再びロンドン地下鉄スト 英RMTが大合理化案に反対

週刊『前進』08頁(2634号06面04)(2014/06/02)


再びロンドン地下鉄スト
 英RMTが大合理化案に反対

(写真 ロンドン・ブリッジ駅でピケをはるRMT組合員【4月29日】)

ボブ・クロー氏の遺訓守り

 4月28日、ロンドンの地下鉄48時間ストで11路線がほぼ全面ストップ、42駅が閉鎖された。RMT(鉄道・海運・運輸労働組合)とTSSA(運輸職員労働組合)の2労組は、ロンドン市交通局とロンドン地下鉄による「265駅の窓口業務全面廃止、960人の首切り」という合理化計画に反対してストライキに立った。
 この2労組は、すでに今年2月4〜6日、同じ要求を掲げて48時間ストを闘い(本紙2620号既報)、その後、当局との数十回の交渉を通じて合理化案撤回を要求し、闘いを継続してきた。
 その間、ストの先頭に立ってきたボブ・クローRMT書記長が3月11日に病気で亡くなった。RMTは大打撃を受けながら、〝追悼するよりも組織せよ!〟という彼の遺訓を守り、組合の団結を固め、一歩も後退することなしに闘い抜いてきた。
 ボブ・クロー書記長は昨年の11月労働者集会に「ともに民営化と闘う日本の労働者へ」という連帯メッセージを送ってくれた。彼の死に際し動労千葉は「あなたの遺志に応えるのは民営化・外注化・非正規職化と絶対非和解的に闘い抜くことだと確信します」という弔辞を送った。
 戦闘的な組合指導者の死去によって隊列の乱れが生じることを期待した支配階級は、マスコミをも動員してストライキへの反動キャンペーンを展開した。キャメロン首相は「ストは正当な行為ではなく、容認できない」と言明し、ロンドン市長ボリス・ジョンソンも乗客と企業を〝侮辱するな〟と敵対してきた。しかしRMTはロンドン市民の「一枚岩のような支持」を得ていると反論し、隊列を固めて闘い続けている。
 ロンドン市交通局とロンドン地下鉄はチケットの電子化をてこに駅を無人化し、職員を大量解雇しようとしている。当局は「この合理化計画で、自分の意思に反して会社を去る労働者は一人も出ない」と言っている。国鉄分割・民営化時の中曽根首相の国会答弁とそっくりだ。実際には当局は職場で希望退職への圧力をかけ、労働者をそぎ落とそうとしているのだ。

EU規模の民営化に反撃

 この攻撃の背景にはEU(欧州連合)の鉄道・運輸民営化政策がある。EUは昨年12月から今年にかけて「第4次交通改革プラン」を策定し、世界大恐慌の中でEU諸国の交通・運輸の領域における国際競争力の強化を掲げ、鉄道・運輸における「列車・車両の運行部門とその管理部門の分離による経営の効率化」を柱に徹底したコスト削減を要求している。
 これに対するEU交通・運輸労働者の反撃として、5月3日のベルリンを軸とした「全ヨーロッパ運輸労働者メーデー」が闘われた(本紙春季特別号)。

30年代的階級闘争の兆し

 ロンドン地下鉄労働者の闘いは、こうしたEU規模の民営化・合理化に対する職場での実力闘争の最先端に位置する。
 5月25日にEUの欧州議会選挙が実施され、仏独で「反EU」を掲げる政党が首位を占めた。フランスのFN(国民戦線)は「移民排斥」などを唱える極右・排外主義の党で25%の得票率、政権党の社会党を3位に蹴落とした。またイギリスの首位はUKIP(英国独立党)で、労働党、保守党を抜いて28%を得た。この党はEU脱退を主張し、移民の規制を叫んでいる。ドイツでも、得票数は多くないが、AfD(もう一つのドイツ)という、従来のネオナチ党とは違った右翼政党が「ユーロ圏からの脱退」「マルクの復権」を主張して5%の壁を破って議席を得た。
 一方、ギリシャの首位は、27%の支持を得た急進左翼進歩連合で、EUとIMF(国際通貨基金)が押し付ける緊縮政策に反対し闘っている。
 EUの新自由主義政策に反対する部分がはっきりと左右に分極化している。1930年代的階級闘争の激動の兆しである。ここでも鉄道・運輸労働者を軸とした階級的労働運動と戦闘的労働組合の復活が緊急の課題となっている。
(川武信夫)
このエントリーをはてなブックマークに追加