安倍の「農協改革」粉砕を 農民の団結を全面破壊し大資本参入の突破口狙う

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週刊『前進』08頁(2674号05面01)(2015/03/23)


安倍の「農協改革」粉砕を
 農民の団結を全面破壊し大資本参入の突破口狙う

(写真 3・11反原発福島行動の集会で三里塚反対同盟と全国農民会議の農民が登壇した。共同代表の鈴木光一郎さんは福島で放射線被害に立ち向かう苦闘と原発への怒りを語った)

日帝の中東侵略戦争参戦下での農業破壊の大攻撃

 日帝が中東侵略戦争参戦に歴史的に踏み切る中で、安倍政権の新農政攻撃が進められ、その焦点として「農協改革」が叫ばれている。安倍は「農業に競争原理を取り入れる」と称し、全国農業協同組合中央会(全中)を解体しようとしている。これは、安倍政権による農業壊滅・農民絶滅に向けた攻撃の突破口であり、戦後農村の全面的再編を進めるものである。さらに、侵略戦争を実行する国家体制の構築に画然と踏み込むものだ。
 1980年代、国鉄分割・民営化攻撃が強行された過程ですでに、財界や自民党の一部では「国鉄の次は農協改革(=解体)だ」と言われており、十数年前の「小泉改革」の時にも農協がやり玉に挙げられていた。
 今日の世界大恐慌の深化と帝国主義間・大国間争闘戦の戦争化という情勢のもと、安倍政権はこの「農協改革」を、昨年7月1日の集団的自衛権の閣議決定、戦争と改憲への本格的な踏み切りと一体のものとして、「戦後以来の大改革」の柱にすえて推し進めようとしている。
 これに対し全中は2月9日、自民党案をそのまま踏襲(とうしゅう)した与党の改革案を全面的に受け入れることを表明した。危機意識をあらわにした「全面対決」姿勢を一夜にして転換し、自己保身のためだけに安倍政権に全面屈服した。
 その合意内容は、①全中の一般社団法人化と地域農協への監査・指導機能の廃止、②準組合員制度の当面の存続、と報道されている。
 農協組合員(農民)の中から激しい怒りの声がわき起こっている。
 1月11日に行われた佐賀県知事選挙では、この「農協改革」が一大争点となった。安倍政権が「改革派」と位置づけて全力で支援した樋渡啓祐(前武雄市長)は、地元農協の政治団体「佐賀県農政協議会」が擁立した山口祥義に大差で敗れた。4月統一地方選挙を前に、安倍政権に激震が走った。
 それは、安倍政権への怒りの表れであると同時に、安倍政権、安倍新農政と闘えず、全面屈服している全中への積もり積もった怒りなのだ。

農地改革の中で誕生した農協の階級的性格と役割

 安倍政権は今なぜ、農協解体に踏み込んできたのか。ここで、農協の階級的役割を明らかにする必要がある。
 農協は、戦後革命と一体の農地改革(農地解放)の闘いの中から生まれた。1947年農業協同組合法が制定され、全国各地に農協が作られていった。戦時中に作られた農業会(戦時中に農会や産業組合など農業団体が統合されてできた農民支配機関)を解散し、戦争協力の反省に立って新たに作られた組織である。地域農協は農民の互助精神に基づいて出発したのである。
 農地解放で作り出された自作農を守る(地主制の復活を防ぐ)ための、さまざまな法的整備がなされていった。農地法や、農業委員会制度、耕作者本位の土地改良法、農協法もその一連の法体系の一つである。
 しかし農協は出発当初から、いまひとつの階級的性格を帯びていた。それは、農村ボスや戦時中の翼賛組織の役職者が中心となって、そのまま地域農協を作ったところも多数あったことに示されている。戦後の支配階級の最大の関心事であった「食糧供出」に全面協力し、食管体制を支える担い手として農協―全中が作られていったのだ。
 以後、食糧増産―減反という戦後農政を自民党・農水省と一体となって進め、全中は農民への中央集権的支配を貫いてきた。その中で農協は一面において、農民からの収奪機構としての役割も担わされてきた。
 今回の「農協改革」の核心は、形式的とはいえ現在の農協に残っている農民互助・農民保護的な機能・性格を粉砕し尽くし、農民の団結を全面破壊することである。
 農民の怒りに突き動かされて、政府に向かって「TPP(環太平洋経済連携協定)反対」を主張するような全中―地域農協の存在を許さない、圧殺し全面的に翼賛勢力化するということだ。桜井よしこの「連合を改憲賛成・原発推進に再編せよ」という主張と同じ、戦争への総翼賛体制づくりだ。

「安倍新農政」は農地強奪と戦争国家体制づくりだ

 安倍首相は2月12日に行った施政方針演説で雇用破壊、地方破壊、医療破壊、TPP合意、原発再稼働などの「戦後以来の大改革」を打ち出した。その柱が「強い農業をつくる」「農家の所得を倍増」とうそぶく安倍新農政=農業改革である。本質は、農業の切り捨てだ。
 その主な内容は、農協改革とともに、農業委員会制度の改変(選挙制度を廃止し市町村長による任命制へ)、農業生産法人の要件緩和(一人でも農民がいれば認める)などだ。すでに農水省は、昨年6月「農林水産業・地域の活力創造プラン」で、2018年減反政策廃止を打ち出した。減反廃止は、労働者にとっての最低賃金制度の廃止と同じような意味を持つ。結果的に今年度産米価は暴落し、特に大規模化してきた農家は1千万円以上の減収となった。群馬では2人の農家の自殺者が出ている。
 安倍新農政は第一に、日帝・安倍の戦争国家体制づくりである。侵略戦争遂行のために、憲法9条の最後的解体―集団的自衛権の法整備と並んで、農地・土地を強権的に奪えるようにすることが問題である。単に一資本が利潤追求のために農地を持ち、農業に参入するにとどまらない、帝国主義支配の根幹的問題なのだ。
 第二に、大資本が農地を保有し、農業に全面的に参入することを狙っている。すでに住友化学やローソン、イオンなどが農業参入に動いている。農民が農地を奪われ、農村を資本が支配していくということである。
 農業委員会は、「農地取得を耕作者に限る」とする農地法の耕作者主義に基づいて各市町村に置かれてきた。農業委員会を選挙制から任命制にすることは、首長・議会のもとで土地利用計画を作り、その追認機関にしてしまうということである。
 第三に、農協解体は農民の団結体破壊とともに、農協の「株式会社化」として進められようとしている。新自由主義の中で、農協はすでに巨大な事業グループを形成する持ち株会社のような存在になっている。JA共済は、郵政民営化でのアフラックとの提携と同じように、13年に東京海上日動火災と業務提携を開始した。農林中金の運用残高は57兆円であり、世界有数の機関投資家と言われている。
 安倍の農協解体攻撃は、農協の株式会社化の流れを促進し、農民の協同組合としての性格を奪い去り、農協のもつ金融資産を「自由競争」の名で巨大資本の餌食(えじき)とするものだ。

全国農民会議の前進・発展を

 連合路線による労働組合の産業報国会化攻撃に対して、国鉄闘争を軸とした階級的労働運動が激しく闘われている。
 こうした労働運動の前進と一体で、全国農民は労農同盟をさらに発展させ、安倍政権打倒へ闘おう。安倍新農政と真っ向から闘う全国農民会議の発展をかちとろう。
 三里塚芝山連合空港反対同盟は、軍事空港建設に反対し、安倍の戦争政策、新農政と正面から対決し闘っている。3・11反原発福島行動の大高揚を引き継ぎ、3・29三里塚全国集会(成田市栗山公園)に大結集しよう。市東孝雄さんの農地を労農連帯の力で絶対に守りぬこう。
(革共同農民闘争組織委員会・N)

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