣悪化と業務破綻をもたらし、正規・非正規の現場労働者に耐えがたい犠牲を強いている。職場に怒りは満ちている。国鉄決戦勝利の全国大運動を猛然と進めよう。人事評価制度粉砕の闘いをはじめ職場生産点で反合理化・運転保安闘争路線をもって闘い、体制内労働組合指導部をぶっ飛ばして、ギリシャのような現場労働者の総反乱を切り開こう。
 以下、橋下提案の核心点を取り上げ、徹底的に批判する。
 橋下提案は、日本帝国主義の絶望的な攻撃の方向性を示している。しかし、その橋下大阪府政自体がすでに大破産に直面している。

 大恐慌下で「アジアに打って出る」道州制攻撃

 府庁舎移転、関西3空港統合、水道事業統合をはじめ、橋下構想は音を立てて崩れている。失業率は全国最悪で、会計データ改竄(かいざん)にもかかわらず財政赤字累積が表面化している。この現実を前に橋下は「地方でやれることには限りがある」などと泣き言を垂れた。
 そのとおりだ。資本主義そのものの破綻が問題となっているのだ。「公務員が働かないから財政危機になり、大阪の経済も再生しない」などとする公務員攻撃は問題のすり替えである。こんなものは体制内労組指導部の屈服と協力抜きにはおよそ通用しない。青年労働者を先頭とする職場生産点からの反撃で必ず粉砕できる。
 橋下提案は第一に、日本帝国主義の没落からの突破をかけて、「アジアに打って出る」という位置付けで道州制導入を叫んでいる。
 3月3日付の提案文書「地域主権時代の”新しい国のかたち”」では「一人当たりGDP順位は大幅に低下し、明治以来の中央集権の仕組みは限界だ」「成長著しいアジアの都市・地域との競争に打ち勝てない」と危機感をあらわにし、道州制をもって「アジアに打って出る、外から稼ぐ戦略が不可欠だ」と打ち出した。道州制による徹底した民営化・規制撤廃・労組破壊をテコにして、空港・港湾物流や金融業、IT産業、製造業などでの中国や韓国、アメリカとの資本間・国家間の争闘戦に打ち勝ち、外から稼ぐ、すなわち新たな侵略に打って出ると公言しているのだ。

 「自己責任」の社会保障解体・増税と地方独裁

 橋下提案は第二に、財政破綻の責任を地方に押し付け、「地方政府」のもとでの大増税と借金漬け、医療・福祉・社会保障制度解体に道を開こうとしている。
 橋下は、「財政赤字が拡大するなか、全国均一のバラマキを続けることは困難」「権限と財源と責任の一致で、地方も責任を負う覚悟が必要」と新自由主義むき出しの自己責任論を展開する。原口総務相も「間違ったリーダーを選んだ地域はツケがくる」と唱和した。「住民の責任」を掲げて「夕張」型の住民からの暴力的な収奪を全国で進めるということだ。
 「『地方政府基本法』の制定に向けて」(1月)では「地方自治の理念の再構築」と称して、「自治体に関するあらゆる法律を対象にして、国、地方のかたちを根本から作り直す」としている。道州制をうたうその全内容は改憲そのものである。
 「地方自治」ならざる「地方政府」の「自由と責任に基づく完全な課税自主権と起債自主権」のもとで、財政破綻した場合の「地方政府再生法」まで打ち出し、「借金の痛みを実感し、地方は自分で稼げ」と言う。NTTの株売却を例に、公営企業のほとんどを株式会社化し、株売却収入による借金の削減まで提案している。公営企業とその資産を投げ売りし、利潤追求の手段にするというもので、人民の資産に飢えた狼のように資本が群がり、食い散らかし、投げ捨てることとなる。
 現に政府の成長戦略会議では、伊丹空港を民間に売却し、その収入で関西空港の1兆円超の債務削減に充て、採算がとれなければ伊丹空港の廃港もありうるとした。自らがもうかればすべて良し。マルクス『資本論』の描く「我が亡きあとに洪水よ来たれ」の腐りきった世界そのものである。
 さらに「自主立法権」では「地域の実情に即して法令を自由に変更できる権利(上書き権)」をうたっている。際限のない規制撤廃だ。労働者保護法制や医療・福祉・保育・社会保障基準の解体が狙いだ。「議会内閣制」への転換と称し、地方自治法や地方公務員法が定める「地方議会議員の地方公共団体常勤職員との兼職禁止や特別職公務員の任命制限の廃止」「教育委員会制度改革」の提案も入った。首長による独裁と私物化の留め金を外し、新たな汚職の巣窟(そうくつ)と化すことも必至だ。今、鹿児島県阿久根市で起こっている違法不法でたらめな市長独裁が全国化するということである。

 公務員法の改悪で終身雇用の解体と労組絶滅

 橋下提案は第三に、以上すべての突破口として人事評価と賃金の直結による年功賃金制の解体、首長による恣意(しい)的な降任・解雇の自由による終身雇用制の解体、全労働者の9割の非正規化に行き着く地方公務員法改悪を主張する。公務員労働者に対する分断と労働組合破壊こそ橋下提案の最大の核心である。
 公務員の「強すぎる身分保障」を問題とし、「民間を含めた社会相場に応じた対応ができない公務員は特権階級」と言いつのる。「地方公務員法等の改正の検討にあたって」(3月)では、「能力・実績主義による人事評価制度は人事管理の基礎」「評価を給与に反映させ、総人件費をコントロールする仕組みを法律で明記すべき」と主張。「公務エリアが開かれた労働市場となるよう任用制度の弾力化、官民の人材流動化」を掲げ、鳩山の「新しい公共」と重なる公務員労働者の限りないゼロ化、丸ごと民営化・外注化・非正規化、労働者の分断と団結破壊に突き進もうとしている。これが民主党・連合政権の公式の方針になろうとしているのだ。

 反合保安闘争路線で反乱を

 しかし国鉄1047名闘争に続く社保労働者の解雇撤回闘争は日本年金機構内の闘いと結合して前進している。激しい賃下げと分断をもたらす人事評価制度や賃金表改悪に対する怒りが高まり、青年労働者、現業労働者を先頭に体制内指導部の屈服をのりこえる絶対反対の闘いが全国で広がっている。人員削減、外注化・非正規化、労働強化によって業務の破綻と事故・病気が続発・蔓延(まんえん)する職場の現状に、現場の闘いは爆発寸前だ。「ブルジョアジーのための財政再建なんてくそくらえ!」——公務員労働者の反乱やデモは全世界で広がっている。「財政再建」を旗印に当局・資本と一体となって団結と闘いを押しつぶす自治労本部・自治労連本部をぶっ飛ばそう。泉佐野市の「財政健全化計画」と闘うこくが祥司議員の7選必勝を! 国鉄決戦を基軸に反合理化・運転保安闘争路線で闘いぬき、民主党・連合政権打倒、道州制粉砕・橋下打倒を実現しよう。
 (大迫達志)