JR体制 破産と崩壊④ 鉄道インフラ輸出で延命狙う 独・仏・カナダ・中国の資本と激しい争闘戦に突入する日帝 官民一体の売り込みの破綻性

週刊『前進』06頁(2655号02面04)(2014/11/03)


JR体制 破産と崩壊④
 鉄道インフラ輸出で延命狙う
 独・仏・カナダ・中国の資本と激しい争闘戦に突入する日帝
 官民一体の売り込みの破綻性


 国土交通省は10月17日、JR東海のリニア中央新幹線工事実施計画を認可した。安全性も確証されず、大規模な環境破壊を引き起こし、住民に立ち退きを強いるリニア新幹線を、JR東海は名誉会長・葛西敬之の号令一下、採算性さえ度外視して来春にも本格着工しようとしている。原発1基分の電力を消費するリニア新幹線の建設と原発再稼働に、安倍政権は絶望的に突進し始めた。
 大恐慌と帝国主義間・大国間争闘戦での敗退に追い詰められた日本帝国主義は、それを鉄道輸出で巻き返そうと狙っている。日帝は自らが招いた人口減少や地方の崩壊、主力産業の競争力の喪失、国内経済の急激な収縮の中で、アジア、中東、アフリカなど新興国へのインフラ輸出、とりわけ鉄道輸出で生き残ろうとしているのだ。

鉄道輸出は早くもカベに

 JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州が新幹線輸出を目的に設立した国際高速鉄道協会は10月22日、アメリカやアジアの政府関係者を東京に集めて高速鉄道の売り込みに躍起となった。20日には企業のインフラ輸出を支援する政府系ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」が立ち上げられた。
 だが、日帝の鉄道輸出は壁にぶち当たっている。鉄道輸出の老舗(しにせ)である仏アルストム、独シーメンス、カナダ・ボンバルディアのビッグスリーに加え、近年急速に台頭してきた中国2社(中国北車、中国南車)が大きく立ちはだかっているのだ。
 中国鉄路総公司の発表によると、中国の高速鉄道の運行距離は2013年末、1万1028㌔メートルに達した。これは日本の約4倍にあたる。さらに現在、1万2000㌔が建設中だ。
 2011年7月の中国高速鉄道の追突・大破事故が示したように、安全を無視して高速走行にのめりこむ中国スターリン主義の反人民性ははなはだしい。だが、国内での運行実績を重ねた中国は、徹底した「低コスト」を売り物に高速鉄道輸出に乗り出している。
 トルコでは7月末、中国が初めて海外で建設を一部請け負った高速鉄道が運行を開始した。7月、中国とタイは2021年完成を目指す高速鉄道の建設計画に合意した。6月に李克強首相と会談した英キャメロン首相は、英国高速鉄道事業への中国の参入を認めた。10月13日には李首相とロシアのメドベージェフ首相が最高時速400㌔、総額100億㌦(約1兆700億円)規模のロシア高速鉄道建設への中国の参加を取り決めた。中国はまた、アフリカや東欧諸国とのパイプづくりも始めている。
 帝国主義資本は当初、中国への高速鉄道輸出で大もうけすることを夢見ていた。ところが中国は、帝国主義同士の競争を利用して技術供与を認めさせ、最新の技術を獲得し、逆に日欧を脅かす存在にのし上がった。インドやマレーシア・シンガポール間、タイなどでの高速鉄道計画を巡り、日欧中は激しいつばぜり合いを演じている。

外注化と労組破壊に反撃を

 鉄道の輸出・輸入は、労働者に対しては外国資本による鉄道の買収や、分割・民営化、外注化、合理化、非正規職化、労組破壊、安全破壊の攻撃となって現れる。
 日立はイギリスの高速鉄道車両製造を受注し、現地工場を造ったが、日立のセールスポイントはモーターやドアにセンサーを多数搭載して車両の状況を常時把握し、車両の修理や保守を合理化できるというものだ。
 高速鉄道の輸出に行き詰まった日帝は当面、地下鉄や都市鉄道の輸出でのりきろうとしている。
 「グループ経営構想Ⅴ」で「世界に伸びる」と打ち出したJR東日本は、東急車輛を買収して総合車両製作所を設立した上、新津車両製作所を分社化してそこに併合させた。総合車両製作所はタイ・バンコクの地下鉄車両を大量受注し、そのむちゃな受注をこなすために労働者にすさまじい強労働を強いている。
 状況は全世界の労働者に共通している。韓国に導入された高速鉄道KTXは客室乗務員の非正規職化攻撃につながり、それへの労働者の闘いを呼び起こした。イスラエルでもボンバルディア社の新型車両の導入に伴う検査修繕部門の外注化に労働者はストで反撃した。
 インドでも日本や中国からの鉄道輸入の動きと同時に強まる合理化・民営化に対し、労働組合が反撃に立っている。
 インド政府は7月8日、140万人の労働者を擁する国鉄の建設や運営を民営化し、高速鉄道を推進する鉄道改革計画を発表した。9月1日、モディ首相と安倍首相が会談し、日本は今後5年間で約3・5兆円の包括的な投融資を行うと表明した。日帝はインドへの原発輸出と並び、高速鉄道建設や地下鉄整備に乗り出そうとしている。
 モディ首相は9月18日に中国の習近平国家主席とも会談し、中国が今後5年間でインフラ分野などに200億㌦(約2兆円)をインドに投資する約束を取り付け、また現有鉄道システムの高速化や鉄道技術の移転に関する覚書に署名した。

ストを構えるインド労働者

 これに対しインドの鉄道労働者の組合は「鉄道を分割して多国籍企業に売り払うなんて許せない」「必要なのは海外からの技術導入ではなく、劣悪な労働環境や人手不足を解消することだ」「海外からの直接投資を強行するならストライキも辞さない」と怒りを表し、9月19日に全国一斉の抗議行動に立った。
 カナダのボンバルディア社の工場でも7月14日、900人の労働者が年金制度の改悪に反対してストに立った。ボンバルディアはこの間、メキシコに生産拠点を移したり、労働条件を切り下げたりすることで価格競争に勝とうとしてきた。労働者はこれが首切りと賃下げにつながることに反対しているのだ。
 鉄道輸出は合理化、外注化、労組破壊の攻撃を加速する。労働者の国際連帯と反合理化・運転保安闘争で反撃しよう。
(国木田亨)
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