京浜東北線 川崎駅事故 丸投げ外注化が元凶

週刊『前進』08頁(2622号02面03)(2014/03/03)


京浜東北線川崎駅事故 丸投げ外注化が元凶
労働者への責任転嫁許すな


 2月23日午前1時過ぎ、JR東日本の京浜東北線・川崎駅構内で回送電車と作業用車両(軌陸車)が衝突し、回送電車の2両が脱線・転覆する大事故が起きた。回送電車の運転士と車掌は負傷したが偶然にも軽傷で、軌陸車のオペレーターは待避して事なきをえた。だが、衝突・脱線・転覆の大事故であり、回送電車でなければ107人の死者を出した05年の尼崎事故のような大惨事となりかねなかった。
 安全の崩壊はJR北海道だけのことではない。JR東日本を始めJR全社で、同様の事態が爆発的に噴出し始めたのだ。
 JR東日本では、99年2月に品川区の山手貨物線で、線路内作業中の労働者5人が臨時の回送列車にはねられ死亡する事故が起きている。
 今回の事故は、最終の回送列車が通過する前に本線に作業用車両を入れたことが衝突につながったが、危険な線路内作業を外注化してきたJRの施策こそが、事故の根本的な原因だ。
 回送電車と衝突した作業用車両は、川崎駅の改修工事のために投入されたものだが、この工事はJRが鉄建・大林組JV(ジョイント・ベンチャー)に丸投げ委託していた。明らかになっているだけでも、工事にかかわる業務は6社に分割されていた(表参照)。
 この工事の重機搬入時の安全確認は「①線閉責任者、②現場管理者、工事管理者、③重機安全指揮者、④重機オペレーター」という手順で行われることになっていたと言われる。その全員が別会社所属だ。JR東日本鉄道事業本部長の柳下尚道常務は「作業員の間で手違いがあった」と現場に責任をなすりつけるが、顔も知らない者同士で安全の確認などできるはずがない。外注化と重層的な下請け構造が、事故の根本にあるものだ。
 業務を丸投げ外注化したJRは、事故が起きても責任は取らない。事故にかかわった外注先会社を指名停止にして終わりだ。それどころかJR東日本は、山手貨物線事故後、〝安全管理に関する内容については下請け会社に指示をするな〟という社内文書まで出していた。事故の責任を逃れ、偽装請負と指摘されることを避けるためだ。
 だが、鉄道の安全は業務が一元的に管理されていて初めて確保できる。鉄道業務を切り分けて外注化すること自体、どんなにごまかそうが偽装請負にほかならないし、それこそが安全の崩壊をもたらすのだ。今回の事故も、本線の運行状況と密に連絡を取りながら作業が行われれば、起きることはなかったはずだ。
外注化容認する東労組カクマル
 JR総連・東労組がこの事故を受けて出した声明には、JR資本への批判・弾劾の言葉は一言もない。ただ「責任追及から原因究明へ」を空叫びしているだけだ。東労組カクマルは「徹底した原因究明」と言いながら、事故の根本にある外注化には絶対に言及しない。
 国鉄分割・民営化に賛成し、JRの合理化・外注化のすべてを率先推進してきたカクマルの言う「原因究明」とは、結局は現場労働者に責任をなすりつけることなのだ。東労組東京地本が出した声明に至っては、「自らの職務に集中し、基本に徹しろ」と資本に成り代わって叫んでいる。労働者が規程を守らないから事故が起きるというのがカクマルの言い分だ。こうして彼らは外注化を容認し、労働者を処分や刑事罰にさらして恥じないのだ。
 その対極で動労千葉は「事故の全責任は資本にある」と言い切って反合理化・運転保安闘争を闘ってきた。労働者が命を全うするためには、こうした闘いが必要だ。
 動労千葉の外注化・非正規職化阻止の闘いは、組織拡大として実を結んでいる。特に青年の怒りは深い。この怒りと結合し、腐った既成労組幹部を打倒してすべての職場から命を守る闘いを巻き起こそう。正規も非正規も団結して外注化と闘い、安全を崩壊させた国鉄分割・民営化体制を根底から打ち破ろう。
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【表 業務は数社に分断されていた】
発注者     JR東日本横浜支社
請負業者    鉄建・大林組JV
 工事管理者  鉄建建設
 同(保安担当) 大林組
線路閉鎖責任者 鉄建興産
重機安全指揮者 S警備
列車見張員   S警備
軌陸車運転士  E機工

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