崩壊するJR体制① 全面的な外注化攻撃の出発点 鉄道会社のあり方転換させた「ニューフロンティア21」計画 JR総連カクマルが最先兵に

週刊『前進』06頁(2631号02面04)(2014/05/12)


崩壊するJR体制①
 全面的な外注化攻撃の出発点
 鉄道会社のあり方転換させた「ニューフロンティア21」計画
 JR総連カクマルが最先兵に


 革共同は『前進』春季特別号で「JR体制打倒し革命勝利へ」の大方針を打ち出した。国鉄分割・民営化以来の動労千葉を先頭とする闘いは、JR体制を崩壊の瀬戸際に追い込んでいる。JR体制打倒の革命的意義とその展望を、本シリーズで明らかにしたい。(編集局)

大事故続発は外注化の結果

 JR北海道での事故続発やJR東日本・川崎駅事故は、「JR崩壊」というべき現実をまざまざと示した。今や尼崎事故と背中合わせの事態がすべてのJRで蔓延(まんえん)している。
 12年度の営業距離100万㌔あたりの部内原因による輸送障害発生件数は、大手私鉄と比べJR東日本は10倍、JR北海道は28倍にもなった。その根源にあるのは外注化だ。
 外注化は、韓国のセウォル号沈没事故やソウル地下鉄事故、ニューヨーク地下鉄事故など、全世界で安全の崩壊をもたらしている。外注化粉砕・非正規職撤廃闘争こそ、新自由主義を粉砕し革命を切り開く闘いだ。国鉄闘争全国運動の6・8全国集会に総結集し、国鉄解雇撤回・JR体制打倒ののろしを上げよう。
 JR東日本の外注化は、00年11月に打ち出された中期業務計画「ニューフロンティア21」(NF21)で一気に加速した。NF21の「事業戦略」の項では鉄道事業は3番目に位置づけられ、「ステーションルネッサンス(駅空間の経営資源化)」を象徴とする営利優先の戦略が打ち出された。それは、鉄道会社のあり方を根本的に変える計画だった。メンテナンス費用の縮減と、05年度末までに1万人を削減し6万5千人体制とすることが数値目標化され、安全はことごとく切り捨てられた。

丸投げ外注化進めた東労組

 NF21提示から5〜6年のうちに、JR東日本の人件費は850億円も削られ、対極で経常利益は1000億円以上も跳ね上がった。そして、安全の崩壊は深く全面的に進行した。
 NF21の発表に先立つ00年9月、JR東日本は二つの外注化策を提示した。「グループ会社と一体となった業務体制の構築(運輸車両関係)」と「設備部門におけるメンテナンス体制の再構築」(「設備21」)だ。
 「グループ会社と一体となった業務体制の構築(運輸車両関係)」は、すべての工場、運転区を対象に車両検修業務の大幅な外注化を狙うものだった。それは、車両検査周期の延伸や実施基準の改定を各鉄道事業者の裁量に委ねる01年12月実施の国交省令改定と一体だった。新自由主義下の規制緩和が国家戦略として進められたのだ。
 「設備21」は、設備部門(保線、土木、建築、機械、電力、信号通信)の全面外注化を打ち出した。00年段階で設備部門の直轄業務は全業務の約30%程度まで削られていた。その約半分をさらに外注化するというのだ。JR東日本は「JR本体は設備管理の技術者集団、パートナー会社は施工に関する技術者集団に専門特化」するとして、保線の検査業務や機械グループ業務などを外注化した。その結果3300人が削減され、そのうち2500人が外注会社に出向となった。
 こうした丸投げ外注化は、JRから技術力を奪っただけではなく、外注先労働者の労災死亡事故の多発という痛ましい現実をもたらした。分割・民営化以降、JR東日本だけでも154人の下請け・孫請け労働者の命が奪われている。その一切の責任はJRにある。
 これらの攻撃をJR総連・東労組は率先推進した。東労組は「必要な効率化は進める」との立場を鮮明にし、外注化施策を策定から実施に至るまで主導的に進めた。東労組カクマルは新自由主義攻撃と一体化することで延命を策したのだ。
 01年3月と6月、東労組は上記二つの外注化施策をそれぞれ単独で妥結した。「設備21」妥結に際しては三つの「覚書」を会社と秘密裏に締結した。ひとつは「グループ会社と一体となった業務遂行体制の確立に関する覚書」だ。これは検修全面外注化を確認した文書である。
 もう一つは「21世紀における人事・要員関係施策として当面取り組むべき課題に関する覚書」だ。そこには「余力人員対策として、引続きグループ会社等への出向を推進する」とした上で、「『駅→車掌→運転士』というライフサイクルについても深度化を含め検討する」と書かれていた。06年10月にJR東日本が提示した「ライフサイクル」の内容が先取りされていたのだ。
 三つ目は「21世紀における効率化の実施に関する覚書」で、NF21が掲げた1万人削減の確実な達成が明記された。
 外注化は東労組カクマルの裏切りによって強行されてきたのだ。

結託体制清算に向かうJR

 しかし、資本とカクマルの結託体制は、安全崩壊とともに決定的な破綻を迎えている。今やJR資本はカクマルとの結託体制の清算を最後的に決断し、彼らが「拠点」としてきた運転職場からカクマルを排除する施策に乗り出している。これが外注化を推進してきたカクマルの末路だ。
 外注化により、事故が起きてもJRは責任を取らない体制がつくられてきた。JR北海道では検査データ改ざんの責任が青年労働者に負わされ、懲戒解雇された。この現実をもたらしたのはJR総連カクマルだ。
 だが、これに対しJRの中から青年労働者が怒りをたぎらせ立ち上がる情勢が訪れている。労働組合が団結して立ち向かえば外注化は粉砕できる。動労千葉は、反合・運転保安闘争路線を貫き、12年にわたり外注化を阻んできた。検修業務外注化の強行後も、外注先の職場に労働者の団結をつくり、JRと外注先の双方から外注化を覆す新たな闘いに入っている。これに続き、新10万筆署名を徹底推進してJR体制を打倒しよう。
(矢剣 智)
このエントリーをはてなブックマークに追加