社会保障解体許すな① 介護 「要支援」は保険の対象外 高齢者食い物にする資本

週刊『前進』08頁(2639号03面04)(2014/07/07)


社会保障解体許すな① 介護
 「要支援」は保険の対象外
 高齢者食い物にする資本


 6月18日、「地域医療・介護総合推進法」(以下「総合推進法」と略)が成立した。戦後の医療・介護制度を全面的に解体する大攻撃だ。24日に閣議決定された新成長戦略と併せて医療・介護の市場化・産業化を加速する。労働者家族から公的介護を奪い、介護労働者を極限的に搾取・収奪し、介護現場を崩壊させようとしている。

■要支援切りは不可避

 総合推進法は、「要支援」サービスのうち訪問介護と通所介護(デイサービス)を介護保険から市町村の独自事業に移す。狙いは介護保険支出の抑制、コスト削減だ。
 厚生労働省はこの改悪によって「ボランティアやNPOの活用」を促し、25年時点で「要支援サービスの半数がボランティアなどに変わる」と「見通し」を示すが、そうなる展望さえない。
 東京都の4月の介護サービスの有効求人倍率はパートで約6倍。労働条件があまりにも劣悪なため労働者が集まらず、人手不足が深刻化している。こうした状況でもボランティアなら集まるとでもいうのか。全国どの自治体も歳出削減圧力が強められている。自治体が介護の切り捨てと民間資本への投げ売りに向かうことは不可避だ。
 要介護・要支援の認定者数は昨年4月現在564万4千人で、うち154万4千人が要支援1、2だ。この3割近くもの人を、保険料だけ取って介護保険から締め出すというのだ。国家的詐欺ではないか! この「要支援切り」を突破口に労働者民衆から公的介護を奪おうとしているのだ。

■サ高住で貧困ビジネス

 総合推進法は、特別養護老人ホーム(特養)への新規入居を原則として「要介護3」以上に限定した。都市部ではすでに「要介護3」以上であっても入居できない状況が広がっているが、「要介護1、2」でも認知症の人や、家事・入浴などヘルパーの援助でようやく生活しながら入居を待つ人が多数いる。現在、特養入居待ちは52万4千人だが、うち17万8千人(34%)が「要介護1、2」の人びとだ。
 にもかかわらず政府が「要介護1、2は在宅で」と言うのは、要介護1、2の高齢者を介護保険適用の特養から締め出し、民間資本の餌食にするためだ。総合推進法のもと、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が「住宅地特例」の適用対象となる。これまでも政府は補助金支給や固定資産税の減額など、サ高住増設を誘導してきたが、これをさらに推進するのだ。
 すでにサ高住では、劣悪な住環境の中に生活保護を受ける高齢者を囲い込み、家賃や食費の徴収、必要もない介護サービスを提供して荒稼ぎする〝貧困ビジネス〟が問題になっている。これがますますはびこるのだ。
 政府は特養利用を抑制して介護保険支出を減らし、民間の高齢者住宅へ押し込み、資本にもうけさせようとしている。大恐慌で投資先を失ったゼネコンや不動産資本はサ高住事業に群がって延命を図っている。これが「施設介護ではなく在宅で」という厚労省スローガンの正体だ。
 団塊の世代が「後期高齢者」となる25年をにらみ介護資本の大再編が進んでいる。有料老人ホーム大手のメッセージが在宅介護大手のジャパンケアを子会社化した。サ高住に利用者を囲い込み、「24時間訪問介護」を売りにして暴利をむさぼろうとしているのだ。

■介護現場で闘い始まる

 介護現場の崩壊は甚だしい。「夜間は1人で10人を介護。夜から昼のぶっ通し勤務も常態化する中、介護士が高齢者を『虐待』」「休む時間もなく働かされた管理職員が夜間書類を燃やし『放火』で逮捕」。殴る蹴るのパワハラ、セクハラ......介護の現場は戦場だ。
 しかし介護・福祉労働者の決起が始まっている。労働組合を軸に高齢者・家族が一体となった闘いで安倍政権を打倒し、総合推進法、介護制度大改悪を粉砕しよう!
(望月夏穂)
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 安倍政権は集団的自衛権行使を閣議決定し憲法9条を解体すると同時に、労働者が生きるためにかちとってきた社会保障の全面解体に踏み切っている。今シリーズで暴露・弾劾していく。

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