国保の県移管で医療費削減皆保険制度と労組解体狙う 〈投稿〉職場から反撃の火の手を

週刊『前進』08頁(2674号02面04)(2015/03/23)


国保の県移管で医療費削減皆保険制度と労組解体狙う
 〈投稿〉職場から反撃の火の手を

医療保険制度の解体と民営化に突き進む安倍!

 安倍首相は施政方針演説で戦後以来の大改革を叫び、農業・医療・雇用の規制改革と「社会保障と税の一体改革」、国民健康保険(国保)の県移管を打ち出しました。
 安倍は社会保障費が年々1兆円規模で拡大し国保財政は3500億円規模の赤字を出しているとし、3月3日「国保財政の基盤強化のため」と称して、18年度から国保を市町村から県に移管する医療保険制度改革法案を閣議決定しました。
 都道府県に財政の責任を負わせ、医療計画を策定させて医療切り捨てを進めさせる一方、保険料徴収を担う市町村にはこれまで以上に徴収率アップを強いるものです。
 それは、戦後の皆保険制度の解体に行き着く攻撃です。安倍や塩崎恭久(しおざき・やすひさ)厚生労働相は、皆保険・皆年金制度の破綻の可能性に言及し始めました。
 新自由主義のもとで非正規職が拡大し、国保は無職や非正規職の労働者が加入者の8割を占め、保険料を払えない人が増えています。国保の崩壊は社会の崩壊です。無権利・低賃金の長時間労働で子どもを産み育てることもできない現実が強制されています。「少子・高齢化」と「自治体消滅の危機」は新自由主義の破綻そのものです。
 これに対し安倍は3月11日の経済財政諮問会議で、「経済再生と財政健全化の二兎(にと)を追う」として、「公的分野の産業化」、「公共サービス成長戦略」を掲げ、〝民間の多様な主体との連携、医療介護分野の生産性向上、コスト抑制、歳出の効率化〟を打ち出しました。社会保障の切り捨てと全面的な民営化・営利化であり、社会を破滅させる攻撃です。

医療費削減を競わせ「トイレも惜しんで働け」

 医療機関の診療報酬の審査支払業務を担う2団体、国保連(国民健康保険団体連合会)と支払基金(社会保険診療報酬支払基金)の職場で、医療費削減を競わせ、階級意識を奪って団結破壊を進め、統合・民営化で職場そのものをなくす攻撃が激化しています。
 朝日新聞は〝審査手数料1200億円が財政を圧迫している。2団体は医療費削減の実績も上げず賃金は公務員より高い。このまま合理化もせずに放置するのか〟などと宣伝を始めました。国鉄分割・民営化時の「ヤミカラキャンペーン」とそっくりです。
 当局は「県に移管した場合、医療費削減を頑張っている団体が選択される。国保連に仕事が来ないことも想定される。生首を切ることを避けるため、今後10年間、人員補充はしない」と国保労組に申し入れてきました。
 2団体間の医療費削減競争で休日出勤が増え、年休どころか代休取得で精いっぱいの状況です。過重労働からメンタル疾患も増えています。
 「競争に負けたら仕事がなくなるぞ」「トイレに行く時間も惜しんで働け」と脅しつけ、労働者の当然の権利さえ踏みにじる攻撃が加えられています。ディスプレイ作業時間の労使協定すら無視するありさまです。

戦争と民営化に絶対反対訴えて職場の団結作る

 職場から闘いの火の手が上がっています。「トイレも含め席を立つ時は言っていけ」と攻撃する課長に対し「パワハラだ」と反撃が始まりました。二十数人が集まる職場の会議で私に続いて仲間が怒りの声を上げました。追い詰められた人事課は、この反動課長の指示を否定せざるをえなくなりました。職場の怒りが団結に転化しつつあります。闘う労働組合を再生する闘いです。
 他方、自治労本部・国保労組本部は安倍の攻撃と闘うどころか全面協力し、闘いを抑えつけることに必死になっています。「医療制度改革で厚労省と自治労の考えは一致している」として厚労省幹部を自治労地域医療全国集会の講師にしました。政府が医療保険制度改革法案を閣議決定した3月3日、本部は厚労省を訪れ、当局に「国保改革については国保連の役割が重要。力を発揮していただかなくては」と言われたことを喜々として報告しています。まさに当局の先兵です。
 私は昨年10月、国保連の定期大会で「国保と支払基金の労働者は競争ではなく団結して闘おう」と訴え、「良かった」「貴重な提起、ありがとう」「ビラの『戦争を革命へ』のスローガンはすっと入る」と共感が広がりました。現場の労働者の思いはひとつです。
 安倍は労働組合を解体できずに戦争を開始し、国鉄闘争をつぶせないまま公務員攻撃にのめり込まざるをえない危機にあります。戦争と改憲、民営化と首切りの安倍に対して、いたるところから怒りと闘いが噴出しています。追い詰められているのは安倍の側です。
 今こそ自治体労働者が先頭になって安倍打倒を闘おう。国鉄解雇撤回署名は10万筆に迫り、動労千葉・動労水戸・動労西日本は3月ダイヤ改悪にストで反撃しました。被曝労働拒否を闘う動労水戸支援共闘が結成されました。動労総連合を先頭に闘う労働組合を全国につくりだそう。仲間を信頼し、労働組合を取り戻して闘おう。新しい労働者階級の党をつくろう!
(国保労働者 糸野博)
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