ドイツ機墜落事故 過当競争とコスト削減 格安子会社化で安全が崩壊

週刊『前進』08頁(2676号03面03)(2015/04/06)


ドイツ機墜落事故
 過当競争とコスト削減
 格安子会社化で安全が崩壊

(写真 昨年4月にルフトハンザ航空のパイロットたちが賃上げと退職条件の改善を求めて3日間のストに突入し、フランクフルトでデモを行った)

 格安航空会社(LCC)で未曽有の墜落事故が起きた。3月24日にフランス南部のアルプス山中に独ジャーマンウイングス社の旅客機(乗客144人、乗員6人)が墜落し、全員が死亡した。

責任は副操縦士でなく会社に!

 当局やマスコミは、副操縦士個人に責任を押しつけて、問題の本質を押し隠そうとしている。だが問題は、なぜ彼をここまで追い込んだのかということだ。その最大の原因はLCCのパイロットという厳しい労働環境、ぎりぎりの労働条件以外の何ものでもない。
 事故の責任は何よりも、航空会社間の、とりわけLCCの台頭によっていっそう激化した競争に勝ち抜くために、機体の稼働率をぎりぎりまで上げて労働者に長時間労働を強制し、地上での休憩時間も削減して、安全を崩壊させてきた航空会社にある。
 そもそもパイロットという職業自体が労働者の身体と精神に大変な緊張を強いるものだ。何百人の命を預かり、一瞬の間違いで大惨事になるという点で、日常的に激しいストレスを強いられている。にもかかわらず、LCCの参入による競争激化がもたらしたものはすさまじい過労であり、雇用不安である。このようななかで航空労働者が日々運航させられているのだ。絶対に許せない。
 EUを始めとする航空の安全規制の緩和はLCCの大々的な登場をもたらし、航空業界は過当競争の戦場となった。ルフトハンザなど既存の大手航空会社はLCCの子会社をつくり、自らの路線の一部を子会社に移管して労働者を出向・転籍させ、労働条件を切り下げてきた。
 ジャーマンウイングスは、09年にドイツ最大の航空会社であるルフトハンザ航空の完全子会社となった。労働組合を解体して労働者を分断する攻撃だ。これは、JRの全面外注化を軸とする第2の分割・民営化攻撃とまったく同じだ。

独ルフトハンザの労働者がスト

 ルフトハンザのパイロットや客室乗務員、地上勤務員の組合は、この攻撃に対し、マスコミのスト反対キャンペーンにも屈せず、何度にもわたるストライキに決起している。昨年だけで9回のストが闘われた。8月にはジャーマンウイングスのパイロットもストを行った。パイロットたちは長時間飛行と短い休憩時間のために、定年に至るまでに健康がはなはだしく破壊されることに抗議し、闘っている。
 この大攻防のさなか、昨年12月3日、ルフトハンザの監査役会は、ユーロウイングスの新しい格安路線を承認した。新格安路線は、ルフトハンザとジャーマンウイングスの労働条件を規定した労働契約の適用範囲外で運航される。このような会社の姿勢こそが事故をもたらしたのだ。
 ドイツだけではない。エールフランスの労働者もLCC子会社による分断に直面し、昨年来ストに決起している。
 外注化・合理化、規制緩和は安全の崩壊と大事故をもたらす。「命よりカネ」の新自由主義こそが事故の最大の元凶だ。
 労働者とすべての人びとの命と安全を守るのは、外注化・合理化に絶対反対を貫いて闘う労働組合の団結と闘争以外にない。闘いなくして安全なし! 欧州の航空労働者と連帯し、国鉄を始め全産別で反合理化・運転保安闘争を闘う労働組合をつくり出そう。動労千葉とともに、JRの全面外注化粉砕へ闘おう。
(芦原英信)
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