米ファストフード・スト 全米150都市で一斉に実力行動

週刊『前進』06頁(2648号02面04)(2014/09/15)


米ファストフード・スト
 全米150都市で一斉に実力行動

(写真 「何があろうとかちとろう」。集会と座り込みをするファストフード労働者【9月4日 シカゴ】)

(写真 「スト中」。タコベルの店内で「時給15㌦と労組」を要求する労働者【9月4日 ミズーリ州カンザスシティー】)

生きていけない低賃金への怒り

 9月4日、ファストフード労働者が時給15㌦への賃上げ、労組結成の承認などを求めて全米150都市でストライキとデモを行った。早朝5時ごろから行動が始まり、ラッシュアワーには交差点での座り込みなどの実力闘争が行われ、全米で約500人が逮捕された。
 マクドナルド、バーガーキングなどの労働者の時給は7・25㌦で連邦最低賃金ぎりきりだ。しかも労働時間が短い。そしてシフトが不規則に変わり予測がつかない。自分で代替を見つけないと病休もとれない。超低賃金でダブルジョブもできない労働者は、フードスタンプ(貧困者への食料扶助)なしには生きていけない。文字通りの飢餓賃金だ。
 だが、ファストフード資本は今、空前の利益を上げている。労働者を使い捨てにして暴利をむさぼる資本への怒りが沸騰している。

体制内指導部の思惑超えた決起

 ファストフード業界では何十年間も労働組合が結成できなかった。資本は、組織化の気配が少しでもあると、大量解雇か店舗閉鎖=労働者全員解雇を行った。また許可証を持たない移民労働者は、強制送還やその脅しで労組結成運動から切り離された。長期間の労働関係委員会の手続きと労働者の過半数の票がなければ労組が承認されないアメリカの制度の下で、労組の結成は不可能視され、体制内労組は一切、組織化の取り組みを放棄してきた。
 だが、戦闘的労組であるUE(統一電機労組)やIWW(世界産業労働者組合)は成果が出ないなかでもあきらめず地道な組織化を続けてきた。それは、ファストフード的経営が社会全体に重大な影響を与えるものだと認識していたからである。非正規職化――労働者を完全に物扱いし必要な時に必要なだけ使うシステム、マニュアル化した全国的な画一的職場支配、そして店舗閉鎖・移転攻撃などだ。
 IWWは04年、ついにニューヨーク市の一つの店舗で労組を結成した。多くの職場での組織化の闘いと労働関係委員会への不当労働行為の提訴によって、世界最大のコーヒーショップ・チェーンであるスターバックスを追い込んだ。スターバックスは06年に労働関係委員会との和解に応じ、店舗に労働者の法的権利を張り出すことと3人の労働者の職場復帰を認めた。IWWは09年にはカナダにも組織化を広げた。
 こうした小規模ながら戦闘的な労組の闘いが広がることに恐怖したSEIU(サービス従業員国際組合)などの体制内労組が対抗的に組織したのが、今回の全米ファストフード・ストだった。
 SEIUは、「戦闘的労組が結成される前にSEIUの支部を結成させたほうが良い」「支部に団体交渉権を与えず中央本部と資本が直接労働協約を締結するから、支部が万一戦闘化しても心配がない」と資本に売り込んで組織拡大してきたことで悪名高い。また、SEIUは労働者の闘いを民主党支持運動に歪曲してきたのであり、今度も中間選挙に向けてのキャンペーンに使っている。
 だが、今回のストとデモは歴史的な意味をもっている。アメリカの労働法上は認められない労組結成前のストにファストフード労働者は2年前から連続決起して規模を拡大し、今回は全米的な実力闘争も行ったのだ。これは指導部の思惑を超え、資本主義体制との対決に発展せざるをえない。実際、SEIUが作った組織「ファイト・フォー15㌦」のいくつかの都市組織で、本部から独立した組織化が開始されている。
(村上和幸)

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