地方を破壊する北陸新幹線 まともな教育・訓練もせずぶっつけ本番で三セク開業

週刊『前進』06頁(2679号02面04)(2015/04/27)


地方を破壊する北陸新幹線
 まともな教育・訓練もせずぶっつけ本番で三セク開業



(写真 左はJR塗装のまま「はねうまライン」に投入されたE127系車両。右は「ひすいライン」用に塗装された新型気動車)


 JR東日本は3月ダイヤ改定を機に、地方切り捨てを強行してきました。JR大再編=第2の分割・民営化攻撃と戦争情勢の中で、命脈の尽きた新自由主義の延命を図ろうというのです。

ダイヤ改定の初日から運休

 しかし、こんな破綻的延命策は絶対に崩壊します。3月ダイ改は、その現実を暴き出しました。
 3月14日のダイ改初日、しなの鉄道北しなの線の長野発妙高高原駅行きの一番列車は途中の豊野駅で、えちごトキめき鉄道はねうまラインの直江津発妙高高原駅行きの一番列車は途中の二本木駅で、いずれも運休になりました。北しなの線は前夜の冷え込みで架線が凍結し、長野駅から一番列車の前に走らせた回送電車のパンタグラフが故障、はねうまラインはパンタグラフが一つしかないE127系を運用したため途中で運休になったのです。
 今までは冬期には「カッター車」と呼ばれる電気機関車を走らせたり、前もって架線に油を塗ったりすることで、架線凍結事故を防止してきました。そうした準備もしていなかったのです。
 3月16日、はねうまラインの急勾配区間で車輪が空転、運転士が空転防止の砂散布機能を教えられていなかったため、列車は遅延しました。同じ事故がその後も発生し、会社は「車両不具合か」と調査していますが、乗務員の教育・養成がないがしろにされていたことは明らかです。
 はねうまラインは、雪が比較的少なく平野部の新潟市近郊でJRが運用していたE127系車両を譲り受けました。出向に出される直江津運輸区の運転士と車掌はこの車両への乗務経験がないため、1月23日に異例の「前倒しの出向事前通知」(普通は2週間前の3月1日)が出され、JRでの勤務が非番・公休にあたる時に、時間外で教育・訓練が行われました。現場からは「JRで所定の乗務をしながら超勤でトキめき鉄道での教育・訓練をされては体がもたない」と悲鳴が上がりました。
 JRはE127系の後継車両として新津車両製作所でE129系の製造を進めてきました。しかし、昨年4月に分社化された車両製作所でのE129系の製造は大幅に遅れました。「図面が来ない」「部品が来ない」という混乱で、現場では時間外労働や休日出勤が常態化しました。結局、E127系のトキめき鉄道への譲渡は遅れ、はねうまライン用への塗装替えも間に合わず、JRの旧塗装のまま開業・運用する大失態を招きました。
 従来、北陸から首都圏への鉄道ルートは、北陸線から新潟県下の第三セクター「北越急行」(ほくほく線)を経由し、越後湯沢駅で上越新幹線につながっていました。

JRは収入増 三セクは赤字

 北越急行はこのルートを走る「特急はくたか」が収入の約9割を占め、年間10億円以上の純益を出し、100億円を超える内部留保を積み立ててきました。これは他の第三セクターでは例のないことです。しかし、北陸新幹線開業で赤字に陥ることは確実です。今後は内部留保を吐き出しながら運行し、それが底をつけば税金が投入されることになります。(そもそも北陸新幹線建設には新潟県と沿線自治体が1600億円の建設負担金を出しています)
 他方、JR東日本とJR西日本は、長野から富山・金沢への北陸新幹線の運賃・料金が丸ごと増収になります。北越急行の収益四十数億円相当と割高な新幹線料金、航空機から奪った旅客分のすべてが懐に入るのです。
 これまで首都圏への鉄道と航空機の旅客シェアは、富山県で6対4、石川県で4対6と言われてきました。これが北陸新幹線開業で石川県で8対2になると言われています。その収益をJR東日本・西日本が独占する一方、信越線・北陸線を引き継ぐ第三セクター各社や北越急行は赤字になり、地方自治体に負担が押し付けられるのです。
 出札窓口は苦情の山です。はねうまラインでJR券を発券できるのは直江津・春日山・高田・新井・妙高高原の5駅だけ。発売できる乗車券は大糸線は南小谷まで、北しなの線は長野まで、あいの風とやま鉄道は富山まで、ほくほく線経由上越線は越後湯沢まで、信越線は新潟まで(以上を「連絡運輸区間」と言います)だけです。
 JRでも、連絡運輸区間以外からは第三セクターへの直通切符を発券できません。乗客には大幅な不便になっています。
 第三セクターへの出向者に対しては、直江津運輸区に新設されたトキめき鉄道の検修庫や洗浄台などの説明もなされず、同鉄道ひすいラインで運用する気動車については「触ったこともない!」まま開業されました。
 3月2日に行われたトキめき鉄道の説明会では、就業規則すら提示せず「就労条件等」という説明資料で済ませています。第三セクターは昨年4月に新規採用をしていますが、その第三セクターの「就業規則を示せ」という要求に対し、JRは「まだ出来ていない」と居直り、出向先の労働条件を何ひとつ明らかにしませんでした。
 駅も乗務員も検修・構内も設備や作業方法の説明を一切受けずに開業が強行されたのです。出向者は口をそろえて「ぶっつけ本番だ」「教育不足だ」と怒りをぶちまけています。JRも第三セクターも鉄道業務をとことん軽視しているのです。

動労総連合を建設し反撃へ

 JR大再編情勢の中での今回のダイ改は、徹底した労働組合解体攻撃として貫かれています。国鉄分割・民営化攻撃に率先協力したJR総連・東労組、それに追随してきたJR連合・東日本ユニオン、二十数年遅れで分割・民営化協力に転向した国労のいずれもが、何ひとつ有効な反撃もできずに手をこまねいてきました。どの組合も完全に無力化しています。
 時代は戦争か革命かを鋭く問うています。安倍政権は中東侵略戦争に参戦し、争闘戦が激化する東アジアでの権益確保に突っ込んでいます。
 これと対決し勝つためには反合・運転保安確立、外注化反対・非正規職撤廃、被曝労働反対の階級的労働運動路線を確立し、動労総連合を組織することです。動労神奈川の決起に続き動労総連合を全国に組織しよう。韓国民主労総のゼネストと連帯し、職場からJR体制打倒の闘いを巻き起こしましょう。
(新潟・丸山鉄郎)

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