「存立事態」で戦争発動 集団的自衛権関連法阻止を 安倍政権打倒の安保国会決戦へ

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週刊『前進』06頁(2666号05面01)(2015/01/26)


「存立事態」で戦争発動
 集団的自衛権関連法阻止を
 安倍政権打倒の安保国会決戦へ


 世界大恐慌が「恐慌の中の恐慌」へと突入する中、日本帝国主義・安倍政権は中東侵略戦争―世界戦争参戦を宣言した。中東歴訪、25億㌦の援助、人質事件への対応で、中東石油をめぐる国際争闘戦に殴り込みをかけたのだ。だからこそ安倍は、「国の存立を全うするため」と称して武力行使=戦争に踏み出すことを狙い、今国会での新たな安保関連法の制定を画策している。階級的労働運動を軸に安保国会決戦を闘い、安倍を打倒しよう。大恐慌と戦争を世界革命に転化しよう。

中東戦争に突き進む米欧日

 1月7日の仏週刊紙「シャルリー・エブド」への銃撃に始まる一連の襲撃事件を受けて、フランス帝国主義はイラク・シリア侵略戦争を決定的にエスカレートさせ、国家の総力を挙げて戦争に突入している。
 バルス仏首相は13日、国民議会で「フランスは『テロとの戦争』に入った」と宣言し、ただちに仏全土に軍1万人、警察5千人を配備する異例の治安弾圧態勢をしいた。オランド大統領は14日、空母「シャルル・ドゴール」のペルシャ湾派遣と空爆参加を表明した。同空母は米海軍以外が所有する唯一の原子力空母であり、艦載機が核兵器を搭載している世界で唯一の空母だ。
 また仏法務省は「テロを擁護した」などの理由で14日までに54件を捜査対象としたと発表しており、16歳の高校生がネットでの書き込みを理由に「テロ賛美罪」で逮捕・起訴されるなど、もはや「表現の自由」などおかまいなしの戦時下治安弾圧が吹き荒れている。
 本紙前号3面でも明らかにしたように、今日、仏帝を戦争と排外主義に駆り立てているのは、世界大恐慌のもとでのユーロ崩壊・EU解体の危機の現実化と、その中で大失業と戦争に怒る労働者人民のゼネストが爆発し、欧州全土を揺るがしているからである。この世界革命の現実性が全情勢を規定している。
 こうした仏帝の危機に駆られた戦争突入に対し、米帝オバマは21日の一般教書演説で「テロとの戦いに全力を挙げる」と強調し、巻き返しをかけて空爆を強化することを宣言した。イラク・シリア侵略戦争は、中東をめぐる帝国主義間・大国間の争闘戦をはらみながら激化し、ウクライナ戦争とともに世界戦争の導火線になりつつある。
 この戦争情勢の真っただ中で、日帝・安倍は中東を歴訪し(16〜21日)、これを直撃する形で20日、日本人人質事件が発生した。安倍は真っ青になって今回の中東訪問を「中立外交だ」「援助は非軍事に限定している」などと弁解に躍起だが、真っ赤なウソだ。安倍は17日のカイロでの演説で「『イスラム国(IS)』と戦う周辺各国に総額25億㌦を支援する」と明言したのだ。
 そもそも日帝は昨年のイラク・シリア空爆開始以来、「有志連合」の一角に加わり、一貫して空爆支持を表明してきた。9月のエジプト・シシ大統領との首脳会談では、「空爆でISを壊滅することを期待する」とまで明言した。その他、日帝はイスラエルとの軍事的協力関係の強化を図り、同国への武器輸出の解禁を宣言した。さらには、アフリカ東部ジブチの自衛隊拠点を恒久化し、事実上の「海外基地」とすることを打ち出した。米欧に後れをとるなとばかりに、日帝は深々と中東侵略戦争にのめり込んでいるのだ。
 こうした中で、安倍は「中東の活力を取り込む」と息巻いて、銀行や商社、ゼネコンなど計46社の幹部らを引き連れて中東を歴訪し、「地下鉄や空港など現地のインフラ整備を日本企業が受注できるよう後押しする」(日経新聞1・18付)ことを狙った。日帝のインフラ輸出は軍事力の展開と一体であり、戦争に直結しているのだ。

「国の存立」が人間の命奪う

 政府はこの間、集団的自衛権行使のための安保関連法案について、統一地方選後の4月末の国会提出を狙い、これと連動して5月連休前後の安倍の訪米と日米安保ガイドライン再改定を画策している。
 この新たな安保関連法案の最大の特徴は、現行の武力攻撃事態法や自衛隊法に「存立事態」なる新概念を導入することにある。政府が「国の存立が脅かされている」と判断(閣議決定)すれば、日本への攻撃がなくても、ただちに自衛隊が「防衛出動」し、本格的な武力行使=戦争が可能になるというのだ。
 この「存立事態」は、言うまでもなく昨年7月1日の閣議決定に由来する。7・1閣議決定の正式名称は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」である。そして「政府の責務は......国の存立を全うするとともに、国民の命を守ることである」とし、「国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」(=存立事態!)には、集団的自衛権を含む武力行使が憲法9条下でも「自衛の措置」として許容されると言っている。
 今日の大恐慌と世界戦争の危機のもと、日帝が「国の存立」という国家主義的概念を前面に押し出し、人民を恫喝して戦争に乗り出すことを公然と宣言したことはきわめて重大だ。この攻撃と真正面から階級的に対決し、怒りの決起で爆砕しなければならない。
 ここで何よりはっきりさせるべきなのは、「国の存立」と「国民の生命・自由・幸福」とは根本的に相いれないということだ。
 今日の日帝を始めとする新自由主義的帝国主義の現実とは、人口の1%にも満たない資本家階級が社会の富と権力を独占し、99%の労働者階級人民から徹底的に搾取・収奪する階級社会であり、国家はそれを維持するための暴力装置そのものである。「国の存立を全うする」とは、この労働者人民に「生きられない現実」を強制する階級社会を維持する、そのために戦争も辞さないということだ。
 そもそも人間が人間らしく幸福に生きる権利と社会的条件をことごとく破壊するのが戦争である。戦場での凄惨(せいさん)な破壊と虐殺、軍隊内での日常的な暴力支配、戦時における国民生活の極度の貧困と一切の権利・自由の剥奪(はくだつ)......これらはいずれも人間が「幸福に生きる」こととは最もかけ離れた世界である。しかも戦争の一切の災厄をこうむるのは、戦争を引き起こした1%の連中ではなく、それぞれの国の99%の人民なのだ。
 日本の労働者階級はそのことを70年前の戦争で身をもって経験している。安倍は「戦後70年首相談話」をもってこの歴史を全面的に歪曲し、日帝のかつての戦争を美化・正当化して居直ろうとしているが、これへの怒りが昨年をはるかに上回る規模で、安保国会決戦と一体で地の底から爆発することは不可避だ。

国際連帯を発展させ闘おう

 日帝・安倍の狙いは何か。現行の周辺事態法や武力攻撃事態法が憲法9条によって制約されている(米軍との関係では自衛隊の任務が基本的に「後方支援」に限定される)状況を突破し、「国の存立のための自衛の措置」と称して、米軍や他国軍と肩を並べていつでも戦争を発動できる状態にすることである。その対象は中東の戦争への参戦とともに、朝鮮半島を最大の焦点とする東アジアでの戦争である。
 すでに安倍は、それに向けて防衛予算を前年度比2・0%増の4兆9801億円(14年度補正予算を含めれば5兆1911億円)という過去最大の額に膨張させた。その内実はMV22オスプレイ、最新鋭ステルス戦闘機F35、水陸両用車などいずれも「攻撃型兵器」の購入予算が目白押しだ。これと一体で、陸自に新設される「日本版海兵隊」=水陸機動団の佐世保配備をはじめ、南西諸島への兵力が4千人規模で増強されようとしている。いずれも中国との軍事衝突を明確に意識した戦争体制構築であることは明らかだ。
 日本共産党の言う「海外での戦争に反対」とは、安倍の戦争政治への完全な屈服である。日共は「尖閣は日本の領土」と声高に主張してきたのであり、領土防衛は「海外での戦争」ではなく、自衛のための「正義の戦争」となるのだ。
 連合幹部や日共の屈服と転向を打ち破り、国鉄・公務員決戦を軸とする階級的労働運動と国際連帯の発展で安倍を打倒しよう。とりわけパククネ打倒へ進撃する韓国・民主労総との国際連帯は、今日の戦争情勢下で決定的な位置を持つ。1〜3月国鉄決戦に勝利し、3・11福島、4月統一地方選、5・15沖縄闘争を闘い抜き、4〜6月安保・戦争国会粉砕の大闘争を切り開こう。
(水樹豊)

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7・1閣議決定と「存立事態」

「3 憲法9条の下で許容される自衛の措置
 ......我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、......自衛の措置として憲法上許容される」〔太字部分を「存立事態」と定義〕

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