「新捜査手法」法案阻止へ 4・10緊急デモに結集を 現代の治安維持法と闘う会・呼びかけ人 森川文人弁護士の訴え

週刊『前進』08頁(2676号06面01)(2015/04/06)


「新捜査手法」法案阻止へ 4・10緊急デモに結集を
 現代の治安維持法と闘う会・呼びかけ人 森川文人弁護士の訴え


 「新捜査手法」法案阻止へ4・10緊急デモ(要項1面)を闘おう。以下は、先頭で闘う森川文人弁護士からのアピールです。(編集局)

誰が治安弾圧の対象となるのか

 治安弾圧という問題は大衆化することがとても難しい問題です。一つには政府がマスコミを通じて行う「体感治安の悪化」というキャンペーンを背景に、「治安の維持は安心・安全」「一部の過激派を抑え込むのは当然だし、自分には関係ない」という問題として扱われがちだからです。
 しかし、現実には、戦前・戦中の治安維持法(1925年〜45年)がどんどん拡大・改悪されていったように、すべての労働者・民衆を攻撃の対象とし、分断・支配するための政府・権力の道具として利用されるものなのです。これは現実にあった歴史です。改憲、安保法制など政府が戦争へ向かっての準備に入ったこの時期、治安弾圧として何が狙われているのか、この歴史をふまえることは重要です。

(写真 盗聴法改悪を許さない3・21集会【杉並】)

盗聴拡大、司法取引、証人隠し

 昨年施行された特定秘密保護法は、国家権力にとって都合の悪い情報をすべて隠し、戦争に動員するための言論弾圧をもくろむ治安立法そのものです。秘密にすること自体、秘密にしてしまうのです。権力が情報を独占し、支配する、ということです。
 さらに、3月13日に閣議決定され国会へ提出された「新捜査手法」法案は、特定秘密保護法とあいまって、まさに、かつての「治安維持法」体制の構築を狙うものです。
■「通信傍受法」(盗聴法)の改悪
 まず、1999年にできた「通信傍受法」の改悪、つまり盗聴を容易にし、かつ拡大しようとしています。全国の警察・警察施設で警察官らが立会人なしでの盗聴が可能になり、しかも、盗聴対象は詐欺、窃盗、傷害などを加え飛躍的に拡大させようとしています。これらの犯罪まで含めれば、およそあらゆる名目で盗聴を実施することができるも同然です。つまり捜査機関による盗聴がやり放題になってしまいます。さらに電話やメール等の盗聴のみならず、盗聴器設置による室内盗聴も狙われています。「実行行為」以前の段階で弾圧する「共謀罪」新設の動きと一体の予防的治安弾圧の立法です。
■「司法取引」とは
 「司法取引」とは、検察官が被疑者や被告人に対し自分の刑を軽くする代わりに「他人の刑事事件に関する事実」を明かすよう「取引」を求める制度です。
 要するに自分が助かるために他人を売り渡すことを奨励する密告の仕組みです。密告が虚偽だと認めると「懲役5年以下」の刑に処せられるので、そのまま虚偽が真実としてまかり通ることになるでしょう。さまざまな団体・組織の内情を聞き出し、分断を生みだし、仲間に亀裂を入れ、組織・団体を破壊するために用いられるでしょう。
■証人隠蔽制度の新設
 さらに、証人を隠蔽(いんぺい)するための制度、つまり「匿名証人」制度も用意されています。今でも証人の証言に影響を与えないという名目で衝立(ついたて)やビデオリンクを利用しての証人尋問が行われていますが、さらに「証人や親族が害を加えられ、畏怖(いふ)・困惑のおそれがみとめられたり、名誉や平穏が著しく害されるおそれ」があるときは被告人に氏名や住所を明かさない証人を認める制度です。弁護人も「懲戒」付で被告人への情報開示が制限されます。
 証人が誰なのかを被告人が知ることのできない匿名証人の証言により、犯罪者としてデッチあげられ、処罰され得ることになってしまうのです。
■取り調べの録音・録画制度の導入の意味
 マスコミなどで用いられている「取り調べの可視化」という言葉は本質を見誤らせるもので、あくまでも「捜査機関による取り調べの録音・録画」です。検事が自白調書の任意性等を立証するための制度、ということです。
 何日も拷問のような取り調べが続こうと、自白がなされた取り調べの録画・録音だけ提出すればいい、という仕組みです(録音しなくてもいい例外もたくさんある)。被疑者・被告人の人権が守られるどころか、単に捜査機関に弾圧のための武器を与えるだけです。
 ところが、日弁連執行部は昨年、このような治安弾圧策動に対し、「全面可視化の第一歩」などと評価し「肉や野菜だけでなく、毒饅頭(まんじゅう)も出されている。肉や野菜しか食べないという訳にはいかない」(宮崎誠日弁連推薦委員)などと賛成に回ってしまいました。この「録音・録画」の本質を「肉や野菜」=必要なものと容認しているのです。これに対しては、「法律家としての想像力を持たない最悪の選択」だという批判も出されています。

衆院採決阻止!団結守り闘おう

 以上のような「現代の治安維持法」体制の構築は、誰にでもある弱さ(臆病、怠慢、保身等)につけ込んで、政府に異議を唱えることを萎縮(いしゅく)させ、仲間を裏切らせ、疑心暗鬼に追い込み、人のつながりをなんとしても破壊するというのが目的です。逆に言えば、何よりも、私たちが信頼し合い団結し大きな闘う力を持つ、ということを恐れているのです。だからこその治安弾圧策動なのです。
 仲間との団結を守り抜き、いや、さらに拡大する完全黙秘・非転向という思想と実践が重要です。仲間との信頼、そしてその拡大こそが、この策動に対する最大の武器です。手をつなぎ、頑張りましょう。4・10緊急デモにぜひ結集して下さい。

このエントリーをはてなブックマークに追加