JR体制破産と崩壊⑥ 大量退職を逆手に外注化狙う 今後10年で4割超が退職する「高齢者の雇用確保」は大うそ 青年の未来もかけた大決戦へ

週刊『前進』06頁(2658号02面01)(2014/11/24)


JR体制破産と崩壊⑥
 大量退職を逆手に外注化狙う
 今後10年で4割超が退職する「高齢者の雇用確保」は大うそ
 青年の未来もかけた大決戦へ


 JR東日本は今後10年間で2万5800人、全体の43・4%の労働者が退職する大量退職時代を迎える。そして、これを逆手にとった全面的な労組解体と外注化拡大の攻撃に突き進もうとしている。

歯止めのない外注化の進行

 この大量退職によって真っ先に問題になるのは、60歳で退職してから年金が支給される65歳までの再雇用先があるかどうかだ。JR東日本は動労千葉との団体交渉で、「4月時点におけるJR東日本エルダー社員(退職後再雇用された社員)の人数は約5千人。今後の大量退職により最大で1万人に達する」と回答している。
 この現実を口実に、際限ない外注化の拡大が狙われている。そもそも「雇用の場の確保」は、定年延長ですべて解決できるはずだ。にもかかわらずJRは、60歳定年後の再雇用先を外注先に限定し、「高齢者の雇用の場の確保」と称して外注化を推進してきた。そうした攻撃は、これからさらに激化する。
 実際、JR千葉支社管内では10月以降、東船橋など8駅の全業務と両国駅東口改札の外注化が進められている。東京支社管内の東京駅では、「心臓部」である新幹線改札口で70人分の業務が外注化されている。
 しかし、外注化は「雇用の場の確保」などにはけっしてならない。起こっていることは雇用の破壊だ。
 とりわけ仕業検査と構内運転業務が外注化された後の現実が、それを示している。外注化が強行された直後は、管理者を含めて職場の労働者を丸ごとJRから外注先に出向させることで業務を回していた。しかし今では、下請け会社自身が新たに雇用した労働者(プロパー社員)たちに、ほとんど教育もしないまま仕事をさせるようになりつつある。
 車輪を削る転削業務についてJRは、「今後は下請け会社が採用した労働者だけで行わせる」と公言している。定年退職後の再雇用者が入る余地はまったくなくなった。これに伴い、出向させられていたJR労働者の出向が解除された。しかし、元の仕事はすでに外注化され、JRの業務ではなくなっている。
 外注化のために下請け会社へ強制的に出向させ、今度は本人の意志をまったく無視して長年やってきた仕事を奪う。外注化された業務は、より低賃金の労働者に、まともな教育も受けさせずに担わせる。これが外注化の現実だ。
 こうしてJRは、国鉄時代から働いてきた労働者をすべて使い捨てようとしているのだ。

〝去るも地獄残るも地獄〟

 大量退職と外注化の進行は、職場に激変をもたらす。JRの新規採用者数が現在の水準で維持された場合、10年後には実質8800人の要員が削減される。放っておけばすさまじい強労働と全面的な外注化が進められるのだ。まさに「去るも地獄、残るも地獄」だ。
 運転士に対してはすでに過酷な労働強化が押し付けられている。今までは一つの運転行路で運転していた列車をいくつかに分割し、他の行路に付け加えて運転させている。走らせる列車の本数は全体では同じだが、出勤枠が減り、1勤務あたりの業務量は増える。拘束時間が3時間近く長くなった勤務もある。
 現在、これは休日勤務だけで行われているが、JRがこれを平日を含む全行路に拡大しようとしていることは明らかだ。JR東日本はこれを「全社的な取り組み」と語っている。すさまじい労働強化と要員削減が行われようとしているのだ。
 また構内運転業務は、年齢を重ねたり身体を壊したりした運転士のための職場でもあった。しかし、外注化によりその場も奪われた。身体を壊したまま深夜や早朝の本線運転を続けざるをえない過酷な現実が、高齢の労働者に強いられている。
 大量退職問題は国鉄分割・民営化が生み出したゆがみだ。JRは自ら生み出した矛盾を逆手に取り、労働運動を一掃する絶好の機会にしようとしている。膨大な労働者を路頭に放り出し、業務をバラバラに外注化する。まさに「第二の分割・民営化」というべき攻撃だ。労働者の権利はとことん奪われ、安全は根本から破壊される。

大再編に入るJR労働運動

 JR労働運動にかかわる既成の全勢力がこの現実を見据えられず、完全にのみこまれている。
 JR東労組は、カクマル「拠点」職場の廃止攻撃に対し、東京地本がスト決議を提案したものの、会社に恫喝され、それをなかったことにするために躍起になっている。国労は全国大会当日に執行部が突然、全国組織を解体する提案を行い、委員長、書記長、財政担当が辞任した。国労は連合合流をたくらみながら、その反動も貫徹できず、組織の体をなさない状態だ。JR総連・日本貨物鉄道労組は、「労働組合の立場から鉄道事業の黒字化を果たす」「血も流す」と言って年末手当1・32カ月分という超低額回答を直ちに受け入れた。JR連合系は東日本で組織が完全に分裂し、労働者の切実な課題とは無縁のいがみ合いを続けている。既成のあらゆる勢力は、動揺と屈服の末に組織崩壊状態に陥っているのだ。
 しかし、真に危機に立っているのはJR資本だ。国鉄分割・民営化と外注化・非正規職化は、JR北海道に象徴される「JR崩壊」というべき事態を生み出した。JR体制そのものが崩れ落ちようとしているのだ。
 動労千葉はこの現実を真正面から見据え、組織の総力で闘う体制を構築している。大量退職問題は退職者だけの問題ではない。JRの青年労働者や、下請け会社で働く労働者の権利や未来、鉄道の安全を守る闘いだ。だからこそ、この闘いに全力で立ち、組織拡大を実現して新たな展望をつかもうとしているのだ。
 JRで起きている現実は、あらゆる職場に共通する。これに立ち向かう構えと本気さが問われている。今こそ闘う労働運動の復権へ、全力で闘おう。
(伊勢清和)
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