焦点 アベノミクスはもはや大破産 「株高」の演出も崩壊局面に

週刊『前進』06頁(2661号05面05)(2014/12/15)


焦点
 アベノミクスはもはや大破産
 「株高」の演出も崩壊局面に


 内閣府は12月8日、今年度7~9月期のGDP(国内総生産)改定値を公表した。同期の実質GDP成長率は前期比年率換算でマイナス1・9%になった。4~6月期の年率マイナス6・7%に続き、2期連続で実質GDPは減少した。
●消費のすさまじい落ち込み
 これは、直接には消費増税が消費を一気に冷え込ませた結果だ。4~6月期の家計最終消費支出は年率19・3%も減少した。これほどの家計消費の落ち込みは、97年の消費増税時や08年のリーマン・ショック時、11年3・11東日本大震災時をも上回る。恐慌のさなかに増税を強行した安倍の無謀な政策は、もともと何の根拠もなかった「アベノミクスで景気回復」という虚像をたちまち吹き飛ばした。
 その根底にあるのは過剰資本・過剰生産力状態だ。日本の「需給ギャップ」は14兆円といわれる。企業の潜在的な供給力と比べて、需要はそれだけ不足しているのだ。膨大な過剰生産力を抱えたままでは、賃金を切り下げる以外に利潤を上げる手段はない。
 経済は今すさまじい勢いで縮小し、「恐慌の中の恐慌」へと突入している。それは倒産と大量解雇を引き起こす。円安がもたらす原材料費の高騰で、倒産に追い込まれる中小企業も増えている。今年1月から11月までに起きた円安倒産は前年の2・7倍だ。大手スーパー・ダイエーのイオングループへの身売りに伴う解雇など、大量首切りの攻撃もすでに始まっている。
●世界同時株安の引き金に
 アベノミクスによる株高の演出も今や崩れつつある。12月9日には世界同時株安が起きた。直接のきっかけは上海株の下落と言われるが、根底にあるのはアベノミクスを続ける日本への危機感だ。
 12月9日、イギリス金融大手のHSBCは「日銀の極端な金融緩和は2015年の世界経済10大リスクの一つ」とするレポートを公表した。米FRB(連邦準備制度理事会)が量的緩和の終了を決めて利上げの機会をうかがう一方、日銀は年間約80兆円規模への追加緩和策を決めた。これが世界の不安定要因になっている。
 日銀の超金融緩和はいつまでも続けられるものではない。どこかで打ち切らなければならないが、その時起きる日本国債の暴落や株式市場の崩壊は、世界を激震に巻き込む。マネーゲームで懐を肥やしてきた世界中の資本家たちは、このことにおびえ始めた。消費税率10%化の先送りと日本国債の格付け引き下げも、これに拍車をかけた。
 日銀の超金融緩和策は、国債を買い支えることが狙いだった。すでに国債全体の29%が日銀に保有されている。日銀に国債が吸い上げられてしまうため、市場に出回る量が減り、短期国債に至っては価格が償還額を上回るマイナス金利で取引されている状態だ。これもどこかで必ず破綻する。国債の大暴落はいずれ不可避だ。
●円安で労働者の生活は破壊
 安倍政権が成立した12年12月当時、1㌦=80円台だった為替相場は、1㌦=120円台まで円安が進んだ。日銀の超金融緩和は、通貨戦争的に円安をつくり出すものだった。
 その結果、輸出企業の利益は膨らんだ。だが、円安による原材料費や燃料費の高騰は、中小企業を倒産の危機に追いやっている。何よりも食料品の価格上昇は労働者の生活を圧迫している。その円安で「日本経済は大きく回復した」などと言う安倍は、富める者だけが生き残ればいいと言い放っているのだ。
 アベノミクスのもとで労働者の実質賃金は16カ月連続で減少し、正規職は非正規職に置き換えられた。「富裕層が豊かになれば、その分け前はいずれ貧困層にも滴り落ちる」という「トリクルダウン」理論はまったくのうそだった。
 だが逆に、株や国債が暴落して大資本が損失をこうむれば、そのつけは必ず労働者階級人民に押し付けられる。その時は迫っている。「この道しかない」と言い張って大破産したアベノミクスをなおも強行する安倍は、労働者を一層の貧困と生活苦にたたき込むことで、ほんの一握りの大資本を生き延びさせようとしているのだ。2015年はこの攻撃と真っ向から対決する文字どおりの階級決戦だ。

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