日米安保新ガイドライン阻止へ 東アジアと全世界で本格的武力行使を狙う日帝自衛隊

週刊『前進』06頁(2655号05面01)(2014/11/03)


日米安保新ガイドライン阻止へ
 東アジアと全世界で本格的武力行使を狙う日帝自衛隊

(写真 沖縄大学から駆けつけた赤嶺君が先頭に立ち、国際反戦デー渋谷デモが闘われた【10月21日】)


 10月8日、米日帝国主義の両政府は安全保障協議委員会(2+2)の防衛協力小委員会において、「防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定に向けた中間報告をまとめた。7・1閣議決定に基づく日米安保の大改定であり、新たな戦時体制の構築を狙う大攻撃だ。11・2集会の地平を突破口に、全国の職場・キャンパスからガイドライン改定阻止の決戦に立とう!

集団的自衛権の行使に対応した「再改定」

 日米両政府は10月8日の中間報告を骨子として年末までに最終報告をまとめ、1997年以来17年ぶりとなるガイドライン再改定に踏み込むことを打ち出している。
 もともと日米安保ガイドラインは、有事(戦争)における米軍と自衛隊との役割分担を決めた日米政府間の協定文書として78年に策定された。これは、ソ連軍の日本領土への侵攻に対する「日米共同対処行動」を想定したもので、以後これを踏まえた自衛隊の軍備大増強が特に80年代の中曽根政権下で推し進められた。その後、97年に朝鮮半島での戦争を想定した「周辺事態」を含む内容へと改定された。
 これに対し、今回の中間報告は、その前文で7・1閣議決定をガイドラインに「適切に反映」させると確認し、これまでの日米安保の枠組みを根本的に転換させる内容を打ち出した。安保条約そのものの事実上の全面改定に等しいものだ。
 その第一の、そして最も重大な変更点は、自衛隊が武力行使を行うことを前提とした日米安保へと転換することである。
 現行のガイドラインに基づく周辺事態法(99年制定)は、その第2条で「周辺事態への対処措置は......武力による威嚇(いかく)または武力の行使にあたるものであってはならない」と明記し、自衛隊の任務は米軍への「後方地域支援」などに限定した上で、「生命および身体防護のためやむを得ない場合」のみ「武器使用」を認めるとしてきた。これ自体が、周辺事態法と憲法9条との不整合を極めてペテン的な言い方でごまかしたものだが、今回の中間報告はこうした限定さえ投げ捨て、「日本の武力行使が許容される場合......の協力について詳述する」と宣言した。後方支援を主体としたこれまでの任務体系とは次元が異なり、自衛隊が初めから武力行使可能な実戦部隊として活動し、米軍との共同作戦計画の中にもそのように位置づけられるということだ。
 これに先立ち、安倍政権は自衛隊の本格的な侵略軍隊化を着々と進めている。昨年末に決定した防衛計画大綱には、敵地への上陸侵攻=「殴り込み作戦」を主任務とする「水陸機動団」すなわち日本版海兵隊の創設を盛り込んだ。また7・1閣議決定後の7月8日、防衛相・小野寺五典は、海自に新たに強襲揚陸艦を導入する意向を示した。小野寺は「強襲というイメージではなく多機能輸送艦だ」などと言っているが、これは陸上兵力を敵地に上陸させることを任務とした、オスプレイや水陸両用車などを搭載可能な大型艦艇であり、米海兵隊が殴り込み作戦の海上拠点として使用する強襲揚陸艦と何の違いもないものだ。
 こうした自衛隊機能の強化=侵略軍隊化は、離島をめぐる中国との軍事衝突を想定している。ガイドライン再改定はこれと一体で、東アジアにおける対中国・対北朝鮮を軸とした戦争遂行体制の構築を狙うものである。

「地理的制約」もはずし対象を世界に拡大

 中間報告は、第二に、「周辺事態」の文言を削除し、「日米同盟のグローバルな性質を反映するため適用範囲を拡大する」として、日米安保の対象領域を全世界へ拡大した。
 これまで政府は周辺事態法の適用範囲については「中東、インド洋、ましてや地球の裏側は考えられない」(99年の小渕首相の国会答弁)とし、一定の地理的制約を認めざるを得なかった。その後のアフガニスタン・イラクへの自衛隊派兵時にも周辺事態法は適用されず、それぞれ特措法の制定を余儀なくされた。
 だが、今回の中間報告は文字通り全世界を対象に無制限の侵略派兵を可能とすることを明記した。さらに「3カ国間および多国間の安全保障、防衛協力を推進する」として、日米安保を基軸とした広範な軍事同盟の構築を打ち出した。

中国と北朝鮮への本格的な戦争体制構築

 第三に、「平時から緊急事態まで切れ目のない形での安全保障」を掲げ、米軍と自衛隊の恒常的な戦争体制の構築を打ち出したことである。
 現行ガイドラインは、「平時/周辺事態/日本有事(=日本が直接攻撃を受けた場合)」の3区分でそれぞれに応じた軍事協力の内容を定めてきたが、この区分を撤廃して、平素から米艦防護を含む「アセット(装備品など)の防護」や「訓練・演習」など多岐にわたる恒常的な軍事協力が可能となる。「情報収集・情報保全」も日常的に強化するとしており、特定秘密保護法の施行はこれに対応するものだ。
 なお、この「切れ目のない安全保障」の部分には、特に釣魚島(尖閣諸島)をめぐる中国との軍事衝突に米軍を巻き込みたいという日帝の意図が含まれている。だが米帝はこれをそのままは認めず、中間報告で何度も中国を名指ししようとする日帝の意向に反して、ことごとくそれらを削除させたという経緯がある。米政府関係者は、中国へのけん制と同時に「日本がエスカレートするのを防ぐのもわれわれの役目だ」と公言している。
 大恐慌下での日米争闘戦の激化を背景として、日帝・安倍の対米対抗的な台頭を抑止しつつ、中国と北朝鮮への対峙戦略を強化しようというのが米帝の狙いなのだ。

階級的労働運動を軸に15年安保決戦へ!

 大恐慌下での帝国主義間・大国間争闘戦が激化する中で、ウクライナをめぐる衝突、イラク・シリア侵略戦争の泥沼化に続き、今や東アジアが世界戦争の最大の発火点になろうとしている。
 だが、大恐慌は同時に、この戦争を阻止し帝国主義とスターリン主義を打倒するプロレタリア世界革命の炎を燃え上がらせ、世界中で労働者人民の荒々しい決起を生み出している。それゆえ各国の支配階級とその政府は、ますます戦争と排外主義の道へ絶望的に突き進んでいるのだ。
 これに対し、11・2集会は、国境を越えた労働者の団結こそ戦争を阻止し、社会を変革する力であることを示した。労働者階級は、自国政府の戦争政策に反対して闘うことを通じて自らを鍛え上げ、国際連帯を豊かに発展させ、革命に勝利する力を身につけていく。
 日米政府は年内のガイドライン改定を経て、来年通常国会での安保関連法策定を狙っている。5〜7月は安保国会決戦になる。とりわけ4大産別において、戦争国家体制構築の攻撃と対決することが決定的な課題となる。今こそ「動労総連合を全国に」の闘いを軸に全産別に闘う労組権力を打ち立て、ガイドライン改定阻止・安倍打倒へ攻め上ろう。
(水樹豊)

------------------------------------------------------------

ガイドライン関連年表

1978年 日米ガイドライン策定
 91年 ソ連崩壊
 92年 PKO協力法成立
 94年 朝鮮危機
 97年 ガイドライン改定
 99年 周辺事態法成立
2001年 9・11反米ゲリラ
    アフガン侵略戦争
    自衛隊インド洋派兵
 03年 イラク侵略戦争
    有事関連3法成立
 04年 自衛隊イラク派兵
    有事関連7法成立
 09年 自衛隊ソマリア派兵
 11年 3・11震災と原発事故
    米軍が「トモダチ作戦」
 12年 米軍がイラクから撤退
 13年 日米安保協でガイドライン再改定に合意
    特定秘密保護法成立
 14年 米国防省がアジア太平洋リバランス戦略策定
    7・1閣議決定

このエントリーをはてなブックマークに追加