社会保障解体許すな④ 生活保護 最低賃金の半分で就労 生活保護費を大幅削減

週刊『前進』10頁(2643号03面04)(2014/08/04)


社会保障解体許すな④ 生活保護
 最低賃金の半分で就労
 生活保護費を大幅削減


 安倍政権による7・1集団的自衛権の行使閣議決定と軌を一にして、戦争財政を確保するための「現役重視」=高齢者切り捨てが公然と叫ばれています。
 政府は7月25日、社会保障費の削減を鍵とする2015年度予算の概算要求基準を発表しました。「生産労働人口が総人口の62・1%、7901万人となった」(総務省)と資本主義・新自由主義による賃下げ・非正規職化が引き起こした少子高齢化社会を嘆きながら、介護・医療・保育・年金を切り捨てて、労働者の自己責任にしようとしています。とりわけ「60歳以上の受給者が51%」を占める生活保護は、3年間で670億円の予算削減が始まった上に、受給額の大幅削減と無権利の「ボランティア就労」への移行で一層の削減を狙っています。
 労働者階級をなめるんじゃない。「年金よこせ! 武器売るな! 緊縮財政反対! パレスチナ攻撃反対!」のデモやストライキが全世界で闘われています。

■貧困の歯止めにならず

 今年3月、ベビーシッターによる男児放置死事件が起きました。2歳の長男を亡くした22歳のシングルマザーは、親元暮らしでしたが、2人の子どもを抱え実父は病気で生活保護を受けていました。そのため母親は育児をしながら働かざるをえず、週2回働くのがやっとで収入は月5万円ほど。養育費も児童扶養手当も受給していませんでした。偶然予定が空いた日に少しでも稼ぎたいと考えた母親は、緊急対応可能な割安のネット保育に頼りました。このことは、生活保護があっても貧困の歯止めにはならない今日の労働者階級の実態をものがたっています。
 厚労省は「世代をまたいだ貧困の連鎖」などと言っていますが、貧困は政策の結果ではありません。資本主義社会では労働者は労働力を売らなければ生きられません。資本と賃労働の基本関係が厳然と社会を支配しています。この関係を覆さない限り誰もが貧困に突き落とされる可能性があります。「働けない人」も生活保護を受給している人も、この鎖を断ち切るために労働組合を軸に団結して闘わなければ、ともに生きる社会は建設できません。

■改悪法制が実施段階に

 7月1日から実施されている改悪生活保護法は、自治体のケースワーカーの人員不足・労働強化・非正規職化を促進しながら、審査の敷居をさらに高くし、おじ・おば・おい・めいなどの3親等にまで及ぶ扶養調査を可能にしています。また受給者の「健康の保持義務」を強化し、福祉事務所が検診結果を入手し生活に大幅に関与しようとしています。受給者には後発薬品の使用を促し医療費削減を先行させています。定住外国人から受給権を剝奪する動きや住宅扶助削減の検討も始まっています。
 さらに、生活保護から「就労移行層」を分離させる動きも始まっています。来年4月実施予定の「生活困窮者自立支援法」には、「最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」という「生活困窮者」の概念が持ち込まれています。自治体業務を請け負った業者のもとで「生活困窮者」を最低賃金の半分に満たない時給300〜400円で働かせるのです。生活保護費削減とともに外注化・非正規職化、労基法違反をさらに進める攻撃です

■「岩盤」壊す安倍倒せ

 生活保護法は、戦後、引揚者、復員・傷痍(しょうい)軍人、失業者などとして存在した労働者階級が生きるために闘い、それを通して憲法に先立って制定されました。今日の安倍の生活保護費削減はこうした労働者階級がかちとってきた諸権利を「岩盤」と称して丸ごと破壊しようとする改憲・戦争攻撃です。労働者階級の生存をかけて労働組合をよみがえらせ、安倍を打倒し、生活保護解体攻撃を粉砕しましょう。
(岩崎泰明)
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