福島・小児甲状腺がん リンパ節転移が多発 県立医大・鈴木眞一が自認

週刊『前進』10頁(2643号04面03)(2014/08/04)


福島・小児甲状腺がん
 リンパ節転移が多発
 県立医大・鈴木眞一が自認


 甲状腺がんおよび「甲状腺がんの疑い」とされた福島の子どもたち89人のうち、すでにリンパ節への転移が多発しているという、実に深刻な事態が明らかになった。しかも福島県はそのことを認めながら、その人数を発表しない。けっして許してならない重大事態である。

「声がかすれる人」認めながら数は隠し通す

 福島県が実施している県民健康調査は5月、今年3月までに実施した子どもの甲状腺検査について、がんおよびがんの疑いが89人になったと発表した。小児甲状腺がんは一般的に「100万人に0〜2人」と言われるが、福島県ではそれをはるかに超え、3320人に1人という恐るべき発症率となっている。
 これ自体がとてつもなく重大な事態だが、この間、さらに深刻ながんの転移の実態が明らかになっている。
 6月10日、県民健康調査検討委員会のもとに設置された甲状腺検査評価部会の第3回会合が行われた。そこで甲状腺検査を統括している福島県立医大教授の鈴木眞一が「リンパ節転移がもうすでに見つかっている」「明らかに声がかすれるっていう人」「リンパ節転移とか腫瘍の浸潤」などと公言したのだ。しかもさらに許しがたいことに、リンパ節転移や「声のかすれ」の多発を認めながら、その人数や実態について隠し通した。
 ほかの委員から「リンパ節転移の方、多いんですか?」「声が出ないとか、声に影響があるとか、リンパ節転移、どのくらいの割合なんですか」と質問が出た。しかし鈴木は「リンパ節転移の数は、ここでは公表しない」「個人情報でお話しできない」「取り扱いをていねいにするということから......公表できない」と回答を拒んだ。
 こんな理由で深刻な健康被害を押し隠すことなど絶対に許してはならない!

山下俊一も認めていたがん転移の多発

 そもそも子どもの甲状腺がんがリンパ節や肺などに転移しやすいということは、チェルノブイリ事故後の事例でも明らかになっていた。このことは、「年100㍉シーベルトまでは大丈夫」「にこにこ笑っていれば放射能は近づいてこない」などの大暴言で怒りを買ってきた山下俊一(長崎大学教授。3・11後に県放射線健康リスク管理アドバイザー、県立医科大学副学長などを務める)すら認めてきたことでもある。
 山下は2009年3月発行の「日本臨床内科医会会誌第23巻第5号」掲載の講演でも、チェルノブイリ事故後の子どもの健康被害について「大人と異なり、小児甲状腺がんの約4割は、この小さい段階(超音波で見つかった甲状腺結節のうち1㌢以下の結節のこと)で見つけても、すでに局所のリンパ節に転移があります」と述べていた。
 6月10日の会合でも、山梨大学教授の加藤良平が「乳頭がんというのは女性に多い。比較的若い人からも出てくることがある。リンパ節転移は高率に起こしている。......これ以外には、広島・長崎の原爆投下後とか、チェルノブイリの事故後に増加したということが知られている」と述べている。小児甲状腺がんがリンパ節転移、さらには肺などへの「遠隔転移」を多発する深刻な病気であることは、甲状腺がんの「専門家」とされる人間においては、ある意味で「常識」なのだ。
 にもかかわらず鈴木や福島県当局は、転移の実態をすべて隠し通している。そもそも鈴木は、福島の甲状腺がんについて一貫して「チェルノブイリで甲状腺がんが見つかったのは最短で4年。福島では、広島や長崎のような外部被曝、チェルノブイリのような内部被曝も起きていない」と、3・11による影響ではないという主張を続けてきた極悪の人物だ。

県民健康調査の縮小を狙う県と県立医大

 もうひとつの重大事態は、これほど深刻な健康被害が広がっているにもかかわらず、県民健康調査や甲状腺検査を縮小することが狙われているということだ。
 3月2日の同部会第2回会合で、国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長の津金昌一郎が強調したことは「がんの過剰診断ということが国際的には大きな議論を呼んでいる」「がんの過剰診断の典型例が甲状腺がん」ということだった。そして「過剰診断とは、その診断がなくても、その人の寿命前に症状をもたらしたり、その人が死に至ることがない、がんの診断のこと」と述べた。福島の子どもたちの甲状腺がんについて「過剰診断」であり、手術の必要がないがんを除去していると言っているのだ。
 東京大学大学院教授の渋谷健司も「過剰診断の可能性によって......逆に不安や不信感を招いてしまった現状を、この甲状腺検査は示している」(第2回)、「現在の検診が過剰診断、そして過剰治療につながっているという場合には......ホルモン治療も必要ですし、コストもかかる」(第3回)と騒ぎ立てている。主張の核心は、コストがかかるからがん除去手術をやめろということだ。
 日本学術会議副会長の春日文子も第3回会合で「ある段階から通常診療に移行すると......費用負担をどうするかという大変重い問題が出てきます。......正面から議論すべき時が来ている」と述べた。「通常診療」への移行とは、今は無料で実施している県民健康調査を打ち切り、診察も治療もみな本人負担に移行するということだ。原発事故による健康被害はないのだから、公費で診察する必要も治療する必要もないと言いたいのだ。
 安倍政権も福島県当局も県立医大もみな、資本主義体制の存否をかけ、3・11を「なかった」ことにしようと必死になっている。高線量汚染地域への帰還強制も、ことの本質はまったく同じだ。集団的自衛権の閣議決定という重大事態のもと、川内原発を筆頭に原発再稼働へと突き進むための大攻撃だ。
 福島と全国の子どもたちを放射能から守ろう! そのためにはすべての原発を今すぐ廃炉にする以外にない。川内原発再稼働を絶対阻もう。今夏8・6―8・9、8・17を闘おう!
(里中亜樹)

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福島県立医大・鈴木眞一教授が「リンパ節転移」を公言
県民健康調査検討委員会甲状腺検査評価部会より
「リンパ節転移がもうすでに見つかっている」
「明らかに声がかすれるっていう人」
「リンパ節転移とか腫瘍の浸潤」
「リンパ節転移の数は、ここでは公表しない」
「個人情報でお話できない」
「取り扱いをていねいにするということから......われわれとしては公表できない」

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