2010年5月 3日

加州教育ゼネストと全学連訪米 日米学生運動が団結

週刊『前進』10頁(2438号5面3)(2010/05/03)

加州教育ゼネストと全学連訪米
 日米学生運動が国際的団結 新たな階級指導部の建設へ

 3月4日、全学連訪米団はカリフォルニア大学(UC)バークレー校のストライキに合流し、日米学生の固い団結と友情をつくり出した。教育ゼネストと国鉄闘争・法大闘争は、大恐慌下で新自由主義攻撃と真正面から対決する闘いだ。世界革命への確信がここから生み出されている。

 体制内指導部の抑圧打破し解放的なデモ

 世界大恐慌は資本主義に固有の矛盾の歴史的爆発であり、政府・自治体の財政破綻は、それをのりきろうとした国家の破産の現れである。最末期資本主義が崩壊の危機に瀕(ひん)しているのだ。だから労働者階級にとって絶好のチャンスが到来している。
 大恐慌と財政破綻は、直接には大失業、社会保障・教育・医療の大削減が労働者の生活を直撃する。そして政府・マスコミの大宣伝が労働者に襲いかかる。「この未曽有の経済危機の時に痛みを分かち合わないのは労働組合が特権意識を持っているからだ」
 労働運動の体制内指導部は、こうした支配階級の攻撃と一体になって労働者の闘いを抑圧する。「こんな時代にストライキをするのは非常識だ」「ここで譲歩しないと社会的に孤立する」
 この典型が2008年9月からのゼネラルモーターズ(GM)、クライスラーの破産過程だ。UAW(全米自動車労組)指導部は、オバマとマスコミの「GM労働者の医療保険がトヨタより高いからGMが経営危機に陥ったのだ」との宣伝を受けて、組合員を抑え込み、医療、年金、賃金などの大幅カットに同意し、大量解雇さえ受け入れた。そして全社会的な重圧の中でランク&ファイルもそれを跳ね返しきれなかった。
 だが、カリフォルニア教育闘争の爆発は、この重苦しい雰囲気を一変させた。
 昨年9月24日、カリフォルニア大学の多くの学生が学内労働組合のストのピケットラインをともに担った。学生と労働者が大衆的な規模で完全に合流したのは初めてのことだ。「学生は労働者階級の一員だ」という自覚が大衆的になった。
 もともとマスコミにつくられたイメージにすぎなかった「社会的孤立」なる恫喝は一蹴された。そして階級性に徹することで、「州が財政危機だから譲歩せよ」という体制内指導部の抑圧方針は吹き飛ばされた。
 「首を切るならトップの首を切れ!」「低賃金労働者には賃下げや解雇、超高給の大学理事にはボーナス倍増なんて、許せるか!」「財源がないといっても、巨額の軍事費、刑務所費が急増し巨額化している」「授業料値上げ反対だけじゃ不十分。授業料を無料にしろ!」
 このように言い切り、正面から闘いぬいた途端、圧倒的な数の学生、労働者が闘いに結集し、解放感のあふれる集会、デモ、実力闘争が実現した(ぜひ全学連の訪米報告パンフ、訪米ビデオを見てほしい)。この解放感を訪米団は全身で吸収し、学んできた。すでにその成果は法大4・23闘争で発揮されている。

 市職全員解雇の市長を推薦する労組幹部

 3月4日のカリフォルニア州教育ゼネスト・一日行動のスケジュールは、2009年10月24日にカリフォルニア大学バークレー校での「動員会議」で決定された。
 この会議は、9月24日の大学ストライキを最先頭で戦闘的に闘い、1964年のフリースピーチ運動以来の大結集をかちとったバークレー校の活動家たちのイニシアティブで招集された。これにUTLA(ロサンゼルス統一教組)が賛同した。UTLAは、2008年6月の1時間ストで同州の最先頭で教育予算削減反対の闘いを切り開き、さらに09年には万を超える巨大デモや実力座り込み、3週間ハンストなどで大量解雇攻撃に反撃してきた。このバークレー校とUTLAの闘う勢力としての権威によって、大学から高校・幼稚園までの全教育機関の労働者・学生・生徒の結集が可能となったのだ。
 また、バークレー校などの戦闘的・革命的活動家の側は、こうした既成勢力を引き込むための譲歩をしている。3月4日を「ストライキの日」ではなく、「ストライキと一日行動」とした。
 10月24日の会議とその3・4闘争決議には、CTA(カリフォルニア教員協会)、CFT(カリフォルニア教員連盟)という二つの全米教組の州本部が賛同した。またナショナルセンターAFL−CIO(米労働総同盟—産別会議)のカリフォルニア州連盟やサンフランシスコ労組評議会なども賛同した。体制内労組指導部も、賛同しなければ組合員を抑えきれない恐怖を感じたのだ。
 こうして各地のCTA系の教組、CFT系の教組、そしてスクールバス、給食、清掃などの他の学校関係の諸労組も、指導部からの統制なしにランク&ファイルが学校まるごと動員する自由が獲得され、全州100万人の動員が実現したのだ。
 したがって、3月4日の闘いは、きわめて広範な統一戦線であり、同時に非常に激しい党派闘争の過程であった。
 体制内指導部は、その中の「左派」も含めて、3月4日が近づくにつれて、一般組合員の闘いの盛り上がりに恐怖し、これまでになく反動化していった。
 前日の3月3日、サンフランシスコ市の職員1万7千人いったん全員解雇方針が報道された。「ニューサム市長が解雇通告を出すと発表。解雇した上で、賃下げなどの新たな条件で再雇用。再雇用されるのは全員ではない」
 だが、3月4日のサンフランシスコの1万人集会では、体制内指導部は誰も、この解雇攻撃に一言も触れなかった。この集会が当の市庁前で行われたにもかかわらず。
 市職の最大組合であるSEIUローカル1021(国際サービス従業員労組第1021支部)は、最近の執行部選挙で「左派」が勝利していた。だが、この新執行部も組合員の「デモをやろう」という要求を抑えつけ、当局との密室交渉にすりかえた。
 しかも、4月11日、サンフランシスコ労組評議会は、この秋の州知事選のための民主党内での候補選びに向けて、「ニューサム市長を副知事候補に推薦する」という決議を上げた。
 組合員を全員解雇する市長を推薦したのだ!
 これが共和党の州知事候補に勝つ道なのだという。二大政党制は労働者の闘いを抑え、労働運動を死に追い込む支配階級と体制内勢力の道具だ。
 闘う勢力は、こうした裏切り指導部を打倒し、新たな階級的指導部を形成しようとしている。実際、バークレー市の北隣のリッチモンド市では、医療給付・年金カット、人員削減に応じた旧指導部がこの4月にリコールされた。

 全学連の時代認識が米学生を激励した

 バークレー校の活動家たちは、この体制内勢力の裏切りと格闘していた。大量の組合員がこうした指導部をのりこえた行動に立ち上がり、指導部はうろたえている。しかし、まだ彼らは打倒されておらず、二大政党制を武器にして労働者の闘いを議会主義的に歪曲し、抑圧している。
 この中で、原則を貫いて戦争と民営化=労組破壊と闘う動労千葉労働運動、法大学生運動との結合が彼らに圧倒的な確信を生み出し、組織化の武器となった。80年代の三つの世界史的な新自由主義攻撃——アメリカのPATCO(連邦航空管制官組合)破壊、イギリスの炭鉱労組破壊、日本の国鉄分割・民営化——のうち、国鉄闘争だけが今も大規模に継続し、その基軸を動労千葉が担っているからだ。
 だから、全学連が訪米する前から、バークレー校の活動家たちは「カリフォルニア教育闘争の相手は新自由主義だから、グローバルな闘いを」「国際連帯でこそ勝利する」と強調し、法大弾圧に抗議する日本領事館闘争を組織した。実際、その国際連帯を武器にして新たに活動家の結集がかちとられたのだ。
 非常に重要なことは、全学連が現在の大恐慌を「30年代をはるかに超える歴史上類例のない恐慌」ととらえ、現代を最末期資本主義の時代ととらえて、確固としてプロレタリア社会主義革命に向かっていることだ。だから、大恐慌の震源地アメリカの労働者・学生の闘う意欲に最もフィットした。また体制内勢力と闘うランク&ファイルへの大きな激励となった。
 特に安保・沖縄闘争は直接に日米の労働者階級の団結のテーマである。
 日本の民主党・連合政権は、大恐慌下、アメリカ帝国主義との争闘戦が激化する中で、むきだしの対米対抗への衝動を高めつつも、今日の力関係の中では日米安保体制を維持・強化せざるをえない。そして、沖縄の労働者人民の怒りの決起、本土の労働者階級の決起との団結を、もはや抑えられず、存亡の危機に陥っている。
 米帝オバマ政権は、軍・戦争の野放図な民営化・外注化のために、ベトナム戦争時以上に軍の崩壊的危機を深め、戦争の長期化・泥沼化にあえいでいる。沖縄と本土を貫く「米軍基地撤去=沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」の闘いは、この米帝の体制の根幹を揺るがすものであり、アメリカ階級闘争と直接リンクしている。日米労働者が団結すれば世界革命は実現できる。
 (村上和幸)