ふくしま共同診療所 東京報告会に100人 杉井医師の熱い訴えに共感

週刊『前進』06頁(2669号05面01)(2015/02/16)


ふくしま共同診療所 東京報告会に100人
 杉井医師の熱い訴えに共感

(写真 ふくしま共同診療所の杉井吉彦医師の報告に驚きや共感の声がもれた【2月8日 浜町区民館】)

(写真 質疑応答に答える杉井医師)


 2月8日、NAZEN(すべての原発いますぐなくそう!全国会議)東京が、東京の浜町区民館で「ふくしま共同診療所報告会」を行った。約100人が参加し、ふくしま共同診療所の杉井吉彦医師が講演を行った。

避難・保養・医療の重要性を強調

 杉井医師は冒頭、「診療所の開設以来2年、各地で報告会を行ってきた。雪の中、2時間半もかけて話を聞きに来てくれる人もいる。福島に熱い思いを寄せている人がたくさんいることを強く感じてきた」と語った。
 そしてスライドを使いながら1時間あまりにわたって、福島の現実、子どもたちの現実を怒りを込めて報告した。
 「福島では放射能や被曝について話すことがタブーとされ『復興』一辺倒。安倍首相は東京オリンピック招致にあたって二つのうそを言った。一つは福島第一原発は『アンダーコントロール』。もう一つは『健康問題については、今までも現在もそして将来もまったく問題ない』。こんなことを断言できるわけがない。安全キャンペーンのもと、福島に残らざるを得ないお母さんたちは苦悩している」と話した。
 小児甲状腺がんについて、「昨年から始まった2次検査で4人の子どもが新たに『甲状腺がん・疑い』と確定した。しかし環境省専門家会議座長の長瀧重信は『今見つかっているがんは原発事故以前に発症したもの』と言った。甲状腺検査の実質上の責任者である福島県立医大の鈴木眞一は『甲状腺がんは予後が極めて良好。進行は若い人ほど遅い。不安を助長したり過剰診療にならないようにつとめてまいります』と言っている。県民健康調査について東京大学大学院教授の渋谷健司は『51人も手術したのは過剰診断・治療ではないか』とまで主張した」と、原因が原発事故であることを認めない動きを強く批判した。
 そして「こうした中で私たちは診療所を開設した。診療所がめざすものの3点目は『被災、被曝の現実と訴えから学び・応え、ともに避難、保養をすすめ、健康増進をかちとってゆきます』。医療機関にかかる以前に、病気にならないことが一番大切で、そのためには避難が第1です。どうしても避難できない人には保養が必要。3番目が医療です。ベラルーシではチェルノブイリ事故から四半世紀以上たつ今も、年間十数万人が1年のうち24日間の保養を行っている」と述べ、避難・保養の重要性を強調した。
 さらに「診療所は仮設住宅で医療相談をしています。4年近い仮設住宅暮らしの中で、仮設での孤独死は発表されただけで34人。仮設からこれ以上の死者を出させてはならない」と強く訴えた。
 続いて「内部被曝とは何か」と問いかけ、「線源が体の中にあること。チェルノブイリ事故後は、内部被曝が比較的低いゴメリ市でも甲状腺がんが多発した。肺炎や消化器疾患、心疾患、肝硬変などの非がん死も増加する。国会事故調委員でもあった高木学校の崎山比早子さんは、老化が促進されると報告している。広島に原爆病院があるのと同じように、福島には原発病院が必要で、長期間にわたるていねいな医療活動が必要です。福島県では原発関連死が増え続け、昨年末までに1822人、実に月平均40人。これは虐殺です」と強く弾劾した。
 そして「当診療所の考えとするべきこと」として「子どもだけでなく大人に対しても長期にわたって甲状腺エコー検査を半年に1回行っていく。被曝による障害を早期発見し治療していく。仮設住宅などに避難されている人びとの健康と命を守る」、また「被曝労働に従事させられている労働者、とりわけ福島第一原発で困難な収束作業に取り組んでいる労働者の健康と命を守る取り組みを行う」ことを強調。杉井医師の熱い訴えに参加者は真剣に聞き入った。

避難者、保養活動家が活発な討論

 質疑応答では福島からの自主避難者や、保養活動に取り組んでいる人、再稼働阻止へ行動し続けている人などから質問や意見が次々と寄せられ、杉井さんの回答に向き合った。
 福島市の椎名千恵子さんも発言し「国道6号線の開通やJR常磐線の代行バス運行開始など、帰還強制がますます強まっています。代行バスを走る道路の空間線量は最高14・7㍃シーベルト。福島は絶望なんてしていられません。こうした中で真実を告げ知らせているのがふくしま共同診療所です」と、福島の現実を報告しながら3・11反原発福島行動'15への参加を呼びかけた。
 最後にNAZEN杉並の北島邦彦さんがまとめを行い、3・11郡山集会、2・15国鉄集会、そして3・1ビキニデー集会に参加を呼びかけた。
 終了後のお茶会には、診療所建設委員会に基金を寄せて応援し続けてきた人などが多数参加し、「初めて診療所のお医者さんの話を聞けて本当によかった」「子どもたちのためにこれほど真剣な取り組みを続けていることに感動した」などの声が寄せられた。
 福島の現実、子どもたちの現実に心を寄せ、診療所の活動に希望を見出す人びとが広がっていることを示した、画期的な報告会となった。避難・保養・医療の運動をさらに押し広げよう。3・11反原発福島行動'15に仲間とともに参加しよう。

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