「トモダチ」作戦で被曝米軍兵士が東電など提訴 原告239人の兵士・家族と連帯を

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週刊『前進』06頁(2669号04面03)(2015/02/16)


「トモダチ」作戦で被曝米軍兵士が東電など提訴
 原告239人の兵士・家族と連帯を


 2011年3・11東日本大震災と福島原発事故から4年、「トモダチ作戦」で被曝した空母「ロナルド・レーガン」の乗組員ら米海軍兵士239人が、東電、東芝、日立、GE(と子会社エバスコ)など4社を訴えた集団被曝訴訟がアメリカ連邦地裁で闘われている。被曝兵士・家族の集団的決起に肉薄し、国際連帯の強化で勝利しよう。

被曝で海軍の兵士2人死亡

 昨年4月24日に30代のヘリコプター整備士が骨膜肉腫で死亡し、9月に20代の兵士が白血病で死亡した。この家族も原告に加わっている。また「トモダチ作戦」中に妊娠した子どもが生後、「多発性遺伝子異変」と診断されている。この幼児も原告のひとりだ。
 米軍は「トモダチ作戦」で11年3月12日から4月20日まで、兵士2万4千人を福島原発事故対処を中心に投入した。
 3・11大震災発生時、空母「ロナルド・レーガン」(乗組員5千人)は韓国に向かっていたが、「トモダチ作戦」の下命を受け福島第一原発1号機が爆発した12日に三陸沖に到着した。14日には第一原発から1・6〜3㌔の間で放射性プルーム(気体状の放射性物質を含んだ雲のような塊)の中に停泊していた。兵士はプルームの中で防護服の着用もなく艦載機の発着、整備など5時間の甲板活動を行い、また上空からヘリによる原発事故調査も行った。
 さらに空母は海水を脱塩して飲料水にしている。15日に使用が中止されるまで3日間、高線量の放射性物質に汚染された水が飲料用、調理用に使われた。内部被曝は確実である。
 甲板の除染作業も通常の戦闘服で継続し、使われた水も汚染海水だった。またベッドが換気システムの脇にあったため、ホット・スポットの中で生活し、がんになった兵士もいる。乗組員は作戦開始から離脱後、下船する9月までの半年間、ホット・スポットに缶詰め状態にされながら、空母甲板、艦載機の整備・除染という「被曝作業」を強制されていた。ヨウ素剤は一部幹部のみに支給されただけだが、兵士は下船時に「ヨウ素剤を飲んだ」という署名を強要された。
 兵士たちは血液検査の尿サンプル採取や医師の本格的な診断も受けていない。海軍の記録では189機の艦載機が汚染され、除染作業が行われた。艦載機の除染作業は三沢基地でも行われた。みな被曝労働である。
 死亡した2人の海軍兵士以外にも20代、30代では考えられない病気が発生している。甲状腺がん、乳がん、精巣がん、脳腫瘍(しゅよう)などである。がん以外にも胃腸不調、全身がだるい、生殖異常などが出ている。しかも一人に複数の症状が出ている。提訴後、体調を崩し、除隊した原告もいる。原告の約3分の1が現役兵士だ。軍隊で学費を稼いで大学に行くことを計画していた青年が多い。しかし、20代で除隊するとその計画が崩れるだけでなく、生活保障や被曝補償もないために生きられなくなっている原告も多い。

「深刻でない」と米国防総省

 米国防総省は、世論の圧力に押され14年6月、空母レーガン乗組員の被曝調査報告書を公表した。その結論は、「全身および甲状腺に取り込まれた可能性のある汚染物質の最大評価量は、今後の調査を行う根拠があるほど深刻なものではない」と完全に開き直っている。米「ENE・NEWS」は、「乗組員4800人強のうち、1750人になんらかの被曝症状が出ている」と報じている。
 ウォール・ストリート・ジャーナルは11年6月21日、「トモダチ作戦」は「最悪の戦争シナリオに対する米軍の対応を研究する上で有益だった」「トモダチ作戦は恐らく、放射性環境下では最も有名な作戦になるだろう」と報じた。
  要するに米帝にとって「トモダチ作戦」とは、「災害救援」活動ではなく、「最悪のシナリオ」である「戦術核爆発や原発事故対処」の「実戦訓練」として発動されたのである。それだけではない。米政府は3・11直後から、7万人の在日米軍兵士・軍属とその家族、「トモダチ作戦」に動員した米兵の「医療記録(病状の記載)」を中止している。これこそ兵士・家族らの被曝の事実を永遠に隠蔽(いんぺい)し抹殺しようとする国家的犯罪行為である。
 本件訴訟の経緯は、12年12月21日、原告8人の第1次訴訟から始まった。訴状は、日本政府と東電が共謀してアメリカに虚偽の情報を提供し、兵士らを被曝させたと主張。これに対し東電は、①国を相手にした訴訟は政治問題であり裁判所が判断できる問題ではない、②訴訟は日本の裁判所で行え、と主張した。これに連邦地裁は東電の主張を認める決定を下したが、原告にも訴状変更を認め、被告から日本政府を外し、東電相手の訴状に変更した。そして13年6月4日に第2次訴訟を起こした。
 14年2月5日、80人に増えた原告は損害賠償の金額を未特定額に変更したほか、健康診断や治療を行うための10億㌦(約1200億円)規模の基金の設立を請求した。続いて同年8月21日、第3次訂正訴状を提出した。原告223人になり、被告に東芝、日立、GE(と子会社エバスコ)を追加した。
 同年10月28日、ジャニス・サマルティーノ判事は東電の申し立てを却下し審理開始を命令した。今月26日から、同連邦地裁で第3回口頭弁論が開かれる。
 米連邦地裁は、米軍兵士の集団被曝訴訟を「アメリカの国益」問題として日米争闘戦の武器に転化するとともに、被告から日帝を外させ、また「トモダチ作戦」を命令した米帝をも外すことによって、米海軍兵士・家族の決起を体制内化しようとしている。

国際連帯に勝利のかぎが

 当時、空母レーガンよりも原発に近い海域にいた海自護衛艦の甲板に降り立った米軍ヘリ搭乗員の靴から、高い放射線量が測定されている。米軍兵士、10万人の自衛官、福島県民の被曝の根源、元凶はひとつであり、新自由主義的帝国主義だ。
 米軍の被曝兵士・家族の決起に連帯し、ともに闘おう。日米韓中を軸とする全世界の労働者階級の国際連帯を強化し、プロレタリア世界革命を引き寄せよう! その確実な戦略的基軸が国鉄決戦であり、階級的労働運動の前進である。戦争・改憲・原発再稼働に突進する安倍政権を今春国鉄・安保決戦で打倒しよう。
〔革共同反軍闘争組織委員会〕
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