社会保障解体許すな<介護> 特養抑制しサ高住を推進 介護と安全の崩壊は必至

週刊『前進』08頁(2651号04面05)(2014/10/06)


社会保障解体許すな<介護>
 特養抑制しサ高住を推進
 介護と安全の崩壊は必至


 地域医療・介護総合確保推進法によって、介護分野も一大改悪が狙われています。
 キーワードは「施設から在宅へ」。「医療から介護へ」という医療剥奪(はくだつ)攻撃と一体で、介護を受ける権利を奪い、一層の民営化で資本の利潤追求をとことん進める攻撃です。その最先端の攻撃がサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の推進です。民間事業者などによって運営されるバリアフリーの高齢者向け賃貸住宅です。11年の「高齢者住まい法」改正で創設されました。

規制緩和で異業種が次々と参入

 介護保険法に基づく特別養護老人ホーム(特養)は、13年度の待機者が52万4千人と、圧倒的に不足しています。にもかかわらず、安倍政権は介護保険給付の削減のために特養の増設を抑制し、それに代わるものとしてサ高住を推進しています。2020年までに60万戸の整備を目指し、さまざまな優遇策で民間投資を誘導しています。たとえば、新築建設費の10分の1を補助(1戸当たり上限100万円)、所得税・固定資産税を減額し、法人税を割り増し償却する減税措置です。
 さらに介護付き有料老人ホームなどの施設に比べて建築上・運営上の規制が非常に少なく、不動産、建設、電機(パナソニックなど)業界なども続々と参入し、空前の建設バブルで8月末には登録が15万6千戸を突破しています。しかし、居室の5割は床面積が18平方㍍以上20平方㍍未満と狭小です。外付け介護サービス(8割は訪問介護事業所などを併設)と一体化したその実態は、「施設から在宅へ」とは名ばかりで、限りなく「施設化」しています。
 サ高住は、小規模多機能型居宅介護施設での「利用者3に対し介護者1以上(通いの場合)」という人員基準もありません。入居者への安否確認と生活相談が義務づけられましたが、「日中はヘルパー2級以上がいればよい。夜間応対は無資格者でも可」というものです。介護崩壊・安全崩壊は避けられません。
 この構造は〝貧困ビジネス〟的なぼろもうけを生んでいます。「住宅で稼げなくても介護部門で赤字を埋めればよい」と介護保険限度額までサービス利用を強要したり、介護保険収入で稼ぐための〝過剰介護〟などが後を絶ちません。

貧困ビジネスで利用者食い物に

 劣悪な住環境の中に生活保護を受ける高齢者を囲い込み、介護サービス提供で稼ぐ文字通りの貧困ビジネスも横行しています。生活保護受給者の介護保険や医療保険が無料になることに目をつけ、食費も含めた入居費を月額10万円程度とし、小遣い1〜2万円を残して事業者がすべて徴収。「本人が嫌がっても、昼間は自分の部屋に戻らせず介護漬けにする」という悪質な手法です。
 施設介護大手メッセージが訪問介護大手ジャパンケアを買収したのも、こうしたサ高住のからくりを使って、最大限のもうけを狙うものです。「定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間訪問介護・看護)」を売りに利用者を囲い込みつつ、介護サービスを利用してもしなくても(!)包括・定額の月額払いであるため、確実な保険収入が見込める圧倒的な優位性で、業界3位にまでのし上がっています。
「介護でもうける」に反撃を!
 サ高住推進は大恐慌にあえぐ資本を救済する、腐敗しきった新自由主義政策です。サ高住協会会長が「施設から住宅にシフトすれば、介護費用を30%くらい削減できるだろう」と公言するように、安倍政権は詐欺的手法で社会保障費を削減し、資本はもうけを狙い、吸血鬼のようにこぞってサ高住の事業に参入しているのです。
 「介護でもうけを出す」資本の衝動の中で、パワハラなどの分断・暴力支配による介護労働者へのさらなる非正規職化、低賃金、強労働が強制されています。これに対し、現場で根底からの怒りの反撃が始まっています。「介護崩壊」という現実に対し、労働組合を軸に、職場と地域で命と誇りをかけた闘いを実現しましょう!
(望月夏穂)
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