「アジア投資銀」めぐる争闘戦 英帝の参加でG7は総崩れ米帝の大没落と日帝の危機

週刊『前進』06頁(2677号05面02)(2015/04/13)


「アジア投資銀」めぐる争闘戦
 英帝の参加でG7は総崩れ米帝の大没落と日帝の危機

中国の突出が戦後体制崩壊の引き金引く

 中国が今年中に設立をめざす「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への参加国が当初の予想を超えて急速に拡大し、米日帝国主義に巨大な衝撃を与えている。
 3月上旬まで、アジア太平洋地域の27カ国にとどまっていたが、12日に英国が突如参加を表明、さらに16日に独、仏、伊とG7(主要7カ国)に名を連ねる欧州帝国主義諸国が続き、その後カナダ、韓国、オーストラリア、ロシアなどが雪崩をうって参加へ動いた。銀行創立メンバーとなるための申請が締め切られた31日の時点で、参加申請国は全世界51カ国・地域にまで膨らんだ。6月末の出資期限までにさらに増加する見通しだ。
 この間、米帝はAIIBを「米国主導の多国間制度に対する挑戦だ」(ルー財務長官)とみなし、同盟諸国への引き止め工作を行ったが、最大の「盟友」=英帝の参加表明で米帝陣営はたちまち総崩れとなった。また「G7の参加はありえない」(財務省)とタカをくくっていた日帝は、事態の急展開に完全に虚を突かれた。安倍は「話が違うじゃないか!」と財務省・外務省の官僚を怒鳴りつけたという。
 だが、起きている事態は単なる米日の「外交上の大敗北」にとどまらない。今日の世界大恐慌のもとで、戦後世界の基軸国としての米帝の没落と衰退が進行し、ドルを基軸通貨とする国際金融秩序の崩壊とドル暴落の危機が急切迫している。その中で、経済発展の行き詰まりとバブル崩壊の危機にあえぐ中国スターリン主義の突出した対外戦略が、戦後世界体制崩壊の決定打となり、戦争=世界戦争の引き金を引きつつあるのだ。だがそれは同時に、戦後最大の世界革命情勢の到来をも告げ知らせている。

インフラ市場・勢力圏めぐる一大地殻変動

 中国・習近平政権が2013年10月に設立を提唱したAIIBは、習政権が進める「海と陸のシルクロード経済圏構想」(一帯一路構想)の中核をなすものだ。この構想は、アジアからアフリカまでを陸路と海路で結ぶ鉄道、道路、港湾、送電網などのインフラ整備を中国主導で行い、独自の経済圏構築を狙うもので、特に新幹線と原発の輸出が2本柱をなす。そのインフラ整備費用を融資するのがAIIBだ。欧州諸国などはこのインフラ建設の受注を狙い、米帝の制止を無視してAIIBに駆け込んだ。
 第一に、この事態が示すものは、基軸帝国主義・米帝の歴史的没落という点で戦後史上の画期をなすということである。それは英帝をはじめとする同盟諸国の離反にはっきりと示されている。またクリントン政権時代の米財務長官・サマーズは、最近のコラムで「この1カ月は、米国が世界経済システムの保証人としての役割を失った時期として歴史に刻まれた」「この事実に匹敵する類いの失敗はブレトンウッズ以降思い当たらない」と述べ、その打撃の歴史的深刻さを認めた。
 オバマ政権は、大恐慌下での米帝の生き残りと起死回生をかけて、TPP(環太平洋経済連携協定)を最大の柱とする対アジア戦略を推進してきた。本年冒頭の一般教書演説でも、オバマは「中国がアジア地域でルールをつくろうとしているが、そうはさせない」と述べ、TPPによる中国包囲網の構築を世界にアピールした。だが、今やその対アジア戦略が大破産に直面している。これはイラク・アフガニスタン戦争敗退以来の中東戦略の大混迷とも連動して、米帝を奈落の底へ突き落とし、世界戦争の危機を加速する。
 第二に、その中で日米間の矛盾と対立も一層激化する。日帝はAIIBをめぐる事態の急展開に動揺し、3月20日の時点で麻生財務相が参加協議入りの可能性に言及したが、直後に米財務省からのクレームで取りやめたと言われる。だがその直後、米帝・ルー財務長官ははしごを外すように「AIIBを歓迎し、協力関係をつくる」と声明した。日帝は、米帝との関係で少なくとも4月末の安倍の訪米までは態度を表明できない状態だが、米帝は自己の利益と延命のために平然と日帝を切り捨て、アジアのインフラ市場から日帝を締め出すことさえ考えているのだ。 第三に、それゆえ最大の危機に陥っているのが日帝・安倍である。中国政府の意向を反映する日刊紙・北京日報は、4月7日の記事で「日本企業はすでにアジアでのインフラ事業で中国勢に苦しめられている。AIIBに加わらなければさらに不利になるだろう」と報じ、日帝ブルジョアジーに揺さぶりをかけた。安倍・自民党は4月になってAIIB参加を党内で検討し始めた。
 だが、どちらにせよ以前から中国との競争で絶望的敗勢にあった日帝のインフラ輸出戦略は、今や完全に敗北が確定したといえる。また、これまで「中国包囲網」の構築を外交上の最大の眼目とし、行く先々で「中国脅威論」を絶叫してきた安倍の破産と国際的孤立も明白だ。それは同時にJR資本をはじめ日帝ブルジョアジーと安倍=葛西の歴史的破産である。
 ここで確認すべきことは、国鉄闘争を先頭とする階級的労働運動が日帝のアジア侵略・勢力圏化と戦争・改憲攻撃の前に立ちはだかり、日帝ブルジョアジーに破産を強制したということだ。

中国の巨大化と深刻極まる体制的な危機

 第四に、中国スターリン主義もまた、かつてない歴史的危機の真っただ中にある。中国は70年代末の「改革・開放」路線以後、大量の外資導入を通じて「世界の工場」と呼ばれる経済大国となり、3兆8400億㌦もの外貨準備を保有するに至った。だが今や、一方ではバブル崩壊の危機と過剰資本・過剰生産力状態が露呈し、他方では「成長」の犠牲とされてきた幾億人もの労働者人民の怒りが中国全土で爆発している。
 習近平政権は3月の第12期全国人民代表大会(全人代)第3回大会において、一帯一路構想と一体で国防費を前年比10・1%増とする大軍拡路線を打ち出した。他方で「反腐敗」を掲げて党内の反対派を一掃しつつ、労働者・農民への弾圧を強めている。だが、今や年間18万件を超えると言われる労働者・農民の暴動やストライキ闘争は抑えようがなく、中国スターリン主義・習近平独裁打倒の第2革命へと発展せざるを得ない。
 今や「あらゆる政府は噴火山上に生きている」(レーニン『第2インターナショナルの崩壊』)というべき全世界的な革命情勢が到来した。戦後70年を迎える今ほど、新たな世界戦争の危機とともに反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命の現実性が明らかになっている時はない。
 4〜6月の韓国・民主労総ゼネストと日本における安保国会粉砕・安倍打倒の闘いは、まさにこの歴史の分岐点の真っただ中で世界革命の突破口を切り開く大決戦だ。その勝利の鍵は、動労総連合建設の闘いを軸に階級的労働運動と革命党の一体的建設を推し進め、職場・キャンパスから巨万の決起をかちとることにある。青年・学生を先頭に、世界戦争の危機を革命に転化しよう!
(水樹豊)

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ブレトンウッズ会議 第2次大戦末期の1944年7月、米英を中心に連合国44カ国が米ニューハンプシャー州ブレトンウッズで会議を開催し、戦後の国際通貨体制に関する協定を結んだ。金との交換を保証された米ドル(金1オンス=35㌦)を基準に他の通貨価値を決める固定相場制を確立し、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(後の世界銀行)の設立を決定した。

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