焦点 集団的自衛権反対に焦る安倍 砂川判決は論拠にならない

発行日:

週刊『前進』06頁(2629号05面03)(2014/04/21)


焦点
 集団的自衛権反対に焦る安倍
 砂川判決は論拠にならない


 この間、安倍政権は、集団的自衛権の行使を容認する「論拠」と称して、1959年の最高裁の「砂川判決」を持ち出している。先月31日、自民党の安全保障法整備推進本部の初会合の場で、党副総裁・高村正彦は同判決の中から「わが国の存立のために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然」とした一文を引用して、「最高裁は個別的と集団的とを区別せず、必要最小限度の自衛権の行使を認めている」と強弁した。
 この間、集団的自衛権の行使容認をめぐっては、朝日新聞の全国郵送世論調査で「反対」が63%に達し(昨年は56%)、「賛成」の29%を大きく上回った。特に20代男性は「反対」が77%に達するなど、改憲・戦争への危機感が安倍に対する怒りとあいまって、青年層を中心に急速に高まっている。今や支配階級内部にも動揺が広がり、公明党ばかりか自民党内からも異論が出始める中で、安倍や高村らは窮余の一策として砂川判決を持ち出し、なんとか与党内の意見集約をはかろうと必死になっているのだ。
 だが砂川判決は、後述するようにそれ自身がまったく不正かつ違法な手段で下された政治的反動判決であり、到底、集団的自衛権の行使を正当化する論拠とはなりえない。そもそも砂川裁判では、集団的自衛権など一切問題とされておらず、同判決でそれが認められたとする解釈は法学的にも皆無である。

●不正な手段による反動判決

 砂川事件とは、57年に当時の東京都砂川町にあった米軍立川基地の拡張阻止闘争(砂川闘争)で、基地内に突入した全学連の学生や労働者など計7人が「日米安保条約に基づく刑事特別法」違反で逮捕・起訴された事件である。東京地裁・伊達秋雄裁判長は59年3月30日、「米軍の日本駐留は憲法9条違反」「米軍の駐留を認めたことに伴う刑事特別法は違憲である」として、被告全員を無罪とする画期的判決を下した。今日、安倍らが依拠しようとする砂川判決とは、この伊達判決を覆すために、米日帝の権力中枢の意を受けた当時の最高裁長官・田中耕太郎が同年12月16日に下した不当判決(一審判決破棄・差し戻し)のことである。
 2008年と13年に機密解除された米公文書によると、当時の駐日米大使マッカーサー二世は、伊達判決の翌日、直ちに藤山外相と密会して異例の跳躍上告(高裁を飛ばして最高裁に持ち込むこと)を促した。また田中裁判長とも密会して上告審の見通しを聞き出し、早期に地裁判決を破棄するよう求めた。
 田中は自他ともに認める猛烈な反共主義者であり、米占領軍によるレッドパージに際しては、労働者の大量解雇を合法とする反動判決を最高裁長官の立場で推進した人物である。砂川裁判でも、田中は裁判所法75条「評議の秘密」に反して米大使館に情報を提供し、憲法76条「司法の独立」に反して米政府と謀議を繰り返した。
 このように砂川判決とは、労働者人民にとって絶対に許すことのできない極悪の反動裁判官である田中が、米日帝の国家権力中枢との綿密な意思一致のもと、きわめて不正で違法な手段によって下した政治的判決であり、まったくの不当判決である。これに対し、労働者人民は怒りを倍加して立ち上がり、翌60年には安保闘争が空前の規模で爆発した。さらに砂川闘争はその後、70年安保・沖縄闘争と一体でますます非妥協的かつ不屈に闘い抜かれ、最終的に立川基地の撤去という歴史的勝利に至った。

●安倍の対米対抗性と絶望性

 田中判決は、団結した労働者人民の闘いによって根底的に粉砕され、その不当性と破綻ぶりも今や明らかとなっている代物だ。こんなものを今さら引っ張り出して依拠するしかないところに、日帝・安倍の危機と破綻が露呈しているのだ。
 集団的自衛権をめぐる安倍政権の策動の背景にあるのは、今日の世界大恐慌下の帝国主義間・大国間争闘戦が、ついにむき出しの軍事衝突へと転化しつつあることだ。この中で安倍は対米対抗性をあらわにしながら、絶望的に戦争へ突き進む以外になくなっている。今こそ階級的労働運動の拠点建設と国際連帯の発展で安倍を打倒しよう。

このエントリーをはてなブックマークに追加