リニア中央新幹線は究極の安全無視・自然破壊だ

週刊『前進』08頁(2634号05面04)(2014/06/02)


リニア中央新幹線は究極の安全無視・自然破壊だ

安倍と葛西がタッグ組み推進

 『週刊東洋経済』が5月31日号で「リニア革命」特集を組み、「今世紀最大のプロジェクト」「安倍―葛西のタッグは健在」「13年度は(公式面会だけで)13回面会」と書いています。
 ではリニア中央新幹線とはいったい何か?
 それは第一に、危機にあえぐ日帝の成長戦略=原発と鉄道・武器輸出そのものであり、リニアとの闘いは、国鉄決戦を軸とする2010年代中期階級決戦と一体です。
 東京―大阪間リニア開発9兆円余という巨大利権に資本家が群がっています。しかも建設想定費は20年間で3倍にふくれ、今後さらに巨額になっていきます。間違いなく建設費用増と税金投入、賃下げと、資本の食い物になります。
 JR東海名誉会長の葛西敬之は「高速鉄道の国際標準に」(読売新聞4・20付)と言いますが、何の展望もありません。「(アメリカへの輸出資金約1兆円のうち日本側が)5千億円規模の融資も検討しているものの、リニア導入の実現は難しい情勢」(東京新聞5・21付夕刊)です。しかし新自由主義に投資がペイするかどうかは関係ありません。「リニア」という収奪体制そのものが狙いなのです。

セウォル号よりひどい安全無視

 第二に、韓国のセウォル号よりひどい安全無視・外注化の「乗り物」がリニア新幹線です。本紙2606号2面が弾劾したように、リニア新幹線には運転士も乗らない。運転士までも外注化・非正規職化する今のJRの行き着く姿です。
 リニアは地球上で最も変動の激しい、多くの活断層を貫いて走ります。南アルプストンネル走行中に停電となったら、地下1400㍍のどこにいるのかもわかりません。リニアの特性で外部から電源供給はできないことも惨事を拡大します。  第三に、リニアの核心は超電導にあります。

米軍の軍事技術の開発に不可欠

 リニア輸出は軍事技術・武器輸出と一体です。リニア新幹線技術の直接的転用ではありませんが、米軍が開発中の電磁砲はもとより、リニアモーターを使った空母の電磁カタパルトにとって、日本からのリニア技術輸出は不可欠です。リニアモーターは回転子などの電気抵抗を限りなくゼロに近づけ、高出力、小型・軽量化するもの。歯車を使わずに静かに艦船を推進できる、軍事用に欠かせない技術です。
 建造が始まった次世代原子力空母は電磁カタパルト採用などで、スチーム設備不要によるスペース確保と千人の要員削減、搭載機射出スピードアップなど作戦能力の格段の向上が狙われています。
 しかしうまくいっていない。その一つが電磁砲搭載予定のズムウォルト級駆逐艦です。今年4月に命名進水しましたが、開発の遅れで1隻50億㌦という空母に準ずる価格になってしまい、30隻建造の予定が3隻になりそうで、電磁砲搭載も不透明です。こうして超電導技術は米軍にとって必要であると同時に、武器輸出の道筋をこじ開けたい日帝の決定的なカードになっています。
 第四に、リニアは巨大な自然破壊です。すでに山梨実験線で川の水枯れが起こっており、残土の運搬・処理も、絶対反対あるのみです。葛西はリニアをも口実にして「原発再稼働」と言います。これらに多くの人が怒り、声を上げています。
 JR東海は最も外注化・非正規職化を強行している企業です。リニアを口実にそれはもっと強まる。ほかのあらゆる職場も同じです。
 それではどう闘うのかか。動労千葉や動労水戸の反合・運転保安闘争が示すように、労働組合に力を集め、JRに闘う労組を打ち立てることです。自然保護や反戦・反原発を願う仲間も、ともに6・8集会に集まろう。
(投稿 吾妻重雄)
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