2010年5月17日

ギリシャ 官民2大労組がゼネスト

週刊『前進』06頁(2439号4面2)(2010/05/17)

ギリシャ 官民2大労組がゼネスト
 アテネ市で15万人デモ 労働者が権力とる革命情勢

●2月以来6波の大スト
 財政破綻のギリシャでは、全世界を揺るがす労働者のゼネスト、デモが連続的に闘われている。
 パパンドレウ・全ギリシャ社会主義運動(PASOK)政権は財政再建策として公務員の賃金カット、年金受給額の削減、大増税を打ち出した。GDP比13・6%もの単年度の財政赤字をかかえるギリシャは、EUとIMF(国際通貨基金)から1100億ユーロ(約13兆円)の融資を受ける条件として今後3年間で約300億ユーロ(3・6兆円)の財政赤字の削減を約束した。財政破綻のつけを労働者に押しつけようというのだ。
 5月5日のスト前日、公務員労組委員長パパスピロスは「ギリシャが債務を返済できなくなる状態にしてはならない」と、政府やEU、IMFへ忠誠を誓った。だがこのような指導部の裏切りを乗り越え、ゼネスト、デモが2月以来すでに6波という空前の規模と激しさで行われている。
 4月22日には公務員労働組合が24時間ストに突入。26日、空軍パイロット100人以上が訓練飛行をキャンセル。軍隊にはスト権がないため「病欠」を理由にした事実上のストだ。29日、約500人が財務省に突入しようと警察隊と激突。5月1日、アテネで数万人がデモ。メーデーとしては「過去最大規模」(国営テレビ)だ。3日、国公立学校教員約20人が国営テレビ局を一時占拠。教育相のインタビュー番組を中断させ、「1万7千人の非常勤教員の解雇に抗議する」と番組で訴えた。4日は公務員労組「ギリシャ公務員連合」(75万人)が48時間ストに突入した。
 そして5日、官民の2大労組の呼びかけで、公・民労働者が一体となった24時間全国ゼネストが爆発した。過去最大規模の100万人以上の参加だ。都市機能は完全に停止した。鉄道、バス、フェリー、飛行機は止まり、病院は急診部門以外は休止。学校は休校となり、放送労働者のスト決起でニュースは配信停止になった。
 アテネ市内では15万人以上がデモ、「政府は、こそ泥と同じだ」と国会議事堂前の広場に押し寄せた。街頭では警官隊と激突。銀行の建物も炎上し行員3人が死亡した。政府は「殺人だ」とデモ隊を非難したが、銀行職員労組は「行員が犠牲になったのは政府の責任」と24時間抗議ストに決起。また緊縮財政法案可決に抗議し議会周辺に1万人以上が結集した。
●賃下げ、解雇、大増税
 ギリシャの労働者は緊縮財政策に絶対反対だ。官民とも労働者の生活は苦しい。平均月収は1千ユーロ(約12万円)。他のEU諸国の6割程度の水準だ。非常勤教員は月450ユーロ(約5万5千円)の超低賃金である。
 だが政府は、公務員の3年間の昇給や新規採用の凍結、賞与の廃止や年金受給額約30%の削減、付加価値税(消費税)を21%から23%にまで引き上げるつもりだ。さらに国の外郭団体の廃止による1万人以上の解雇や国鉄の民営化を狙う。
 IMFやEUの管理下で、新自由主義攻撃は一層激化する。無料の学費、格安の医療費といった社会保障の解体や病院の民営化も必至だ。
 労働者の間には「なぜ豊かでないわれわれが犠牲を払わなければならないんだ」「IMF管理は、大量失業につながる」と不満が満ちている。国家財政破綻の危機をゼネストで迎え撃つことは、本質的にプロレタリア革命にいきつく決起である。
 世界大恐慌は現在、各国政府の財政危機として進展し、赤字削減のための攻撃が大失業、大増税として労働者に襲いかかっている。ギリシャをはじめ全世界で階級的激突が爆発し、支配体制の崩壊が始まっている。
 ギリシャ危機は、ポルトガルやスペインにも波及し、ユーロ危機に発展しようとしている。ゼネストは、政治危機を促進すると同時に大恐慌を激化させている。
 ギリシャは完全に革命情勢である。労働者が権力をとる以外に、いかなる出口もない。革命的指導部こそが求められている。ギリシャの労働者と連帯して闘おう。